Yahoo!ニュース

懐中時計からヒントを得たのかもしれないGoogleのスマートウォッチ特許

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

ウェアラブル機器のUI、本当に使いやすい決定版というのはまだないと言ってよいでしょう。結局、スマホの画面見るのが一番楽とも言えます。各社のウェアラブル関連特許出願の内容を見てもいろいろなアイデアが模索されていることが伺われます。

今回はそのようなアイデアのひとつとして昨年の2月に登録されているGoogleによる米国特許8379488号”Smart-watch including flip up display”をご紹介します。既に登録された権利化されています。優先日(実効出願日)は2011年10月26日です。

基本アイデアはタイトル通りでスマートウォッチにフリップアップ式の蓋を設けるというものです。蓋付の時計というと大昔の懐中時計みたいですね。蓋部分は両面にディスプレイが付いており、蓋を閉めている状態では通常の文字盤が表示されており、蓋をフリップアップすると裏面のサブディスプレイが見えるようになります。

蓋の使い道は大きくふたつ開示されています。ひとつめは、プライベートなメッセージの表示です。

画像

もうひとつはカメラと組み合わせて、AR的に向こうの景色と重ね併せて表示を行なうという使い道です。この図の例ではお勧め商品のタグが商品棚の映像と重なって表示されています。ウォーキングナビの応用例も開示されています。クレームとして権利化されているのはカメラも含んだ構成です。

画像

現状のメガネ型ウェアラブルよりは抵抗感が小さいような気はしますが、実際の製品とするには、ディスプレイが2面になることによる厚みの増加と電池の持ちの問題、(ナビのユースケースにおける)カメラ常時起動による電池の持ちの問題、そして、ディスプレイが小さいことによる使いにくさ等の問題が山積みだと思います。最後の問題点は、セカイカメラのようなスマホによるAR系のアプリですら現実的用途では結構使いにくかったことを考えるとさらにそれより小さいディスプレイでARというのはあまり快適ではないと思われます。

ということでアイデアとしてはおもしろいですが現実性はどうなのよという感じです。ウェアラブルのUIのアイデアは出尽くした感もありましたが、まだまだ斬新(かつ現実的)な発明が生まれる余地があるかもしれません。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事