YDK「やればできる子」にもう一つ加えること:自己効力感(セルフ・エフィカシー)の心理学
■YDKやればできる子
4月になりました。新しい学年、新しい学校。「がんばるぞ!」と思っている子も多いでしょう。「がんばってほしい」と願っている親もいっぱいいるでしょう。
テレビでは、「やる気スイッチ」が入りそうなCMが流れています。
「やればできる」はたしかにとても大切です。「やればできる」と思えなければ、やる気もわきません。でも、「やればできる」と思うだけでは、もう一つ足りないこともあります。
■「やればできる」の心理学
「やればできる」は、自信の一つです。社会心理学の用語でいえば、「結果予期」と呼ばれています。「やればできる」。たとえば、勉強すれば合格できる。ダイエットすれば、スマートになれる。○○すれば、○○できる。ある行動をとれば、ある良い結果を得ることができるだろうという予想です。
このように信じることができなければ、勉強する気にもなれません。ダイエットもできません。「どうせ、ぼくなんか何をやってもだめなんだ」と思い込むと、行動を始めることができません。
CMにもあるように、「本当はみんなやればできる子」なのだと信じることは、とても大切です。
■「やればできる」ともう一つ大切なこと
ところが、「やればできる」とは思っているのですが、やる気が出ない、行動が始められない人もいます。
たとえば、「これから毎日休まず3時間勉強すれば、きっと合格できるだろう」と言われて、「まあ、それだけ勉強すれば、僕だって合格できるだろう」とは思ったとします。「やればできる」、自分の行動がある結果に結びつくという「結果予期」はできています。
ところが、「この僕が毎日休まず3時間も勉強できるわけがない」と思ってしまう子がいます。「毎日このダイエットと運動をすればスマートになれる」と言われて、たしかにそうだとは思うものの、私にそんな食事制限や運動ができるわけがないと感じてしまうわけです。
「やればできる」、ある行動がある結果を生むという信念に加えて、「私もその行動ができる」という信念が必要になります。この信念を「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」と呼んでいます。
■自己効力感(セルフ・エフィカシー)
東京へ1人で行きたいとき、「この電車に乗れば東京へ行ける」という結果予期がなければ、電車に乗る気にはなれません。ところが、それは信じられても、僕が1人で駅に行って正しい電車に乗ることなんかできないと感じてしまうと、結局東京へは行けません。「僕も1人で電車に乗れるよ」という自己効力感(セルフ・エフィカシー)が、大切です。
■「やればできる」の正しい使い方
CMで使われ、いろいろな場面で使われる「やればできる」には、心理学で言えば、結果予期と自己効力感の両方の意味が込められているのでしょう。君は、今はできなくても、勉強することができる子だし(自己効力感)、そして勉強すればきっと成績が上がるよ(結果予期)ということをわかってもらおうとしているのでしょう。
「やればできる子」の言葉の中には、君は努力できる子、がんばれる子というメッセージも込められていることが必要です。
■「やればできる」の間違った使い方
ただ「やればできる」と励ますばかりで、その子に自己効力感が足りないことが見抜けていないと、励ましも叱咤激励も空回りしてしまうでしょう。
結果予期はあっても、自己効力感のない子どもや部下は、「それはたしかにそうだろうけど、そんなこと言われても・・・僕には無理」と感じてしまい、やる気は発揮されないのです。
さらに、「やればできる」と自分で言うときに、本当のやる気の表れではなく、勉強や仕事をしない言い訳、口実として使われることもあります。社会心理学では、「セルフ・ハンディキャッピング」と呼んできます。
「「やればできる」と口では言いながら、努力をあえてしないというハンデを自分に与えて、「やればできる」を成功できない言い訳に使ってしまっています。「やればできる」だから「今はやらない」と言って、彼らは努力せずチャレンジから逃げます。」(「やればできる」と言いながら一生何もしない人々:セルフ・ハンディキャッピングを乗り越えるための心理学:Yahoo!ニュース個人有料)
「やればできる」を言い訳にせず、「やればできる」を実感するために、まず一歩を踏み出したいと思います。
「どこか懐かしく、どこか切ない。でも、勇気がいっぱいわいてくる。この春、明光義塾がお届けする、2分20秒の長編ストーリー。」