“先発9人入れ替え”でチャイニーズ・タイペイに逆転勝ち。2連勝のなでしこジャパンが連覇に王手
E-1選手権第2戦で、なでしこジャパンはチャイニーズ・タイペイに4-1で勝利。19日の韓国戦(○2-1)に続く2連勝で、優勝に王手をかけた。
池田太監督は19日の韓国戦から9人を入れ替え、フレッシュなメンバーで臨んだ。3名が代表デビュー。両サイドハーフにFW井上綾香(右)とMF中嶋淑乃(左)が入り、DF林香奈絵がセンターバックで代表初キャップを刻んだ。
DF熊谷紗希を筆頭に海外組数名が招集されておらず、今大会は来夏のW杯に向け、国内組にとってアピールの場でもある。その中で、あえて代表経験が少ないメンバーを一斉起用したのは、相手との実績や力の差も踏まえてのことだろう。
GKは、「6月の欧州遠征に招集されず、悔しい気持ちがあったので、チーム(新潟)で課題克服に努めてきました」と語っていた平尾知佳が先発。
また、韓国戦ではサイドバックを務めたDF宝田沙織が林とセンターバックを組んだ。2トップは初先発のFW上野真実とFW千葉玲海菜という新コンビを抜擢。
「いろいろな組み合わせや、新しい選手を見てみたかった」と池田監督が振り返るように、試合中の大胆な配置換えも見られた。
その中で、立ち上がりは連係や技術的なミスが重なり、8分にコーナーキックから失点。チャレンジャーとして果敢に攻撃を仕掛けてチャイニーズ・タイペイの勢いを受ける形となったが、6分後に同点に追いつく。
右コーナーキックの場面で、MF猶本光のキックに千葉が頭で合わせて1-1。「光さんがあそこ(ニア)にボールを入れるサインがわかっていました」(千葉)と、練習の成果を示した。
その後はボール保持率を高めて再三のチャンスを作るが、決定力を欠いた日本。39分には林が負傷退場するアクシデントがあり、DF高平美憂がセンターバックで代表初出場となった。
その後、前半アディショナルタイムには、再びコーナーキックの流れから追加点。一度はクリアされたが、再び猶本のクロスをFW上野真実がファーサイドで頭で決めて逆転に成功する。
後半はDF北川ひかるが左サイドバックに入り、両サイドと前線を反時計回りにスライドさせるような形で配置を変化させている。そして58分、左サイドを起点に3点目が生まれた。北川と井上の連係でサイドを崩し、エリア内に走り込んだ猶本から上野、千葉と繋いで最後はDF清家貴子。
スピードに乗った攻撃参加に定評がある清家は、「しっかり得点、アシストという結果を見せたいと思っていたので、示せて良かったです」と、試合後のインタビューで表情を綻ばせた。
72分には、交代で入ったFW菅澤優衣香が4点目。井上のダイレクトパスに、長い距離を走った宮川が合わせてゴールをお膳立てした。
30度を超える炎天下での試合ということもあり、終盤は3点をリードした日本が圧倒した。
【次戦はアジアカップで敗れた中国】
シュート数で5倍(日本21本、チャイニーズタイペイ4本)の差をつけたことを考えれば、「もっとゴールを決めてほしかった」というのがサポーターの本音でもあるだろう。敵将である顏士凱監督は4月に就任したばかり。2連覇となったが、「日本という強豪に1点を入れたことは非常に自信になりました」と語っていた。
池田監督は、「守備の連動性は改善しなければいけないですし、リスクマネジメントも含めて、コミュニケーションの精度を上げていきたい」と、課題を総括。一方、メンバーを大幅に入れ替えた中で「ボールの動かし方などのオーガナイズは共通理解を持ってやれていた部分もあった」と、攻撃面では手応えも示した。
立ち上がりの失点を招いた要因として、「全体的に細かいパスミスやトラップミスが多くて、相手に勢いを与えてしまったのはあると思います」と反省の弁を述べたのは、左サイドバックで先発したDF宮川麻都だ。
強豪国との対戦では、立ち上がりの失点は試合の趨勢を決めてしまうこともあるため、特に集中力を高めていきたい。
宮川は代表4年目で、この試合の先発メンバーでは代表出場数も3番目に多かった。守備陣は慣れない組み合わせで代表経験の浅い選手が多い中、攻守のバランスを取りながら攻撃参加する積極性も光った。
FW陣では、千葉が代表3試合目で2ゴール目と結果を残した。
「試合の入り方は、前線から強度高く守備をすることと、背後へのアクションは常に意識して、相手が食いつくという特徴も分析していたので狙っていました」と、持ち前のスプリントを発揮した。一方、自己評価は厳しく、前線での積極的なアクションや決定力、サイドに入った時のポジショニングなど複数の課題に目を向けていた。複数ポジションでのプレーが求められる代表での生き残りをかけて、さらなる成長に期待したい。
代表初ゴールの上野も、持ち味を発揮した。代表出場9試合目で初先発。得意のポストプレーで起点となり、様々なコンビネーションで攻撃に厚みを持たせた。同じく前線では初出場の井上も、流動的に動きながら攻撃に絡んだ。相手やポジションによってプレーを変えられる調整力の高さは魅力だ。
中嶋は、もう少し長い時間プレーを見てみたかった。細かいタッチとしなやかな動きで相手を抜いていくドリブルは大きな魅力だが、その特徴をチームとして活かせるコンビネーションを構築するためには、もう少し時間が必要だと感じた。
韓国と中国が引き分けたため、中2日で臨む26日の中国戦では、引き分け以上で優勝が決まるなでしこジャパン。
1月のアジアカップでは、中国にボール保持率でもシュート本数でも圧倒しながら勝ちきれなかった。今大会、ここまで2試合で浮き彫りとなった技術的なミスや球際の甘さを克服し、内容面でも圧倒して勝ちたい。
なでしこジャパンの大会連覇がかかる大一番は、7月26日、カシマスタジアムで19時20分キックオフ。フジテレビで生中継される。