「韓国は天国でも別世界でもなかった」 脱北者10人のうち1人は自殺!
韓国では2年前に失踪していた北朝鮮のチョ・ソンギル駐イタリア大使代理(当時)夫妻が昨年7月に韓国に亡命していた事実が明るみに出て大騒ぎとなっている。
韓国への入国が知れると、北朝鮮にいる家族、親族に危害が及ぶ恐れがあるとして、本人も韓国政府も入国事実をこれまで伏せていた。それが1年3か月目にして公になってしまったのは、イタリアから北朝鮮に送還された未成年の娘の安否を憂慮した夫人が北朝鮮に戻りたい一心で、韓国のTV局などを訪ね、北朝鮮への帰国協力を要請したことによる。
韓国への脱北者は累計で3万3千人に及ぶが、その中には国会議員や大学教授になった人もいれば、事業を起こして成功した人もかなりいる。人一倍努力すれば報われるのが韓国社会だが、韓国に亡命したものの北朝鮮に戻った脱北者もいる。北朝鮮にUターン亡命した脱北者は今年7月に古都・開城に帰郷し、コロナ騒動を起こした韓国人男性を含め過去10年間で29人に達する。全体のパーセンテージとしては少ないが、それでも年に3人近くが北朝鮮に帰郷している。
それぞれ理由は異なるが、生活苦や政治的迫害など様々な理由で北朝鮮から逃れてきた脱北者にとって韓国は決して「別世界」でも「楽園」でもないようだ。
韓国では現在、政府及び関連機関への国会の国政監査が行われているが、統一部への国政監査では与党議員が事前に脱北者に関する資料提供を求めていたが、統一部から提出された資料「北韓(北朝鮮)離脱住民自殺現況」によると、脱北者の10人のうち1人が自殺していたことがわかった。
直近の3年間だけをみると、2017年は8.7%と10%を割っていたが、2018年は14.9%に急増。昨年(2019年)は10.1%と減少したが、それでも10%と高い水準にある。というのも、韓国国民の自殺率4.5%の2倍以上あるからだ。
昨年死亡した脱北者数は79人と推定されているが。死因は病死42人(53.2%)、老衰死14人(17.7%)、原因不明10人(12.7%)、自殺8人(10.1%)、事故死5人(6.3%)となっている。
脱北者支援団体「南北ハナ財団」が今年2月に発表した「2019年北朝鮮離脱住民社会統合調査」によると、自殺の衝動に駆られたことのある脱北者にその理由を聞いたところ、「身体・精神的疾患及び障害」が31.8%と最も多く、続いて「生活苦」(23.5%)、「家庭不和」(16.7%)、「孤独感」(14.5%)、「異性問題」(3.1%)の順となっていた。
脱北者は金日成政権下では1990年9人、93年8人と17人程度だったが、金日成主席が死亡し、金正日政権となった1994年には一気に二桁の52人に膨れ上がり、1999年には三桁の148人に達した。
2000年から金正日総書記が亡くなった2011年までは三桁は2000年(312人)と2001年(583人)の2年だけで、2002年以降はいずれも4桁、それも2006年からはすべて2千人台。2009年は過去最多の2927人に達していた。
金正恩政権(2012年~)となってから脱北者は減少したものの8年間で延べ1万338人。内訳は2012年=1508人、13年=1514人、14年=1397人、15年=1276人、16年=1414人、17年=1045人、18年=1137人、19年=1047人と、1千人台で推移している。