子どもを自立させる心理学的方法:子どもは授かり物ではなく預かり物
子育ての目標
子育ての目標は何でしょうか。良い子にする、優秀な子にする。たしかに、立派な子にしたいと思いますが、何であれ、子どもが独り立ちできることが子育ての目標でしょう。親は子をいつまでも面倒みるわけにはいきません。親がいなくなった後も、子どもはしっかり生きていってもらわなくてはなりません。
子どもは天からの授かり物ではなく、天からの「預かり物」。しっかり育てて、天(社会)にお返ししなくてはなりません。
俳優の堺雅人さんも、そうおっしゃっていますね。
子どもは何かができるようになると、それをしたくなります。幼い子どもも、自分の足で歩きたい、自分手でごはんが食べたいと思います。子どもには、最初から自立への思いがあるのです。
逆効果
子どもを自立させるためには、早く親から離した方が良いでしょうか。子どもの準備さえ整っているなら、その通りです。でも、離すのが早過ぎれば、逆効果です。
集団の中で上手くいかない小さな子どもを、無理やり集団に押し込むと、ますます集団(社会)を怖がり、親にしがみつき、自立心が育ちません。
もちろん、甘やかしてばかりでもいけませんが、大きな集団に入れないなら、2人3人のリラックスできる集団から入るのが良いでしょう。
子どもが自立するためには
赤ん坊は、お母さんが見えなくなると泣きます。でも少し大きくなると、お母さんがドアの向こうにいて見えなくても、ちゃんそこにいるんだと理解して泣かなくなります。
それでも、お母さんと離れる時には、泣いてしまいますね。さらに大きくなって泣かなくなるのは、お母さんと今は離れても、必ずまたお母さんは戻って来てくれると信じることができるためです。
子どもが親から自立するためには、親に突き放されるのではなく、親にしっかり愛されている実感が必要です。
小さな子どもは、親から離れて遊ぶ時も、いつも親の存在を確認しながら遊んでいます。その思いは、大きくなった子どもも同じです。いつも見守ってくれて、何かがあれば戻ることができる親という「安全基地」があって、子どもたちは自由に羽ばたけます。
子どものために親ができること
親が子どもにできることは、あまり多くはありません。たっぷり愛すること。そして、豊富な体験をさせることです。怖がって震えている子どもを、無理やり集団に入れるのは逆効果です。でもだからといって、いつも子どもを守りすぎても当然自立にはつながりません。
子どもたちの成長に合わせた豊富な経験が必要です。子どもが初めてジャングルジムに登る。初めて自転車に乗る。子どもたちは、本来親から強制されなくても、自立とチャレンジ精神にあふれています。
無理強いさせすぎたり、逆に守りすぎてチャレンジさせないと、不安と恐怖が強くなり、経験不足になり、年齢相応の自立ができにくくなります。
20歳になって突然自立しろと言っても、できるものではありません。3歳には3歳なりの自立があり、10歳には10歳の、15歳には15歳なりの自立があります。それぞれの舞台は、公園だったり、学校だったり、旅先だったりするでしょう。「初めてのおつかい」があり、体育祭や文化祭があり、一人旅やアルバイトがあるでしょう。
子どもは、ドキドキのチャレンジですが、親もドキドキです。でも、ハラハラしながら子どものジャングルジムを見守ったように、今度は18歳のチャレンジを見守ることになります。
子どもは傷つけても良い
子どもを傷つけてはいけないといいます。その通りです。でもそれは、少しも傷つけてはいけないという意味ではありません。自転車だって、ブランコだって、ケガはあるでしょう。大ケガは困りますが、小さなケガを怖がりすぎると、かえって太ケガしやすい子どもが育ってしまいます。
心も体も、子どもは傷つきながら育っていき、自立への思いと強さを身につけるのです。失敗や挫折さえ、愛されている実感があれば、次へのチャレンジへのエネルギーになるでしょう。
離乳と心理的離乳(自立)
今日で母乳を与えるのは最後という日。お母さんは、ずいぶん寂しい思いをするようです。そして子どもが思春期青年期になり、心理的に離乳する時(自立する時)、また悲しい思いを体験します。お父さんの中にも、子どもが自宅から離れる時など、涙が出る人もいますね。
でも、抱きしめるのが親の役割なら、手放すのも親の役割。ちょっと寂しいけれど、入学式も卒業式も、七五三も成人式も、嬉しいものです。
私たちもそうだったように、子どもたちは、両親から離れ、自立していくのです。