はるな愛、ニューヨークへ!年間130万人が訪れる音楽の殿堂で、オーディション結果は数年待ち⁉
テレビ番組出演、飲食店経営に加え、最近は海外での活動も目立っているはるな愛さん。ニューハーフタレント人気の先駆けとして知られますが、ブレイクのきっかけは、松浦亜弥さんの音声に合わせてコンサートの様子を完全再現する“エアあやや”。その誕生の背景は、思わぬアクシデントからでした。現在は毎月ニューヨークに通い、世界で活躍することを夢見て挑戦中。ニューヨークの「グランディーバ バレエ団 ジャパンツアー2023」アンバサダーにも就任して忙しい日々です。
―海外で活動することが増えていますね。
きっかけは、優勝を果たした「ミスインターナショナルクイーン」(2009年)世界大会での出来事です。エントリーしていたネパールのニューハーフの子たちが、一緒に食事を楽しんでいる最中に泣き出したんです。「自分たちの国には、こんな自由はない」と。
私がテレビに出始めた当時も理解はされなくて、(ニューハーフが出演する)ゴールデンタイムの番組に大手のスポンサーさんがつくのは難しい状況でした。そういう時代にもかかわらず、皆さんが「愛ちゃ~ん」と言って受け入れてくださったんです。あの頃に比べると理解が広がってきましたが、多くの国ではまだまだの状況なので、私が海外で活動することで伝えられることがあるかもしれないと思って動き始めました。
5年くらい前から毎月1週間、ダンスと歌のレッスンのためニューヨークに行くようになりました(コロナ禍中はストップ)。友達の友達として現れたのが故・坂本龍一さんだったり、通っている歌の教室に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークがいたり、ニューヨークは刺激がいっぱいです。
―具体的にどんなことをしていますか。
「コメディクラブ」という、エディ・マーフィーなどがステージに立った歴史あるクラブでワンマンライブをやりました。フランク・シナトラの曲で、有名クラブ「アポロ・シアター」のオーディションも受けました。合格したら連絡が来るスタイルで数年経ちますが、まだ合否の結果は来ていません(笑)。
ライブの内容は、“エアあやや”はもちろん、ビヨンセやホイットニー・ヒューストンといった海外版のエア芸、そして演歌も歌います。
―お客さんの反応は?
すごく笑ってくれます。海外では、ドラァグクイーンが口パクでやるショーがあって、私の場合はそこに小道具も入るので、めちゃめちゃ楽しんでくれるんです。
例えば“エアあやや”は、私が「ずばっと♪」と歌いながらガニ股で足を開くコテコテなことを面白がってくれます。“エアホイットニー・ヒューストン”では、映画『ボディガード』(1992年)の「エンダ~♪」で有名な『I Will Always Love You』を口パクするんですが、お客さんにケビン・コスナーのボディガード役でステージに上がってもらって、最後は「エンダ~♪」で私を抱きしめてもらうんです。打合せナシだからドタバタするけど、それも笑いの一つでね。
そして、演歌。私は子どもの頃から演歌で「ちびっ子歌合戦」にも出場していて、同世代で一緒だったのが水森かおりちゃん、北山たけしくん、夏川りみちゃんでした。ちなみに、ニューヨーク5番街を着物で歩いていた時、皆に「ストップ!ピクチャー」と声をかけられて、やはり日本の需要はあると感じました。ドレスで歩いてもせいぜい「カワイイ」くらいだったのにね(笑)。
細川たかしさんの『望郷じょんから』は、口パクではなく実際に歌うんです。前奏は三味線の独奏で知られていますが、その前奏用に“スコップ・しゃもじ”を用意して、それでお客さんに“エア演奏”してもらいます。参加型のステージを意識しています。
―日本でエア芸を広めたのは、はるなさん。“エアあやや”はどうして生まれたのですか。
経営していた東京・三軒茶屋のバーにお客さんが全然来なくて、「どうしよう」と思っている時でした。私は、ニューハーフのお店で人気は出たものの、男であることにコンプレックスを持っていて、女の子がやっているようなお店を作りたかったんです。でも、それなら可愛いキャバクラ店がいっぱいあるし…。
そんなことを考えるうちに、私の原点は「しゃべって踊って楽しんでもらうこと」だと気づきました。7人入ったらいっぱいになるバーだったんですけど、カウンターの中にクリップライトや小さい扇風機を仕込んで、ミラーボールをスイッチでコントロールできるようにして…照明・音響・ダンスその他すべてを1人でやっていたらウケまして、お客さんも売り上げも増えていきました。
ところが、ある朝起きたら全く声が出ない、かすり声さえ出なかったんです。私のウリはしゃべりだと思った矢先のことでした。しょうがないから筆談で接客していたら、お客さんは「また来るわ~」と帰っていく。
減っていくお客さんを見て「何かせなあかん」と思った時、大好きな松浦亜弥さんのコンサートDVDを流して口を合わせたら、笑ってくれたんです。口パク芸はショー ブでもありましたけど、私は歌だけでなく、あややのMC部分も一言一句全部覚えていたので、すべてやったんです。まさかテレビでやるようになるとは思いませんでしたし、今はニューヨークでもやっていますけどね(笑)。
―そのニューヨークで生まれた「グランディーバ バレエ団 ジャパンツアー2023」のアンバサダーに就任されました。
男性が女装して踊るコメディバレエ団で、子どもの頃に(当時のコメディバレエ団の)コマーシャルを見てからずっと大好きだったんです。芸能界に入ってから初めて観る機会があったんですけど、今まで世界中のショーを観てきた中でも「グランディーバ バレエ団」は最高です!言葉はないけど、観て笑えるんです。
バレエの技術が高いのでバレエファンの方もたくさんいらっしゃいますし、バレエを全く知らない人も楽しめるのがすごいところ!男性があれだけしなやかで美しい動きができるなんて素晴らしすぎる。しかも、女性しか履けないトゥシューズを履き、筋肉で鍛え上げた男性の体重を支えるのは、足の甲を鍛えてないと本当に骨折するくらい大変なことなんです。空中で足を開いて跳ぶシーンもそうです。トゥシューズでのポージングから振りに入るテクニックは見事です。
笑いの基本は「緊張と緩和」。私自身、舞台を経験する中で言われてきたことですが、バレエもまさに全身緊張で、筋肉が張った状態で踊ります。そして、緊張のダンスシーンでこんなことしたら絶対面白いだろうな…と思うようなことが、全部盛り込まれています(笑)。例えば『エチュード』で足を上げると、支えている人が足の裏を電話にしちゃうとかね(笑)。
バレエを観たことない人には絶対観てほしいです。「何でここで今それしちゃうの?」が満載です!「次は何をやるの?」というワクワク感が続く、本物なんです。
そうかと思えば、『瀕死の白鳥』は切なくて、ハートをわしづかみされて泣きそうになります。そこはぐっと引き込むの。そして、緊張が緩和されて面白い見せ場が入ってくるんです(笑)。本当にヤバイから!!
チュチュを着ているから肩甲骨の動きがよく見えるし、今まで見たことのない腕の動きがあるし、メイクがあり笑いもある。『瀕死の白鳥』は、切ない中に笑いがあるからもっと切なくなる。これは多分「グランディーバ バレエ団」にしかできない表現だと思います。
―はるなさんが応援歌を歌っている?
私が歌う『まぼろし ザ ワールド』が「グランディーバ バレエ団」の応援歌になりました。うれしい~!振付を担当してくれたakaneちゃんは、大阪府立登美丘高等学校のダンス部コーチで、あの“バブリーダンス”を生み出した人です。
この間、akaneちゃんがプロデュース・振付を手掛けている「アバンギャルディ」というおかっぱで学生服を着た女の子たちが、岩崎宏美さんの『シンデレラ・ハネムーン』を踊って、アメリカのオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」で決勝まで行きました。彼女の作るフォーメーションが万華鏡のようで素晴らしいんです。
今回『まぼろし…』では宇宙人ダンスを作ってくれて、手を宇宙人のツノみたいにして踊るんです。「アバンギャルディ」の女の子たちが世界に挑んでいるのを見て、私も挑戦したい気持ちでいっぱいになりました。アメリカのオーディションを受けるために、VTRを作って挑戦しようと思っています。
世界には、すごいエンターテイメントがたくさんあります。今回「グランディーバ バレエ団」が来ることによって、皆さんに生の魅力を味わってもらうチャンスだと思います。しかもオリジナルメンバーが来てくれるので、この機会に世界のエンターテインメントを観てもらいたいです。
―これだけ多忙の中、ボランティア活動も続けているそうですね。
東日本大震災が大きなきっかけです。津波で漁師のお父さんが流されたという福島出身のスタッフがいたので、発生から10日もしないうちに一緒に現地に行きました。被災した皆さんが、それまで泣けなかったけど、私の顔を見たら初めて涙が出たと言っていて…。
最近の日本は災害が増えているので、毎月お休みの時に必要な地域で必要なことをするようにしています。私も子どもの頃食べられない家庭でしたので、子ども食堂をやったり、寄付された洋服を集めて支援したりもしています。
今回の「グランディーバ バレエ団」の皆さんも、子どもの支援に協力してくれています。子どもたちに本物に触れてもらいたいし、バレエは難しいものではなくて、笑える楽しいものだということを知ってもらいたい。
ステージ、テレビ、お店。私はすべて同じエンターテインメントだと思っています。何でも「楽しんでもらう精神」です。
【編集後記】
本当に1つの体で足りているのかと不思議なくらい、いろいろなことをしています。日本でのタレント活動、さらなる活躍の場を求めて海外でのパフォーマンス・レッスン・オーディション。バレエ団のアンバサダーに新曲リリース、飲食店経営にセレクトショップオープン、子ども食堂の運営と毎月被災地でボランティア活動…そしてインタビューも全力投球。1秒も無駄にしない勢いで一生懸命話してくれます。楽しそうな姿に、私も幸せな気持ちになりました。
■はるな愛
1972年7月21日生まれ、大阪府出身。2008年“エアあやや”で人気を博し、多数のテレビ番組に出演。2009年「ミスインターナショナルクイーン2009」で世界一の称号を得る。「エンジェルオブタレント2009」優勝、「ベストジーニスト2010」、「ネイルクイーン2011」受賞。2010年「24時間テレビ」のチャリティ-マラソンランナーに抜擢され完走。2013年韓国観光名誉広報大使に任命され、日本と韓国の懸け橋になる。2021年、東京パラリンピック開会式でトップバッターダンサーとしてパフォーマンス。2023年『まぼろし ザ ワールド』をデジタルリリース。同年「グランディーバ バレエ団 ジャパンツアー2023」アンバサダーに就任する。
■グランディーバ バレエ団
1996年、ヴィクター・トレビノ氏によってニューヨークにて設立された、男性だけによるコメディバレエ団。トゥシューズテクニック・まばゆいメイクアップ・しなやかな身のこなし・ユーモアあふれる公演は、アメリカ、日本、フランス・イタリアなどのヨーロッパ各国、韓国・中国・シンガポールなどのアジアでも行われている。「グランディーバ バレエ団」ジャパンツアー2023は、12/22福岡・北九州ソレイユホールを皮切りに、大阪・東京・茨城・愛知・埼玉にて12/28まで行われる。https://arch-ent.jp/topics/grandiva2023/