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あなたは何をシェアしたいか?共有型社会に向けたシェアリング・サービスの可能性を調査

斉藤徹超高齢未来観測所
共有型社会は到来するか(写真:アフロ)

注目を浴びるシェアリング・サービス

近年、新しいサービスとして注目を集めているのがシェアリング・サービスです。一般にシェアリング・サービスとは、ソーシャルメディアなどの活用により、モノやサービスなどを交換・共有する仕組みの事をさし、この手法が拡がることで、従来型の市場経済とは異なる新たな”シェアリング・エコノミー“が、21世紀を主導するという予測もあらわれています。

日本でも市場規模はまだ小さいものの、数々の新しいシェア・サービスが生まれています。米国を発祥とする民泊のairbnb(エアビーアンドビー)、ライドシェアのUber(ウーバー)を初めとして、自家用車、家事サービス、自己保有駐車場、子育てサービスなど、多様なシェア・サービスが登場しています。

また、デジタルに支えられたシェア・ビジネスとは異なるフィールドからも、シェア(共有)は注目されています。例えば、ある志を持った農家の田んぼや農園を意気に感じた人々が共同所有し収穫物をシェアする、共同埋葬や樹木葬のように従来私有物であったをお墓をシェアするといった「社会的共同所有」の動きです。かつて、経済成長に支えられた時代に於いてはモノを所有することに自己実現価値や喜びを見出す人が多数でした。しかし、現在はむしろ物を所有しないことに価値を見出すミニマリストの登場に象徴されるように、モノやサービスの価値は“所有価値”から“使用価値”にシフトしつつあるものと考えられます。

では現在、実際にどのようなシェアリング・サービスが支持される可能性が高いのか、またどのような層がシェアリング・サービスを支持しているのかを電通総研「消費マインド調査」(2016年3月実施)で調べてみました。(全国20~69歳男女、1200サンプル)

シェアリング・サービスのマトリクス

今回の調査では、シェアリング・サービスの概念を少し広く捉え、これも近年市場拡大している「使い放題サービス」も大きな意味でのシェアリング・サービスに含めました。質問したサービス・タイプを大きくジャンル分けすると表1のような形となります。縦軸に<パブリック領域>←→<プライベート領域>、横軸に<デジタル財・サービス>←→<物理財・サービス>のマトリクスを作成し、その中に具体的なサービスをプロットしてみました。それぞれのグループを「【A】ネット活用共有・シェアモデル」「【B】デジタルやり放題モデル」「【C】公共的財の共有・シェアモデル」「【D】定額使いたい放題モデル」「【E】ルームシェアモデル」と名付けました。設問サービスは、実際に存在するサービスもあれば、実際にはまだ登場していない仮想サービスも含みます。設問項目は全部で32作成し、「このような商品やサービスがあったら利用したいか」(価格はいずれも高額すぎない無理の無い価格)という意向を確認してみました。

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その結果、順位の高かったものの上位20位ランキングが表2となります。これを見て分かる通り、現在注目されている「【A】ネット活用型共有・シェアモデル」の支持度はまだ低い状態で、「【C】公共的財の共有・シェアモデル」や「【D】定額使いたい放題モデル」が比較的高い支持を集めました。これは、【C】や【D】が既に商品サービスとして存在しているものも多かったり、利用頻度の高そうな使い放題や、共同利用サービスが多いためと考えられます。

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また、【A】や【B】のソーシャルメディアやネット活用型サービスはデジタル・リテラシーによって利用意向に差が大きく表れる可能性もあります。そこで次に年代別の利用意向も確認してみました。(表3)

どの年代でも人気が高かったのは全体でも1位の「温泉やリゾートホテルを1年に数泊分利用する」でした。それ以外では、「定額で数多くの映画を見放題」「電車乗り放題」「スポーツクラブ利用し放題」が高い支持を集めています。

全般的に、質問項目へ概ね高い利用意向を示しているのは20代であり、年代別ベスト5に入っていない【A】のシェア・サービスに全般的に反応を示しているのも20代(とりわけ女性)でした。

年代によって支持するサービスにも差異が表れており、「定額でのオンライン学習」「旅行先で個人宅の空き部屋に宿泊」に反応を示したのは40代、「定額でホテルや旅館が当日に限り利用できる」「定額で気に入った家電製品をネットから選び、一定期間利用できる」には50代、「共同埋葬、樹木葬、共同タイプのお墓を購入する」には60代が反応を示しました。世代特性と利用意向サービスには一定の相関が伺えました。

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シェアリング・エコノミーは到来するか

文明評論家ジェレミー・リフキンは、著書『限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭』の中で、シェアリング・エコノミーの動きを第3次産業革命に匹敵する動きであると評しています。彼は、新たな産業革命を稼働させるためには「コミュニケーション・エネルギー・輸送マトリクス」の3点セットが必要であると語っています。第1次、第2次産業革命時のそれは、それぞれ「印刷・石炭・蒸気機関」、「電話・石油・内燃機関」でしたが、現在進行中の第3次産業革命は「インターネット・再生可能エネルギー・3Dプリンター」が新たなインフラとなり、これらの台頭と伸長が資本主義市場をニッチな市場へ後退させ、シェア交換価値を基本とする共有型経済社会をもたらすだろうと予言しています。

現在登場しつつあるこれらシェアリング・サービスは、従来の所有型経済を破壊するだけのイノベーティブなインパクトを今後持ち得ることになるでしょうか。しばらくは、これらの動きを注意深く見つめていく必要がありそうです。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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