Yahoo!ニュース

友人も驚く岡田義徳の変化!父となり固まった覚悟「家族を守りたい」

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
家族の存在が仕事にも影響を与えると語る岡田義徳さん(撮影:すべて島田薫)

 俳優・岡田義徳さんは芸能生活30年、作品に欠かせない名バイプレイヤーとして確固たる地位を築きあげてきました。個性的な役柄も多く、強い存在感を放つ姿から、以前は近寄りがたく感じられた雰囲気も家族ができてから変わったと言います。守るべき大切な家族との日常が、岡田さんの演技にも大きな影響を与えていました。

―普段の役作りはどうしていますか?

 僕は構築していくタイプではないので、100%作って現場に持っていくよりは、その場で面白いことをチョイスしてやっていくタイプです。相手のお芝居を受けてバックボーンができ上がることもありますし、演出家の方と話しながら物語やキャラクターを作っていくことも多いです。望まれていることをより面白くして出す、というつもりでやっています。

―俳優業のためにしていることはありますか?

 ちゃんと日常生活を送ること。昔は、プライベートがあまり見えない方がミステリアスでいいと思っていた時期もありますけど、今はちゃんと日常生活を送っている人の方が人間味・リアリティが出るような気がします。

 以前、風間杜夫さんが「日常生活が見えない俳優はつまらない」とおっしゃっていたことに共感したんです。朝、ゴミ置き場にゴミを持っていく姿が見える人の方が、演じていて近く感じてもらえると思います。遠くなりすぎたら役者は面白くない。

―確かに昔の岡田さんは、プライベートには触れてはいけないというか、ミステリアスな雰囲気がありましたけど、最近はパパの顔が見えるようになりました。

 隠すのが面白くないという社会の風潮もあると思いますし、僕も全部見せているわけではないですよ(笑)。ただ、いろいろな人と話す、隣人に「おはようございます」とあいさつする、そんな当たり前のことが最近はとても大事なことだと思うようになりました。

―具体的にはどんなことをしていますか?

 家のことですね。家事でいうと、僕は食事を全く作らないので、片付けと洗い物をします。食後の洗い物は全部やりますけど、作ってもらっているんだからそれは礼儀かなと。掃除・洗濯もします。洗濯物を畳むところまできっちりやりますよ。

 妻(田畑智子)は女優で、家事を専業にしているわけではないので、家庭のことは半分ずつ一緒にやります。僕も妻も働きたいから、子供に関してはベビーシッターさんも考えましたが、自分たちでできるならやってしまおう、というのが2人の考えです。イライラすることもありますし、「片付けてない」とかよく分からない何でもないことでケンカすることもありますけど、仲イイです(笑)。

―7月期のドラマ『ばらかもん』(フジテレビ系)では父親役で出演されていましたが、やはり本物感がありましたね。

 子供との距離感が分かるようになりました。これまでは親子役だと、子供に近寄ったり父親がしそうなことをしたりしていましたけど、子供は意外と放っておいても大丈夫だなと、自分に子供ができてから思うようになりました。距離の取り方が上手になったような気がします。

 普段は公園で遊んでいる子たちにも普通に話しかけるし、怒ったりもします。遊び場で順番を抜かしたりしたら、すごく怒ります。今の親は謝らない人も多いので、逆に僕が「怒ってすみませんね」と謝ったりして(笑)。言うのは簡単だから、実践するようにしているし、大切なことだと思います。

―岡田さんからこんなお話が聞けるとは、10年前は思いもしませんでした。

 僕を知っている若い頃の友達も、口を揃えてそう言います(笑)。

―今年はデビュー30周年ですね。

 振り返ると、まだまだできてないことだらけです。作品1つ1つをもっと大事にやっていきたい。特に子供ができてから、作品への臨み方が変わりました。

 今の自分に「できないです」はないと思っています。できないならできるまでやることが、僕のセオリーになっています。20~30代は失敗が次に繋がるし、失敗して学んでいくことがあったけど、40~50代は失敗してはいけない年代になっている気がします。次に繋げるためには、準備をしっかりすることですね。

―そんな“次の作品”は?

 これが説明の難しい作品でして(笑)。(長塚圭史さんが芸術監督を務める)KAAT神奈川芸術劇場の新作で、『SHELL(シェル)』という舞台です。

 題名どおり、いろいろな人が殻を持っていて、その殻の中に本当の自分がいる。どれが本当の自分か分からなくなる時もあるけど、何かに出合ったり大切なことがあったりすることで、本当の自分を見つけられる瞬間が来る、ということが伝わるといいなと思います。

―岡田さんの役は?

 僕は「高木」という役で、いろいろな人になっているけど、それはバレてはいけない、問題を起こしてはいけない存在。僕は別の人にもなるし、その人たちの時間も高木の中に流れている。そして、僕以外の誰かが高木をやっていることが見える、稀有な存在の方たちがいます。これをどうしたら文字で伝えられるか難しいです。ファンタジーとして謎解きをしていくと、楽しく見られるのではと思います。

 本当のことを言うと、今言った“僕が誰かになっていること”もあまり伝えたくないくらい、なるべく情報ナシで見てもらうのが一番面白いと思います。

 エンターテインメントをやる以上、お客さんには何かしらの答えをプレゼントしたいと思いますけど、皆さんが考えてくれることによって物語が完成することはあるんです。それには情報を出し過ぎないことも大事で、想像できる余白から自分で見つけてほしいという思いもあります。それにはピッタリの台本ですよ。Z世代の若い子たちもたくさん出ています。

―ご自分の強みは何だと思いますか?

 それ、本当に分からないんです(笑)。最近お芝居を教える機会があって、「自分の良さは?」という話から、自分の良さを自分で言う傲慢さ、良さだと思っているのは自分の思い込みで、すべて間違っているのではないかという答が出ました。結果、自分の良さは、自分を好きでいてくれる人や自分を起用してくれる方たちが決めることであって、自分で決めることではない、と思っています。

―私は岡田さんの存在感が素敵だと思います。例えばワンシーンのみのご出演で、他の人ならエキストラで終わったかもしれないシーンが、岡田さんだとすごく印象に残るのはなぜだろうと思うことがあります。

 僕はお芝居をする時、「こういう人、絶対にいる!」と思ってもらいたい一心でやっています。例えば今回の『SHELL』は、ファンタジーでも、見方を変えたらこういう人いるかも、と思われる人でありたい!絶対に存在させたい!と思っています。ずっとバイプレイヤーとしてやってきて、「隙があったら主役食うよ」って思っています(笑)。

―ずっと続けて来られた理由は何ですか?

 実は、役者を辞めた時期が2年くらいあるんです。意外と気づかないですよね(笑)。普通にバイトして、他の仕事を探したりしていました。それまで自分が築き上げてきた役者としてのつまらないプライドや偏った考えを、その時1回全部捨てたから、楽になったのかもしれないです。

―自分の中で覚悟が決まった転機はありましたか?

 デビューした頃は、「カッコいい」とか、「目立てる」とか、ちゃらついた気持ちでしたけど、20代で映画『渚のシンドバッド』や舞台『カラフト伯父さん』など、役者という仕事の面白さに気づかせてくれた人たちとの出会いが大きかったです。

 本当に腹が据わったのは、つい最近…40代に入ってからのような気がします(笑)。より深い覚悟というか、父親として家族を守りたいという思いが強くあるので、役者としてもいい仕事をしていきたいという思いが強くなりましたね。

―お子さんから学ぶことはありますか?

 正直でいること、大人ぶらないこと、たくさんあります。上の子が4歳で、「これはいいけどあれはダメ」というのが分からない。「これがいいならあれもいいでしょう」という論理だけど、自分でも何でダメなんだろうと思うこともあるので、“ダメ”ということで、可能性を潰さないように、言葉選びはよく考えます。

―奥様に思うことはありますか?

 強さを持った素晴らしい母親だと思います。妻としても本当に大事にしていますし、ご飯を食べる2人の時間が大事、お互い一生懸命やっています(笑)。

【編集後記】

声が素敵。じっくりお話を聞いているうちに、根本的なところに改めて気づきました。「場面での存在感」「目力の強さ」「信頼感」。私の中の岡田さんのイメージでしたが、今回新たに「父性」「優しさ」「愛情」も加わりました。家族のことを思うままに話す素直さ、家事・育児に対する考え方、妻への愛情にあふれていてうらやましくなりました。ひそかに「ベストファーザー賞」なるものを受賞してほしいと思っています。

■岡田義徳(おかだ・よしのり)

1977年3月19日生まれ、岐阜県出身。1993年『浅草橋ヤング洋品店』のモデルオーディションをきっかけに芸能界へ。1994年、ドラマ『アリよさらば』(TBS系)で俳優デビュー。『木更津キャッツアイ』(TBS系)、大河ドラマ『篤姫』(NHK)など多くの作品で存在感を示す。近年は映画『鬼が笑う』『THE3名様』、舞台『歌うシャイロック』などに出演。2018年、女優・田畑智子と結婚、2児の父。『SHELL』は11/11~11/26までKAAT神奈川芸術劇場にて、12/9~10は京都芸術劇場・春秋座で上演予定。公式サイト:https://www.kaat.jp/d/shell

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

島田薫の最近の記事