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XGが2024年、グローバルな音楽シーンでさらなる飛躍を果たす理由

柴那典音楽ジャーナリスト
(画像提供:XGALX)

2024年、グローバルな音楽シーンを舞台にさらなる活躍を期待できるアーティストは誰か。さまざまな名前が挙げられるが、その筆頭候補と言えるのが7人組ガールズグループのXGだろう。

XGは、2022年3月にデビューしたヒップホップ/R&Bガールズグループで、メンバーは全員日本人。グローバルエンタテインメントプロダクション「XGALX」からデビューした初のアーティストだ。

グループ名の由来は「Xtraordinary Girls(=規格外の女の子たち)」。その大きな特徴は、プロジェクトの最初から世界を見据えた準備を積み重ねてきたことだろう。デビューまでに日本と韓国で約5年の育成期間をかけ、歌やダンスを徹底して練習し、英語と韓国語にも習熟してきた。エグゼクティブプロデューサーのJAKOPS(SIMON)は韓国のボーイズグループの元メンバーで、育成にはK−POPのメソッドが全面的に取り入れられた。

デビュー当初から注目度は高かったが、2023年はXGにとってさらなる躍進を果たした一年となった。1月リリースのシングル「SHOOTING STAR」、9月リリースのミニアルバム「NEW DNA」が続けざまにヒットし、ミニアルバムの収録曲「GRL GVNG」は米ビルボードチャート「Hot Trending Songs Powered by Twitter」(旧Twitterにおけるリアルタイムのトレンドに基づいたチャート)で日本人初の1位を獲得。5月にニューヨーク、8月にロサンゼルスで行われた88rising主催の大型音楽フェス「Head In The Clouds」にも出演を果たした。

昨年12月にSpotifyが発表した2023年の「海外で最も再生された国内のアーティスト」ランキングでは、YOASOBI、藤井風に続く3位となった。

(出典:Spotify公式SNS)
(出典:Spotify公式SNS)

「海外で最も再生された国内のアーティストの楽曲」ランキングでも、「SHOOTING STAR」が6位、「LEFT RIGHT」が7位にランクインしている。

(出典:Spotify公式SNS)
(出典:Spotify公式SNS)

なぜXGは世界的なブレイクを果たすことができたのか。まずは卓越したボーカルとダンスパフォーマンスの実力、楽曲のクオリティの高さが理由に挙げられるだろう。「SHOOTING STAR」はパワフルで切れ味鋭いラップが魅力のヒップホップチューン。昨年12月にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に初登場した際にはこの曲が一発撮りでパフォーマンスされた。

《XG - SHOOTING STAR / THE FIRST TAKE》

シカゴ発の音楽ジャンル「ドリル」の不穏で重いビートを取り入れた「X−GENE」は、スピーディーで巧みなマイクリレーが聴きどころ。楽曲は全曲英語詞で、北米のメインストリーム・ポップスの潮流に沿ったものになっている。

海外メディアでの露出も勢いを後押しした。昨年11月には米ビルボード誌で日本人ガールズグループとして初の表紙に起用。ローリング・ストーン誌が選ぶ23年のベスト曲ランキングでは流麗なR&Bチューンの「LEFT RIGHT」が77位となり日本人アーティスト唯一の選出となるなど海外の有力音楽メディアからも高い評価を集めている。

《XG - LEFT RIGHT (Official Music Video)》

デビュー以来海外を主戦場にライブやプロモーション活動を行ってきたが、日本での人気も急速に拡大しつつある。昨年11月には国内初の単独有観客ライブがぴあアリーナMMで開催された。約2万人を動員したライブへのチケット応募総数は20万件を超えた。

《XG - HESONOO & X-GENE (from XG 'NEW DNA' SHOWCASE in JAPAN)》

2024年には初のワールドツアーを行うことも発表されている。北米最大級の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」への出演や、メンバーが夢に掲げる全米チャート1位獲得などにも期待は高まる。XGの成功が日本の音楽シーンに与える刺激も大きいはずだ。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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