FC東京バレーボールチームが活動休止を発表。V.LEAGUEが抱える問題は?
2021年12月8日、V.LEAGUE男子ディビジョン1のFC東京が、2022年5月をもって活動を休止することを発表した。
Vリーグとしてのビジョンが問われる今回の休部
活動休止の理由として、同チームの公式ホームページには以下のような文面が添えられていた。
「取り巻く事業環境の変化、中長期的な事業成長の可能性、Vリーグの将来に向けた事業化・高度化計画への対応等を総合的に検討した結果、活動を休止することを決定いたしました」
V.LEAGUEは2018年、前身のVプレミアリーグより名称を「V.LEAGUE」に変え、各チームに試合の興行権を与えるなど、チームが収益をあげる仕組み作りを進めてきた。ただしFC東京から発表されたコメントを見る限り、Vリーグ機構が掲げるビジョンには、活動休止を思いとどまらせるだけの材料がなかったとも受け取れる。
企業スポーツとして発展を続けてきたバレーボールは1990年代から2000年代の初めに休部・廃部ラッシュを経験している。その苦い経験を踏まえ、幾度かプロ化に舵を切ろうとしたが叶わず、現在に至っている。
ちなみに近年のVリーグの動きを時系列で辿ると
- 2016年、当時の嶋岡健治会長が、バレーボールをチームの事業とする実質「プロ化」を目指す「スーパーリーグ構想」を発表するものの、独立法人化を条件としたため、企業を母体とするチームの中からは反対の声が多発。
- 2017年、チームの独立法人化、独立採算制を条件から外し、条件をクリアできるキャパシティを持つ会場の確保やファンクラブ、ジュニアチームの設立などを含んだライセンス制度に。ディビジョン(1部2部などのカテゴリ分け)ごとに設け、ライセンスをクリアしたチームがリーグに参加できる方針へと変換。プロと企業スポーツの良いとこどりである「ハイブリッドなリーグ」と銘打った。
- 2018年からリーグの名称もVプレミアリーグから「V.LEAGUE」に変わる。
- 2021年、嶋岡健治会長が日本バレーボール協会会長との掛け持ちは難しいという理由から会長職を辞任。
という流れだ。
企業側の努力に見合う努力を、機構は行っているのか
2018年、新リーグとなってからは、確かに各チームとも開催時間やイベント内容などを工夫し、観客動員数のアップに努めてきた。その熱意によって改善された部分は極めて多い。
一方で、ここ2シーズン、新型コロナ感染症の流行により、ほとんどの試合で観客を入れることができなかったため入場料収入は激減した。親会社を持たないクラブチームにとっては大きな痛手である。
新リーグへと移行し、チーム名から企業名を外して「ウルフドッグス名古屋」に変更した豊田合成や、外部から他競技で実績を残したゼネラルマネジャーを招へいし、地域に根差した活動の幅を広げているNECレッドロケッツのように、ビジネス化や地域密着に覚悟をもって取り組むチームは着実に増えている。
Vリーグ機構の大きな問題点は?
Vリーグ機構の問題点として関係者が指摘するのは人材不足である。社員の入れ替わりが激しく、中長期的な目標を描ける人材が育たないことが一番の理由だと語る。
中の人間がそうであるなら、外部の人間に将来図が見えてこないのは当然だろう。
2018年の新リーグ誕生から4シーズン目を迎える今季。機構側も実現できたことと、まだ実現できていないことを洗い出し、本気で改善に取り組んでほしい。コロナ禍によるスポンサー離れが加速する前に、何らかの手を打たなければ、FC東京に続くチームが現れる恐れは十分ある。
1990年代~2000年代、有名なバレーボール部が次から次へと休廃部を発表したときのように、バタバタと倒れるチームが続かないよう、双方の改善努力を願っている。