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照ノ富士復活Vに霧馬山の大関取り、若元春初の三賞、豪ノ山と落合の十両優勝争い 彩りの大相撲5月場所

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
千秋楽で賜杯を手にする照ノ富士(写真:日刊スポーツ/アフロ)

横綱・照ノ富士の復活優勝で幕を閉じた大相撲5月場所。千秋楽はカド番を脱出した貴景勝を押し出し、14勝1敗で優勝に花を添えた。優勝インタビューでは「本当に優勝したんだな」と実感を噛み締めた横綱。人としても尊敬できる横綱が土俵を締めてくれたことで、今場所はよりいっそうの盛り上がりを見せたと言えるだろう。

4関脇の活躍 若元春に初の技能賞

4関脇による対決も見ものであった。大栄翔は若元春を得意の突き押しで圧倒し10勝目。これで4関脇全員が二桁勝利という素晴らしい結果となった。残念ながら最後に負けてしまった若元春も、ここにきてようやく初の三賞受賞。しかもうれしい技能賞ということで、ぜひ喜びに浸ってほしいと願う。

場所後の大関昇進を確実とした霧馬山は豊昇龍と対戦。しかし、立ち合いから中に入っていった豊昇龍が、相手を持ち上げてたたきつけるような豪快な下手投げで霧馬山を下した。これで自身も霧馬山と並ぶ11勝。「次の大関は俺だ」と言わんばかりの気迫に圧倒された。

千秋楽では勝ち越しのかかった琴ノ若に惜しくも敗れはしたものの、今場所唯一横綱に土をつけた明生に殊勲賞が贈られたことを、個人的にはとてもうれしく思う。

盛り上がった豪ノ山対落合の十両優勝決定戦

また、今場所は十両の土俵も大いに盛り上がった。なんといっても千秋楽、まずは落合が欧勝馬を冷静に押し出して14勝。19歳にして、史上最速の新入幕を決定づける白星で締めくくった。続く豪ノ山は、立ち合いで当たった瞬間に北の若に変わられたがそれをこらえ、左を捕まえられながらも圧力をかけていき、最後は自慢の馬力で押し出し。強さを見せつけ、こちらも14勝目を挙げた。

これで、14勝1敗同士の十両優勝決定戦という史上初のハイレベルな争いが実現。本割では豪ノ山が勝っている。大注目のなか決定戦が行われた。立ち合い。落合は右から張っていったが、豪ノ山がものともせず前に出る。その勢いのままどんどん攻めていって、気迫のまま押し出し!満員の国技館が揺れた。筆者も思わず叫び、数秒後には師匠の武隈親方宛に「おめでとうございます」と親指がスマホをなでていた。

横綱復活優勝のなか、多くの力士たちが活躍して土俵を彩った5月場所。初日を前に15日間全日程のチケットが完売したほど注目度は高かったが、終わってみれば大変充実度の高い場所だったといえるのではないだろうか。1横綱、2大関、3関脇で迎えることとなりそうな来場所。気が早いのは重々承知しているが、楽しみに待ちながら今場所の余韻に浸りたいと思う。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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