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夢眠ねむ、でんぱ組.incから卒業、芸能活動を終了~夢眠ねむにインタビューで聞く今後

宗像明将音楽評論家
夢眠ねむ(提供:ディアステージ)

秋葉原の文化の体現者のでんぱ組.inc卒業、芸能活動終了

夢眠ねむがでんぱ組.incから卒業し、芸能活動を終了することが2018年10月13日に発表された。

でんぱ組.incは2019年1月6日、7日に日本武道館公演を開催し、7日が夢眠ねむの卒業公演となる。

でんぱ組.inc(提供:ディアステージ)
でんぱ組.inc(提供:ディアステージ)

でんぱ組.incからの卒業後、2019年3月末をもって夢眠ねむはアイドルを含む芸能活動から引退。今後はディアステージにそのまま籍を置きながら、クリエイター活動を行うことになる。

近年の夢眠ねむは、プロデュースしたキャラクター「たぬきゅん」、自身の声を使ったヴォーカロイド「夢眠ネム」など、作品を活発に世に送りだしていた。

夢眠ねむは、2008年に秋葉原ディアステージで働きはじめ、2009年にでんぱ組.incに加入。秋葉原の文化にひかれて秋葉原ディアステージで働きだした夢眠ねむは、そのまま秋葉原の文化の精神性を体現していくことになる。

また、夢眠ねむは多摩美術大学出身。でんぱ組.incの立ちあげプロデューサーである福嶋麻衣子(もふくちゃん)は東京芸術大学出身であった。アート畑から秋葉原の文化に魅了され、アイドル文化に足を踏みいれていった点でふたりは共通している。アイドルについて近い視点を持ちながら、プロデュースしていたのが福嶋麻衣子、ステージに立っていたのが夢眠ねむという関係性でもあった。ふたりは写し鏡のようであり、福嶋麻衣子が直接的にでんぱ組.incに関わらなくなってからは、夢眠ねむがその姿勢を継承していたとも言える。

夢眠ねむは、10年の歳月を捧(ささ)げたステージから去ろうとしている。残り約3カ月。彼女にインタビューを行った。

夢眠ねむインタビュー「『完成する』という意味の終わり」

夢眠ねむ(提供:ディアステージ)
夢眠ねむ(提供:ディアステージ)

――夢眠ねむさんが、ときに愛ゆえにファンに怒るTwitterやInstagramも好きでした。ステージからは引退となりますが、今後SNSはどうなるのでしょうか?

夢眠ねむ:

 ありがとうございます……!

 今のところ、TwitterもInstagramも3月末で終了する予定です。

 今後はプロデューサーとしてたぬきゅんと夢眠書店のInstagramのみ更新してまいります。

――本来は多摩美術大学を卒業したアート畑出身の夢眠ねむさんにとって、でんぱ組.incとしてJ-POPのマーケットで売れるということは、どんな感覚だったでしょうか?

夢眠ねむ:

 (J-POPのマーケットで売れたとは思っていないところはありますが、笑)

 自分の想像をはるかに超えた景色を沢山(たくさん)見れたことは感慨深いです。今振り返っても、夢か幻か……というシーンがたくさんあります。

 自分が表舞台に出て求めてもらえるということ自体が衝撃的であり、ありがたいことでした。

 感覚でいうと、売れる売れないは自分の能力の話だけではないということ。

 アイドルになるまでは、人に頼らず自分でなんでもやらなきゃいけないという錯覚に陥っていましたが、ひとりでは到底出来(でき)ないことばかり経験させていただいたことで綺麗事(きれいごと)抜きで「全て周りの人のおかげだな」という、人のありがたさを改めて思い知ったというか。

 自分以外の存在を強く感じました。

――秋葉原ディアステージに加わってからの10年間における、でんぱ組.incとソロのそれぞれの代表作だと思うものを教えてください。

夢眠ねむ:

 でんぱ組.inc/最初の武道館

 夢眠ねむ/魔法少女☆未満(曲、座右の銘としてのコンセプト含め)、夢眠ネム

――夢眠ねむさんの卒業発表前に、11月21日のソロ・アルバム「夢眠時代」のリリース、11月22日の新木場STUDIO COASTでのイベント「夢眠祭」の開催が発表されていました。アイドルとしての自分の幕引きの準備を粛々とするのは、どんな感覚でしたか?

夢眠ねむ:

 幕引きの準備は2017年から……もしかしたらもっと前からずっとやってきた印象はあって、夢眠ねむとしては「完成する」という意味の終わりに向かっている感覚でした。

 ソロ曲をまとめたアルバムはファンの方の声もありずっとやりたかったことではあるのですが、出すなら引退の時だなと思っていたので満を持して出させていただくことになりました。そして、祭は10周年のお祝いに、好きな人たちに祝ってもらいたいという純粋で贅沢(ぜいたく)なわがままで出来ています。笑

 でんぱ組.incとしては、愛しているグループからの卒業公演を、思い入れのある武道館で出来るのがありがたいです。

 今は楽屋でメンバーとどの曲をやろうかと話し合ったりして、寂しさもありながら本当に幸せなアイドル人生だなと噛(か)み締めています。

――卒業発表まで、約1年の葛藤があったともうかがいました。それはどんなものだったのでしょうか?

夢眠ねむ:

 葛藤といいますか、長い期間、メンバーや近いスタッフさん以外に言えなかったので「2019年は……」「2020年は……」と未来の話をしていただく時、そこに私はいないので申し訳なくてはにかむことしかできないという時期がありました。それでも、でんぱ組.incはこれからとずっと続くグループになっていって欲しいという思いは変わらないので遠くから見守る気持ちで未来の話をしていました。

――2019年1月7日のでんぱ組.incの日本武道館公演は夢眠ねむさんの卒業公演となります。当日の気持ちを今想像できるでしょうか?

夢眠ねむ:

 単純なんですけど、いいライブにしたいという気持ちが9割だと思います。その内訳にはもちろん、歌詞間違えたくないとかうまく歌いたいとか可愛い(かわいい)顔しておきたいとか。笑

 来てくれた人には絶対に楽しんで欲しいし、自分に対しても後悔がないように。

 あとの1割は感情の起伏用に余白としてとっておきます。すごく少ないですけど、この部分が大きくなっちゃうと、泣きすぎたりしてライブできなくなっちゃう気がする。本番は割合逆転してそうですけどね……!

――でんぱ組.incの立ち上げプロデューサーのもふくちゃん(福嶋麻衣子さん)のように、今後アイドルの後進を育てることはあると思いますか?

夢眠ねむ:

人間のアイドルを育てることはないと思います。一番いい時期の、可愛い女の子の人生を預かるなんて私には荷が重すぎる!笑

――今後はディアステージに残り、クリエイター活動に専念するとのことですが、でんぱ組.incとしての9年間の経験は、今後どのような作品に昇華されていくと思いますか?

夢眠ねむ:

 インターネットや本やテレビやラジオまで、思いつくメディア全てに関わるということは学生時代にやりたいと掲げていたので、それが実現し素晴らしい経験となりました。

 更(さら)に"歌って踊る"というアイドルになるまでは全く無縁だった活動を通して「ライブ」の素晴らしさを知れたこと。

 お客さんの声がどれだけ演者や制作者を支えているかということ。

 ステージに立ち、表を知ることで、裏方の大切さをより感じることも出来ました。

 私の経験をたぬきゅんにも伝えて、これからも二人でみんなに愛される作品を作れたらと思います。

――「ねむきゅん、表舞台に戻ってくるんじゃない?」と気安く言う人も世の中にはいると思います。そういう人を黙らせる決別の一言を、最後にください。

夢眠ねむ:

 形が変わっても表現活動は続けるので、どこからどこまでが表舞台で、芸能活動なんだ? という線引きは難しくかなり考えたことでもあるのですが、自分の"姿"を使うことはもう無いと思います。

 あ、でも、自分が出ているでんぱの神神DVDが出切っちゃうまでは神神のイベントだけは出る予定です。特別なお祝い事を賑(にぎ)やかしに行けるようなOGに憧れているので、激太りしないように頑張ります!笑

「秋葉原では卒業はおめでとうですからね」

 夢眠ねむがでんぱ組.incからの卒業を発表した今、2014年9月23日に夢眠ねむがTwitterに投稿した以下の文章を思いださずにはいられない。

 多少の強がりとともに夢眠ねむの卒業を祝いつつ、今後の彼女のクリエイター活動を楽しみにしたい。2019年1月7日の日本武道館での夢眠ねむの卒業公演で、私たちはどんな思いに胸を揺さぶられるのだろうかと考えつつ。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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