世界全体での固定電話と携帯電話、普及率はどれぐらいなのか
国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では毎年加盟国の携帯電話やインターネットの普及率をはじめとした、各種電気通信関連の統計データを更新・公開し、検証材料を提供している。今回は世界全体、あるいは先進国・新興国といった大きな枠組みにおける、固定電話と携帯電話の普及動向を見ていくことにする(※)。国の状態別で仕切り分けした場合、電話の利用状況にはどのような違いが見られるのだろうか。
固定電話・携帯電話それぞれにおける、世界全体・先進国・新興国それぞれの普及率推移は次の通り。収録されているデータは2005年以降のものであることから、グラフもそれに従っている。なおデータ取得時において、今件項目の値は2017年までが確認できたので、グラフにもそれを反映している。
固定電話の普及率が漸減の動きを示すのは、先進国・新興国を問わず、世界全体での流れ。それでも携帯電話が普及しはじめる以前は、固定電話が電話インフラのメインだったこと、そして社会全体としても個々の契約としても費用がかかるため、先進国での普及率は高い。
一方携帯電話は言葉通り「右肩上がり」の状態にある。先進国は飽和状態に手が届き始めた感もあり、上昇率は2009年前後から緩やかなものとなっているが、前進国はまだ年5%ポイント以上の伸びを示していた。2011年からは少々伸び率が低下しているが、それでも先進国と比べれば勢いはある。
そして2つのグラフを並べ見ると、電話インフラの観点では、新興国は従来の(先進国の)電話インフラの普及プロセス「電話そのものが無い」「固定電話が普及」「携帯電話が普及し、固定電話からシフトしていく」ではなく、「固定電話が普及」の手順を飛び越し、最初から「携帯電話が普及」に歩みを進めているのが分かる。インフラや機材の進歩が急なため、ステップをショートカットできる次第である。
新興国では早ければ次年にも携帯電話の普及率は100%に達するものと考えられる。複数のSIMカード保有の事例があるから、そのまま利用者数が増加しているとの考えはやや勇み足ともいえるし、インターネットに接続できるスマートフォン・マルチメディアフォンはそのうち何割かに過ぎない。とはいえ、ここまで多くの人が距離の離れた場所にいる人に情報をほぼリアルタイムで伝えられる、しかも高い機動力を有する手段を持つ時代は、有史以来初めてのこととなる。
あと数年で訪れる、「携帯電話の普及率が世界全体で100%超」「新興国でも100%超」が現実のものとなったとき、人と携帯、そして情報との関係はどれほどまでに変化しているのだろうか。言葉通り人は新たな時代を迎えることになるのだろう。
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各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(新興国編)
※データの仕切り分け、用語解説
「携帯電話普及率」は契約件数をカウントし、それを人口で除算したもの。一人で複数の契約をしている場合も多数あるため、100%を超える可能性は十分にある。
固定電話も同じ計算方法。ただし世帯では無く人口で除算していることや、利用形態を想像するに、1世帯で複数の固定電話契約が行われる状況は稀であることから(ましてや一人で複数の固定電話契約をする意味はない)、概して携帯電話の値より低くなる。
「先進国」「新興国」はITUの【Country classifications by region and development status】に従っている。この様式は国連の区分と同じと説明されている。