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スターフライヤー、1年後の国際線再参入に勝算はあるのか

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

 北九州空港を拠点とするスターフライヤーは、1年後の2018年10月末より4年半ぶりに国際線に再参入することを10月31日に発表した。運航するのは、北九州空港、福岡空港、中部国際空港(セントレア)の3空港から台北(桃園)を結ぶ路線で、各路線1日1往復での運航を計画している。

国内線だけでは持続的な成長は見込めない

 スターフライヤーが国際線再参入を決めた背景には、国内線のみでは持続的な成長を見込めないことにある。国内空港では、羽田をはじめ、伊丹、福岡、新千歳、那覇などにおいて新たな発着枠の拡大は困難になっており、各空港で発着枠が増えてもインバウンド(訪日旅行客)の増加を背景に国際線を中心に増加分は割り振られる傾向にある。国内線で収益が高い路線を増やすのは現状では難しい。

 現在、羽田~北九州(11往復)、羽田~福岡(8往復)、羽田~山口宇部(3往復)、羽田~関西(5往復)、中部~福岡(3往復)に加え、季節運航で北九州~那覇を運航している。合計6路線の国内線のみで、更なる成長の為には国際線への再参入が不可欠と判断したようだ。

機内で提供されるタリーズのコーヒー(無料)。コーヒーを注文するとチョコレートも付いてくる
機内で提供されるタリーズのコーヒー(無料)。コーヒーを注文するとチョコレートも付いてくる

国際線は4年半ぶり。かつては国内線よりも短い国際線を運航

 かつて2012年7月~2014年3月まで北九州~釜山線を1日2往復で就航していた。筆者も2013年6月に利用しているが、国際線でありながらも時刻表上のスケジュールでも50分で、実際に離陸してから着陸までは35分。国際線でありながらもスターフライヤーの中で最も短いフライトという逆転現象が起こっていた。それでいて、搭乗日前日に購入して往復2万円という安さで、早く購入すれば往復1万円~1万5000円程度で買えた。片道1万円以下の客単価で採算をとるのは非常に難しく、国際線黒字化を見通しが立たず撤退に追い込まれた。

かつては北九州~釜山線を1日2往復運航していたが2年弱で運休に追い込まれた
かつては北九州~釜山線を1日2往復運航していたが2年弱で運休に追い込まれた

国際線再参入では北九州・福岡・中部から台北へ

 今回の再参入では就航先を台北とした。同時に北九州・福岡・中部と3路線を同じ台北に飛ばすことになるが、これは賢明な選択と言えるだろう。北九州と福岡からは片道2時間半、中部からは3時間15分のフライトとなる。成田や関西からはLCCも含めて多くの台北便が就航し、既に飽和状態になっているが、上記3都市はまだ伸びる余地は十分にある。台湾からのインバウンドも含めて期待でき、繁忙期になれば客単価のアップも見込める。

 また中部においては、来年には10月29日に再就航を果たしたエアアジア・ジャパンも台北線に就航することになるが、同じエアバスA320を使用する両社であるが、エアアジア・ジャパンが180席であるのに対し、スターフライヤーは150席で5列分(30席)少なく(どちらもビジネスクラスの設定はない)快適度は高い。

シートピッチが広く、LCCに比べると快適度は高い
シートピッチが広く、LCCに比べると快適度は高い

 5列分少ない理由は座席のシートピッチ(シートの前後間隔)が広く、フットレスト・ヘッドレストもあるからだ。実際に座ると広さを実感することができる。また、全席にビデオプログラムを楽しめるシートテレビを設置し、充電ができるUSBポート、更にはシート電源も全席に完備している。就航当初からタリーズのコーヒーやジュースも果汁100%にこだわるなど利用者からの評価が高く、国内航空会社の中でJCSI調査顧客満足度8年連続トップを継続しているなどLCCとは一線を画している。

 

 同じ機体で30席少ない分、エアアジア・ジャパンや既に就航しているジェットスター・ジャパンよりも割高な運賃設定になる可能性が高い。

シートテレビを完備し、USBポートからの充電も可能
シートテレビを完備し、USBポートからの充電も可能

海外での知名度はなく、集客においては課題も多い

 LCCの狭い席も短いフライトなら気にしないが、2時間もしくは3時間以上のフライトになると乗りたくないという利用者も多い。そういった層を取り込める可能性は高いが、成功の鍵はやはり運賃設定と海外での知名度アップにあるだろう。いくら快適なエコノミークラスの機内空間であっても、割高であればLCCもしくは他のフルサービスキャリアにお客様は流れてしまうことになる。そういった意味でも、快適性を維持しながらの価格設定は重要となる。

 現状、スターフライヤーという名前は海外での知名度は全くない中で、台湾からの集客をどのように展開していくのかについても就航までの1年で考えていかなければならない。既にピーチは、ピンクのかわいらしい機体が話題となり認知度は高く、日本人よりも台湾人が多く利用している。特に台湾人のリピーターを確保したことで安定した高い搭乗率を出し続けているが、黒いスタイリッシュな飛行機が台湾で認知されるのかにも注目である。

 スターフライヤーは国際線の単年黒字化まで数年を要する見通しを示しているが、2回目の国際線参入である今回、九州を拠点とする唯一の国際線に就航する航空会社として成功することを期待したいが、まだ乗り越えなければならない壁は高いだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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