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塾経費は公立中学では私立の2倍近くにも…塾や家庭教師への支出額動向を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 学校の授業だけで十分な成果を挙げられれば塾は必要ないのだが…

子供の教育費は学校に直接係わるものだけでなく、塾などの習い事の月謝などが該当する「学校外活動費用」も勘定に含まれる。この金額は概して私立学校通いの方が高いものの、中学3年生では逆転現象が起きている。その実情を、文部科学省が2015年12月に発表した「子供の学習費調査」の最新版から確認していく。

直近2014年度における学習費総額は、総じて私立の方が高い。また子供が歳を経るほど総額が上がるのでは無く、公立は中学校、私立は小学校の方が(他の学校種類よりも)多くの学習費がかかる。これは両者とも主に「学校外活動費」がふくらむのが原因(「学習費総額」は「学校教育費(授業料やPTA会費、制服、遠足代など)」「学校給食費」「学校外活動費(家庭内学習費や各種塾月謝、図書費など)」で構成されている)。

↑ 年齢・学年別学習費総額(2014年度時点)(万円)
↑ 年齢・学年別学習費総額(2014年度時点)(万円)

今回はこの「学校外活動費」にスポットライトをあてる。

まずは学年別の「学校外活動費」の推移。私立では断然小学生がピークで、公立ではむしろ中学生の方が多少ながらも額が高めになる。意外かもしれないが、「学校外活動費」においては高校生は全般的に額は抑えられており、小中学生よりも低い。

↑ 年齢・学年別学校外活動費額(2014年度時点)(万円)
↑ 年齢・学年別学校外活動費額(2014年度時点)(万円)

「学校外活動費」には学習塾や家庭教師以外に、ピアノ、各種図書品、習字やそろばん、英会話教室などの教養的な塾、そして各種スポーツや芸術文化活動方面での塾の月謝も含まれる。私立小学生が特にふくらんでいるのは、一般の学習塾に加えてこれら「学習塾”以外”の塾」に通わせている事例も多いのが要因。

↑ 小学6年生における学校外活動費(円)(2014年度)
↑ 小学6年生における学校外活動費(円)(2014年度)

「学習費総額」同様、「学校外活動費」に限っても私立が公立以上に額面が大きいのは見ての通りだが、唯一中学3年生では「公立が私立を上回る」現象が起きている。これは主に補助学習費(もっと詳細を述べれば「学習塾費」)の額において、公立が私立を大幅に上回るため。「学校外活動費」の逆転までには至らないものの、中学2年でも公立が私立以上の額面を示している。

↑ 中学校における学年別校外活動費のうち補助学習費(万円)(2014年度)
↑ 中学校における学年別校外活動費のうち補助学習費(万円)(2014年度)

学習塾費用の点で公立中学3年生が跳ねあがる理由について、資料では一切触れていない(そもそも公的機関の調査結果発表系資料のため、分析は最小限に留まっている)。そのため類推でしかないが、小中学校と異なり、はじめての非義務教育の教育機関となる高校の受験のためには、公立中学3年生は私立と比べ、学習塾で学校の学習内容を補完する必要性に強く迫られている。そのため学習塾に通う人が多く、場合によっては複数か所への通塾もあり、額面が大きく底上げされてしまうのだろう。

実際、「学校外活動費」でも、その中の「補助学習費」でも、公立は中学3年生が最高額を示している。公立学校生(を持つ保護者)の高校進学への気合いの入れ方が、この金額の動向からも推し量ることができよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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