症状、予防、経過と治療… 新型コロナウイルス感染症とは? 現時点で分かっていること(9月13日時点)
新型コロナウイルス感染症について様々なことが分かってきました。
現時点で分かっていることについてまとめています(記事の内容は2020年9月13日時点での情報です)。
コロナウイルスとは?
これまでにヒトに感染するコロナウイルスは4種類知られており、かぜの原因の10〜15%を占める原因ウイルスとして知られていました。
またイヌやネコ、ブタなど動物に感染するコロナウイルスも存在します。
2002年中国広東省に端を発したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、コウモリ(あるいはハクビシン)のコロナウイルスがヒトに感染し、ヒト-ヒト感染を起こすことで8000人を超える感染者を出しました。
また2012年には中東でMERS(中東呼吸器症候群)が報告され、ヒトコブラクダからヒトに感染する感染症であることが分かりました。
そして2019年12月末から中国の湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎は、新型のコロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因であることが判明しました。
新型コロナウイルスの宿主動物は2020年9月時点ではまだ分かっていません。しかし、新型コロナウイルスはコウモリの持つコロナウイルスに遺伝子学的に近縁であることが分かっています。コウモリが新型コロナウイルスの元々の宿主である可能性は高いと考えられますが、コウモリから直接ヒトに感染したのか、あるいは他の中間宿主が存在し、その中間宿主からの感染が起こったのかは不明です。
新型コロナウイルスは動物から人に感染し、さらに人から人に感染しうることが分かっています。
新型コロナウイルスの世界での広がりは?
2020年9月13日時点で、世界中で2840万人の新型コロナウイルス感染症患者が報告されています。
中国の湖北省武漢市から流行が始まりましたが、今では世界中で流行が広がっています。
2020年1月から2月にかけての中国における第1波の流行を経て、現在はヨーロッパ、アメリカ、南米を中心とした第2波の流行が起こっており、第2波はまだまだ症例数の減少の気配がみられない状況です。
新型コロナウイルスの日本での広がりは?
日本国内では、2020年1月15日に国内最初の症例が報告されて以降、9月13日現在で70,042例の感染者が報告されています。
都道府県ごとの感染者数では、東京都の22,198人が最多であり、大阪9,195人、神奈川県4,972人、愛知県4,769人、福岡県4,494人、埼玉県3,870人、千葉県2,811人、兵庫県2,843人、沖縄県2,088人と関東および都市部を中心に流行がみられます。
新型コロナウイルス感染症の症状は?
潜伏期間とは感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間を指します。
新型コロナの潜伏期間には1〜14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4〜5日で発症します。
新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。
風邪は、微熱を含む発熱、鼻水、鼻詰まり、ノドの痛み、咳などの症状がみられることが多く、またインフルエンザも風邪と似ていますが、風邪に比べると高熱が出ることが多く、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うことがあります。
風邪はインフルエンザに比べるとゆっくりと発症し、微熱、鼻水、ノドの痛み、咳などが数日続き、インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、ノドの痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが3〜5日続きます。
しかし、風邪やインフルエンザが新型コロナのように1週間以上続くことは比較的稀です(ただし咳や痰の症状だけが2週間程度残ることはよくあります)。
新型コロナと風邪、インフルエンザ、アレルギー性鼻炎や結膜炎との症状とを比べると、以下の図のようになります。
感染してから約4日(最大14日)後に、微熱を含む発熱、咳、ノドの痛みなどの症状が出現します。
その他にも頭痛、だるさ、関節痛・筋肉痛などの症状がみられることがあります。
このように、新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザによく似ていますが、症状が続く期間がそれらと比べて長いという特徴があります。
特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かってきました。
つまり、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に悪化して入院に至るというわけです。
もう一つの特徴として、嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきました。
イタリアからの報告によると新型コロナ患者59人のうち、20人(33.9%)で嗅覚障害または味覚障害がみられたとのことです。
特に若年者、女性ではこれらの症状がみられる頻度が高いようです。
ただの風邪や副鼻腔炎、花粉症が原因で嗅覚障害・味覚障害が起きることもあるので「嗅覚障害・味覚障害=新型コロナ」ではありませんが、だらだらと続く風邪症状に加えてこれらの症状があれば新型コロナの可能性は高くなるでしょう。
中国の4万人の感染者の解析によれば、患者の8割は重症化に至らず治癒するようです。
数日~1週間以降に2割弱の患者では、肺炎の症状が増強し入院に至ることがあります。
約5%の症例で集中治療が必要になりICUに入室し、2-3%の事例で致命的になりうるとされています。
現在日本国内では若年者が多く診断されるようになっているため、軽症者の比率がさらに増えていると考えられます。
日本国内の新型コロナ入院患者のレジストリ COVIREGI-JPの中間報告によると、
・入院までに7日かかる(中央値)
・入院期間は15日間(中央値)
・7.5%が死亡
と報告されています。
新型コロナには一定の割合で感染しても無症状の人がいます。
どれくらいの人が感染しても無症状のままなのかまだ十分には分かっていませんが、これまでの報告からはおよそ3〜4割の人が感染しても無症状のままではないかと推定されています。
例えばダイアモンド・プリンセス号の乗客712人のうち58%は診断時に無症状であり、その後も約8割の人が最後まで無症状でした。
つまり、診断された時点では無症状であっても、その後症状が出現することがありますので注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症のその他の症状
他にも、新型コロナでは稀に
・結膜充血
・嘔気・下痢
・血痰
などの症状がみられることがあります。
この他にも、新型コロナ患者では凝固系の異常(血液が固まりやすくなる病態)や血管内皮障害が起こることが分かっており、これにより深部静脈血栓症や脳梗塞などが起こることがあります。
また新型コロナウイルスは心血管系にも影響を及ぼし、急性冠症候群(ACS)、心筋炎、不整脈(心房細動など)を引き起こすことがあります。
小児では川崎病(発熱、皮疹、眼球結膜充血、いちご舌など)のような症状がみられる事例が海外で報告されています。日本国内でも新型コロナと診断され退院した3週間後に川崎病と診断された事例が報告されています。
皮膚症状についても手足の指に赤紫色の結節が現れることがあるとされますが、現時点では新型コロナとの関連は明確ではありません。
新型コロナウイルス感染症の重症度や致死率は?
世界全体の致死率は4月中旬にピーク(約7.3%)を迎えた後、3.3%まで低下してきています。
日本も致死率が5%を超えている時期もありましたが、現在は2%を切るところまで低下しています。
また国別に見ると、シンガポールでは0.1%未満と極端に低い致死率を維持していますが、イタリアやスペインでは10%を超えています。
この致死率の違いは、
・感染者のうち高齢者の占める割合の違い
・軽症者や無症候性感染者の占める割合の違い
・イタリアやスペインでは患者数の爆発的増加によって十分な医療が提供できていない
などによるものと考えられます。
現在、世界的に致死率は低下傾向にあり、この原因として検査体制が充実しこれまで診断されていなかった軽症例まで診断されるようになってきたこと、治療体制が確立しつつあり効果が出てきていること、などが考えられます。
新型コロナウイルス感染症にかかると重症化しやすい人は?
これまでに報告されている死亡者は持病を持つ人や高齢者に多いことが分かっています。
また、糖尿病、慢性呼吸器疾患、心血管疾患、高血圧、がんなどの持病を持つ人では、持病のない人よりも致死率が高いと報告されています。
COVIREGI-JP のデータでは、うっ血性心不全、末梢動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、軽度糖尿病は登録された入院患者全体に占める割合と比べて、中等症・重症の中で占める割合の方が多いことから、重症化のリスク因子の可能性が高いと考えられます。
また基礎疾患も1つ持っているだけの方よりも、2つ、3つ持っている方の方が入院リスクや死亡リスクが高くなるとされています。
例えば、肥満があり、かつ高血圧がある(私のことです)場合は入院リスクが4.5倍になります。
新型コロナの後遺症にはどんな症状がある?
新型コロナから回復した後も何らかの"後遺症"の症状が続く方がいることが分かっており、現在厚生労働省が調査を行っています。
海外からの報告では、特に倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛などの症状が続いている方が多いようです。
その他、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。32%の患者で1~2つの症状があり、55%の患者で3つ以上の症状がみられたとのことです。
4割の人が生活の質が低下していると答えており、新型コロナから回復した後も苦しんでいる方が多いことが分かります。
また、フランスからは記憶力低下、睡眠障害、集中力低下、脱毛といった慢性期の症状の報告も出ています。
今のところこれらの後遺症に対する治療法はなく、新型コロナに罹らないことが最大の予防法です。
新型コロナウイルスの診断は?
画像検査
新型コロナウイルス感染症患者は高い頻度で肺炎を起こしています。
そのため胸部レントゲンを撮影して肺炎の有無を確認しますが、肺炎のある患者でも胸部レントゲンでは見逃すことがあります。
肺炎の有無を正確に確認するためにはCT検査を行います。新型コロナウイルス感染症では左右の肺の外側に影が出るのが特徴的とされます。
PCR検査・抗原検査・抗体検査
新型コロナウイルス感染症の確定診断にはPCR検査または抗原検査が用いられています。
PCR検査とは、ウイルスの遺伝子を検出する検査です。
新型コロナウイルス感染症の患者ではノドや痰の中に新型コロナウイルスが存在するため、鼻咽頭を拭ったり痰を採取したりして、その検体の中のウイルスの有無を検査します。
ウイルスの遺伝子が少数であっても検出できるため、一般的に感染症の検査の中では検出力の高い検査とされます。
しかし、新型コロナウイルス感染症の患者でも鼻咽頭を拭った検体での陽性率は約6割とされています。つまり10回検査をしても4回は陰性と出てしまいます(偽陰性)。
また、全く症状がない人や、確定患者との接触歴や海外渡航歴のない人など、元々新型コロナウイルス感染症が疑わしくない人にPCR検査をしても偽陽性(本当は新型コロナウイルス感染症ではないのに陽性と出てしまうこと)が多くなります。
PCR検査は絶対的なものではなく、検査の使い方をよく吟味し、結果を正しく解釈できる必要があります。
PCR検査以外に抗原検査も用いられるようになってきました。
抗原とはウイルスの一部であるタンパク質であり、抗原検査はこれを検出することで診断します。
抗原検査は30分という短時間で検査結果を得られるというメリットがある一方、一定のウイルス量がないと検出できないため見逃しが多くなる可能性があります。
また抗原検査はPCR検査と比較して偽陽性(感染していないのに陽性と出てしまう)の事例が多く報告されています。
抗体とは、生体の免疫反応によって体内で作られるものであり、微生物などの異物に攻撃する武器の一つです。
新型コロナウイルスでは発症から概ね2週間くらいで8割の人が、概ね3週間くらいでほぼ全ての人がIgMまたはIgGが陽性になります。
抗体検査は個人個人の診断というよりも、感染症の全体像を把握し、公衆衛生上の対策に役立てることができます。
ただし、特に無症候性感染者や軽症者では抗体が長期間維持されないという報告が出ており、過去に感染した人も抗体検査が陰性と出てしまうこともあります。
新型コロナウイルスの治療は?
新型コロナウイルス感染症に対して様々な治療法が検討されています。
これらは本来、他の疾患に対して使用されていた薬剤ですが、新型コロナウイルス感染症にも有効な可能性があることから臨床研究として投与されています。
新型コロナの病態に対する理解も進んでおり、発症初期のウイルス増殖期には抗ウイルス薬、そして発症から7〜10日以降の過剰な炎症反応が起こる時期には抗炎症薬が有効ではないかと考えられるようになってきました。
そして、抗ウイルス薬としてはレムデシビル、抗炎症薬としてはデキサメタゾンがランダム化比較試験という臨床研究で効果が示され、臨床現場でも中等症〜重症例に使用されるようになってきました。
新型コロナウイルス感染症の予防は?
新型コロナはインフルエンザなどと違い、発症する前の状態から人にウイルスをうつすことがあります。
そのため、症状がない人も含めて屋内など3密の環境ではマスクを着用することが推奨されています。
新型コロナの人が周囲の人にうつしやすい時期は、発症の3日前から発症後5日くらいであるとされます。この時期を過ぎると人にうつすことは稀になります。
新型コロナウイルス感染症は、「密閉・密集・密接」の3要素を持つ空間で広がりやすいことも分かっています。
このような「3密空間」にいる感染者は、いない感染者よりも18.7倍も他の人へ感染させやすいとのことです。
老若男女、全ての人が「3密空間」を避けることが新型コロナ対策では重要です。
また手など触ったところからウイルスが広がり感染する可能性もあるため、こまめな手洗いを行うようにしましょう。