【傾聴】子どもの話の聴き方にはコツがある!プロが実践する会話例を幼児教育講師がケース別に徹底解説!
幼児教育講師のTERUです。
日々の子育て本当にお疲れ様です!
今日はこれまで4回に渡りお届けしてきた『アクティブリスニング』の最終回です。
前回までの記事がまだの方はぜひ併せてご覧ください。
>>前回までの記事はこちら
・アクティブリスニング#1
・アクティブリスニング#2
・アクティブリスニング#3
・アクティブリスニング#4
前回までにアクティブリスニングを実践するのに必要な次の3つの要素をお話ししました。
- アクティブリスニングの心構え
- 『受け入れの気持ち』を子どもに伝えるコツ
- 合いの手の入れ方
今回は、実際にお子さんとの会話の進め方の全体像をイメージできるように具体例をお話ししていきます。
【お子さんとの会話の進め方】
①話の内容を2つに分ける
- 結論が必要ない話(たわいもない普通の話など)
- 結論が必要そうな話(何かの悩み相談や、お子さんが悪いことをしてしまった後の会話など)
1.の場合、普通に『相槌』『ミラーリング』『普通の質問』を使って思う存分聴いてあげればOKです。
2.の場合、少し工夫が必要です。
②「聴くだけで自ら解決」を目指す
まずは1.同様に、『相槌』『ミラーリング』『普通の質問』を使って話を聴いていきます。
そうしていくうちに、子どもが満足してスッキリしたり、自ら「〇〇してみるね!」とか「次は〇〇を気をつけようかな」と結論を自然に導き出せたらそれでOKです。
これがいわゆる聴いてもらえるだけで解決するケースです。
アクティブリスニングの基本スタンスは、この自ら解決できたり、スッキリできるようにまずは思う存分話をさせてあげるということですので、なんとか結論を導き出させてあげようと思わないで聴くだけでOKです。
③「結論を出すための質問で自ら解決」を目指す
②だけでは難しく、お子さんが自らの力ではなかなか結論を出せそうになかったり、気持ちも整理ができそうにないときは、「〇〇ちゃんはどうすれば良いと思う?」などというように『結論を自ら出せるような質問』をして助け舟を出してあげましょう。
この段階で親の見解やアドバイスはしてはいけません。あくまで子どもが自ら結論を出すように質問で導いてあげましょう。
これで自ら「〇〇してみるね!」などと結論を導き出せればそれでOKです。
④「親が選択肢を提案して自ら選んで解決」を目指す
③でも子どもが結論を出せなかった場合、次は親からの提案です。
アクティブリスニングの基本は親の意見などを言わないことですが、問題解決において親が何も言わないで解決できるケースばかりではありません。
どうしようもないときは、親がちゃんと正しいことをアドバイスしてあげたり、教えてあげる必要もあります。
その際のポイントは、なるべく選択肢で提案することです。
「〇〇ちゃんができることはAとBがあると思うんだけど、どっちのが良いと思う?」
といった感じで、親の意見の押し付けではなく、あくまで子どもの考えや意見を大切にする提案をし、その選択肢を子ども自ら選べればそれでOKです。
⑤「親の提案で解決」を目指す
④でも選べなかった場合は、「お父さんはAが良いと思うから次はAでまずはやってみようか!」と親が提案してあげればOKです。
解決という表現を使いましたが、次のアクションが決まれば、その1回の話の中で完全に解決する必要なんてありません。
そして、今の全体像ではお話ししませんでしたがお子様が自ら結論を出せたときには、前回お話しした『後押し』をしてあげて、最後には『感謝』を伝えることを忘れないようにしましょう。
最後に、具体的なアクティブリスニングの会話例をご紹介して終わります。
たわいもない会話の例をあげても参考になりませんので、何かしら問題があったり、子どもが何か結論を出す必要がある可能性のある題材で例を挙げてみます。
【アクティブリスニングの会話例】
ケース① 小学生の子どもが学校から帰ってきて、肩を落としている時の会話
お子さんの名前はかなちゃん。お友達の名前がまおちゃんです。
子「まおちゃんが今日一緒に遊んでくれなかったんだ」
親「まおちゃんと一緒に遊べなかったんだね。それは残念だったね」(気持ちのミラーリング)
子「もう一緒に遊びたくない!まおちゃんはもう友達じゃない!」
親「そっか、まおちゃんとお友達でいたくないって感じたんだね」(ミラーリング)
子「うん、まおちゃんこの前は「一緒におままごとしよう」って言ってたのにさ」
親「そっか、まおちゃんが「一緒におままごとしよう」って誘ってくれたこともあったんだね」(ミラーリング)
子「うん、まおちゃんおままごと好きなの。でも、いつもまおちゃんがお母さんで、私はお母さんになれないの」
親「そうなんだ、かなちゃんも本当はお母さん役がやりたいんだね」(気持ちのミラーリング)
子「たまに私もお母さんになれるけどね、まおちゃん優しい時もあるから」
親「そっか、優しい時もあるんだね。今日は何かあったのかな?」(ミラーリング+質問)
子「わからないけど・・・でも今日ちょっと学校でいつもより静かだったかも」
親「そっか静かだったんだね。それはちょっと心配だね」(気持ちのミラーリング)
子「うん、何かあったかもしれない。明日聞いてみようかな」
親「良いんじゃない?気にかけてくれてまおちゃん嬉しいと思うよ」(後押し)
子「うん」
親「また教えてね。話してくれてありがとう」(感謝)
実際はこのようにシンプルに進むわけではありませんが、基本的な流れは今のような感じです。
振り返って解説していきます。
まず前半は相槌やミラーリングを中心に話を聴いていきます。
そして、お子さんが「まおちゃんは優しい時もあるから」というプラスな発言が出てきたタイミングで「今日は何かあったのかな?」とまおちゃんの気持ちを考えさせるための質問をしています。
そして、自分で「明日聞いてみようかな」という次の行動を決めることができたので、それに後押しをして、最後に感謝を伝えてます。
これが一番オーソドックスな形のアクティブリスニングです。
親は何一つ提案やアドバイスをしていませんが、お子さんが自らプラスな行動を決めることができました。
これをアクティブリスニングを何も考えずに話を聴き、途中で「まおちゃん何かあったんじゃない?明日聞いてあげたら?」とか「お友達は大切だよ?1回嫌なことがあったくらいで、もう友達じゃないなんて言っちゃダメだよ?」などアドバイスや指導をしてしまうと、子どもは全く聴いてもらえていると感じませんし、自分で前向きな結論を出すこともできなかったと思います。
ケース② 年長のお子さんが自分がやりたいと言って始めたサッカーを辞めたいと言った時の会話
お子様の名前はまさるくん。お友達の名前がこうきくんです。
子「もうサッカーやめる」
親「どうしたの?何かあった?」(質問)
子「こうきくんのが上手で、全然1on1勝てないんだ」
親「そっか、勝てないのが悔しいんだね」(気持ちのミラーリング)
子「うん、僕には才能がないんだ」
親「悔しいんだね」
子「今日は10回も戦ったのに、2回しか勝てなかった」
親「そうなんだ」
子「まぁ、こうきくんは僕より2年も長くサッカーやってるから強いんだけどね」
親「こうきくんは2年早くサッカー始めたんだね」
子「うん」
親「まさるくんは、こうきくんに勝つためにサッカーを始めたの?」(気持ちのミラーリング+質問)
子「違うけど悔しい」
親「そうだよね、悔しいのはとてもわかるよ。まさるくんは何でサッカーを始めたんだっけ?」(気持ちのミラーリング+質問)
子「香川真司みたいなプロになりたいから」
親「そうだよね!香川真司カッコいいもんね!」(ミラーリング)
子「うん、ドリブルもシュートもパスもうまいんだ!」
親「とっても上手だよね!」(ミラーリング)
子「うん、身長小さいのに外国の選手にも負けないんだ!」
親「そうだよね、まさるくんも香川選手みたいになりたくてサッカー始めたんだもんね!」(一部分のミラーリング)
子「うん、でも僕才能ないみたいだから」
親「そんなことないとパパは思うよ。じゃあさ、香川選手はサッカー始めたばかりの頃から上手だったのかな?」(結論を出すための質問)
子「そんなことないと思う」
親「じゃあどうやって上手くなったのかな?」(結論を出すための質問)
子「たくさん練習したと思う」
親「そうだよね、お父さんもそう思うよ」(ミラーリング)
子「・・・・・」
親「・・・・・」(待つ)
親「まさるくんはどうしたい?」(結論を出すための質問)
子「上手になるために、もうちょっと頑張ってみる」
親「そっか!いいね!お父さん応援するよ!」(後押し)
子「うん!」
親「話してくれてありがとうね!」(感謝)
今度はお子さん自身では結論を見つけられなかったので、親が質問で助け舟を出して結論を出すことができました。
今は結論を出すまで話しましたが、お子さんが“香川選手もたくさん練習していた”“最初から上手じゃなかった”ということまで考えられたら、この場で結論まで出させる必要はなかったかもしれませんね。
アクティブリスニングを通じてプラスな思考まで自分で導き出せたら「もうちょっと考えてごらん」と言って時間をおいて、後は1人で考えさせてもOKです。
このケースでも、アクティブリスニングを使わずに「自分で始めると言ったことをすぐに辞めるのは許さないよ!」とか「上手くなるには時間がかかって当たり前だよ!諦めないで頑張ろうよ!」などと言うと、もしかしたらその場では「続ける」というかもしれませんが「パパはわかってくれない」と感じたり、プラスな動機付けができないままになってしまうかもしれません。
ケース③ 小学校高学年のお子さんが帰ってきて明らかにイラついている様子の時の会話
子「今日ご飯いらない」
親「そう、ご飯食べたくないのね」(ミラーリング)
子「ストレスが半端なくて食べる気になんない」
親「何か嫌なことがあったの?」(質問)
子「レギュラーから落とされたんだよ」
親「そうだったんだ。レギュラーに入れなかったんだね」(ミラーリング)
子「監督にもめっちゃ怒られて最悪だった」
親「そっか、それは悔しかったね」(気持ちのミラーリング)
子「あの監督全然練習とか見てないのに、すぐ決めつけて怒るんだ」
親「そっか、じゃあ今回のレギュラーもちゃんと評価してくれてないって感じてるのかな?」(質問)
子「そう!見てないのにレギュラーを決めるなんておかしいよ」
親「じゃあ監督は何を考えてレギュラーを決めてるんだろうね?」(質問)
子「知らないよ。コーチは別にいるから話してるのかもしれないけど」
親「なるほど、その可能性はあるかもしれないね」
子「レギュラー外れるのはやっぱり悔しい!」
親「そうだよね。悔しいよね」(感情のミラーリング)
子「・・・・・」
親「・・・・・」(待つ)
親「〇〇くんに何かできることはあるかな?」(結論を出すための質問)
子「・・・・・わかんない」
親「例えば、監督のところに行ってレギュラーを選んだ基準を聞くとか、コーチに話を聞いてもいいかもしれないね。後は練習でさらにアピールしていくっていうのもありかもしれないけど、〇〇くんはどれがベストだと思う?」(提案)
子「監督には話しづらいからコーチに話してみる」
親「そっか!話を聞くと何か見えてくるかもしれないね!」(後押し)
子「そうかも」
親「どうだったかまた教えてね!応援してるよ!話してくれてありがとう」(後押し+感謝)
3つ目のケースも結構深刻な状況ではありましたが、まずは質問とミラーリングで子どもにしっかりと話してもらい、最後は自分では結論を考えることができなかったので親から選択肢を提案して、それを子どもが選んで次の行動を決めることができました。
このケースで一点注意点があるとすれば、ミラーリングをするときに子どもの『ネガティブな言葉に賛同しないこと』です。
例えば今回のケースでは「監督にもめっちゃ怒られて最悪だった」と言った子どもに対して、「そっか、それは悔しかったね」と気持ちにのみ共感をしています。
それを「一方的に怒るなんて最悪だね!」というように子どもの発言自体に賛同してしまうと、子どもは「やっぱり僕は悪くないんだ!悪いのは監督だ!」とさらに考えるようになります。
もしかしたら、お子さんにも何か悪いことがあるのかもしれませんし、何かの勘違いかもしれません。
ですから、ミラーリングをするときには『ネガティブな発言には賛同せずに、気持ちにだけ共感する』と覚えておいてください。「それは悔しかったね」「それは悲しかったね」というように気持ちの部分にだけ共感することで、「あなたの気持ちはわかるわ」というメッセージは伝わりますが「怒られて最悪!」と言っている子どもの行為を肯定することにはなりません。
これは本当に大切なことなので、アクティブリスニングを実践する上ではぜひ意識してほしいと思います。
【さいごに】
今3つのケースをご覧いただき、皆さんはどう感じましたか?
正直めんどくさいな、難しいなと感じたのではないでしょうか。
子どもの悩みや問題を解決をしようと思ったら、親がパワープレーで強制するように声をかけていったり、ガンガンアドバイスをして納得させることもできます。
ですが、今目の前の問題を解決することではなく、もっと長期的な視野のためにアクティブリスニングがあります。
- お子さんがさらに色んなことを話してくれるようになる
- 信頼関係が生まれる
- 親がお子さんに何かを教えるときの効果が上がる
- 自己肯定感が高くなる
- 感情のコントロールが上手になる
- 考える力や決断力も育つ
目の前のことを解決することが目的とした発言をして、子どもを納得させればそれで終わり。そのようなコミュニケーションばかりしていては、今ご紹介したアクティブリスニングの効果は何一つ得られません。
ぜひお子様のために、長期的な視野でのコミュニケーションを取ってあげていただければと思います。
いかがでしたでしょうか?
いつもと比べてかなり長く、そして難しい内容だったのにも関わらず、最後までご覧いただきありがとうございます。
冒頭にも申し上げましたが、いきなり完璧な実践を求めずに、まずは聴くときの心構えだけ意識してみるとか、聴くときの姿勢だけ気を付けてみるというように、できることから実践してみてください。
皆さんの子育てを応援しています!