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「コーチングの介入」って? ワーナー・ディアンズ、出場停止期間減の背景語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
新加入のジェイコブ・ピアスとロックで「2メートルコンビ」を組む(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 昨秋、19歳で日本代表入りしたワーナー・ディアンズは、国内リーグワンでの出場停止処分が減免された。本人が背景を語る。

 流通経済大学付属柏高校を卒業した昨春に東芝(現東芝ブレイブルーパス東京)入り。身長201センチ、体重117キロの恵まれたサイズとボディバランス、献身ぶりが期待される。

 2021年秋には、日本代表候補合宿にナショナル・デベロップメント・スコッドの一員として参加した。そのまま本体の代表へ加わり、当時のトップリーグの公式戦へ出る前にテストマッチデビューを果たした(11月14日/対ポルトガル代表戦)。

 リーグワンでも開幕から先発出場を果たした。第2節では後半21分にバインド(相手を掴む動き)を伴わないハイタックル(肩より高い位置へのタックル)でイエローカードをもらい、その後の追加的処分で3試合の出場停止となったが、2月3日、その期間が1週間減免された。

 当事者の実感は。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今度の措置により、2月5日の第5節でプレーできます。

「試合に出られることは嬉しいですね。

今年、ブレイブルーパスはいいチームだと思っています。もっとミスが減ったら。皆でコネクションを取って、しっかりディフェンスができたら…。リーグワンで、一番いいディフェンスを持っていると思います」

――今季、イーグルスからアリスター・ロジャースディフェンスコーチが加わりました。

「皆、オフシーズンにはいっぱいディフェンス練習、タックル練習をやっていた。ディフェンスのシステムは結構、わかりやすくなりましたね。誰がどこに入るか、皆がコミュニケーションを取って、前に出る」

 もともと第5節まで出場できない予定だったディアンズが次戦に出られるのは、「HCP(Head Contact Process=頭部へのコンタクトへの過程)におけるコーチングの介入」という仕組みによる。国際統括団体のワールドラグビーが、昨年7月から試験的に導入するプログラムだ。

 危険なプレーによりサイティングの対象、もしくはレッドカードを受けた選手が、科された制裁処分の最後の週に「コーチングの介入(不正なプレーの原因、または一因となった、誤ったタックルやコンタクトの技術的な誤りに特化したコーチング)」を受けることで出場停止期間を軽減できる。

 コーチと選手本人は不正なプレーの原因となった技術面での反省点、問題解決策について申請。ワールドラグビーの専門レビューパネル(専門的な中立のコーチで構成)の審査を経て、処分が減免されうる。

 初めて制裁を受けるプレーヤーのみが対象の仕組みで、今回のディアンズは前出のロジャースコーチから受けた指導内容で申し出。リーグワンでこのプログラムが採用されたケースは初めてだった。

——「コーチングの介入」。どんなことがありましたか。

「自分のテクニックでどの部分がよくないかをチェックして、これからどういうタックルをすればいいか、どういうドリルを使って自分のタックルを成長できるか(を学んだ)。最初の方はミーティングの感じで、(問題のタックルの)動画を見て、『ここがだめ』などとチェック。その後、グラウンドでドリル(スキル練習)をやっていました。

僕は身長が高いので、タックルの3歩くらい前から(姿勢を)低くするためのドリルとか(をしました)。あと、タバインドの仕方とか(も修正)。(脇を広げながら)こういうタックルではなく、こう(と脇を締める)…と」

 手足が長く身体が大きくてもノーバインド、ハイタックルと取られづらくするよう、基本スキルを見直したわけだ。

 次戦以降では順法精神を意識すると同時に、「ボールキャリー(突進役)」としてもより存在感を示したいという。

「これまでボールキャリーがうまくできていないから、成長したいなと思っています。タイトファイブ(最前列の5名の一角)なので、ハーフからのパスをもらってキャリーする時は、フットワークを使うとか、相手の間にスペースがある時はそのスペースにアタックするとかして、幅があまりない(相手防御との距離が短い)エリアで前に出られるキャリーがもっとしたい」

 ブレイブルーパスは、国内であまりなじみのないルールを活用して戦力ダウンを最小化した格好。5日は東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で、静岡ブルーレヴズとぶつかる。

 周りに支えられたディアンズは、今度の経験も肥やしに成長し続ける。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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