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適者生存をかけて変わるハーレー 2019年からEVやアドベンチャーも投入

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
ハーレーダビッドソンが計画中の「FUTURE CUSTOM MODEL」

アメリカ製モーターサイクルの雄、ハーレーダビッドソンが将来に向けて画期的なプランを打ち出した。“More Roads to Harley-Davidson”と題した中期計画の中で、経営効率の向上やディーラー網の整備などに加え、魅力的な新製品導入などを掲げている。

これらにより、世界売上高を2017年比で10億ドル伸ばすことを目指すという。

圧倒的なブランドイメージ故に…

ハーレーといえば、1,500ccを超える大排気量Vツインエンジンを搭載したロングツーリング向けのビッグクルーザーというイメージが世界的に定着している。ピカピカのメッキパーツに威風堂々のいわゆる“アメリカン”タイプの代名詞でもあるロー&ロングボディ、贅を尽くした装備の数々など、バイクに乗らない人でも知っている、コカ・コーラと並んで世界で最も有名なブランド。

まさに富めるアメリカの象徴的な存在だが、実はそれがここにきて足かせになっているのだ。

変わるユーザー層と変えたいハーレー

ハーレーの既存ユーザーは裕福な中高年層がメインである。本場アメリカでも、誰もが豊かさを謳歌できた最後の世代とも言えるベビーブーマー世代がそろそろ老境を迎え、少しずつではあるが確実にバイクから遠ざかっている。つまり、ハーレーにとっての主要マーケットがジリ貧になりつつあるのだ。

これは日本を含めて世界中で同じ傾向にあるという。事実、日本でも大型2輪市場で盤石の強さを誇ってきたハーレーの販売にも陰りが見え始めている。ハーレーとしてはこの流れを変えたいのだ。

ちなみに昨年デビューした新型「ソフテイル」シリーズも、より若い新たなユーザー層の獲得を目指した意欲作で、ハーレーの歴史上の転換点ともいえるほどの大改造を実施。筆者もスペインで開催されたワールドローンチに参加してきたが、従来モデルに比べて格段にスポーティな走りや先進的な装備、モダンなスタイリングに感銘を受けた記憶がある。

実はその場でも、今後10年間に100機種のニューモデルを投入する計画がアナウンスされ、“変わるハーレー”を印象付けていた。

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▲新型ソフテイルシリーズ「FATBOB 114」(筆者試乗)

小排気量クラスとEVを本格化

とりわけ注目したいのは新型モデルの動向だ。今回の発表では、ハーレーでは既存路線は維持しつつも、日本を含むアジア市場へ向けての動きを加速することを宣言した。次世代ライダー育成を見据えて、より手頃な250ccから500ccの小排気量クラスのモーターサイクルを戦略的にアジアで展開。まずは趣味性の高い大型スポーツバイク市場が形成されつつあるインドを手始めに生産・販売を進めていく。

また、2014年にプロトタイプが登場して世界を驚かせたハーレー初の電動バイク「LiveWire」を2019年より市場導入することを正式に発表。2022年までに電動モデルラインを拡充していく計画で、広報リリース画像を見るとダートトラッカー風のネオクラシックタイプや、より軽快でコンパクトな都市型コミュータータイプなど幅広いバリエーションが控えているようだ。

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▲LiveWire ※プロトタイプ

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▲LiveWireは2022年までにモデル拡充を予定(画像はイメージ)

ハーレー初のアドベンチャーを投入

そして個人的に最も注目しているのが、2020年に登場予定のハーレー初のアドベンチャーツアラー「Harley-Davidson Pan America 1250」と、975ccの新型ストリートファイターモデルなど。さらに2021年には新たな1250ccカスタムモデルの導入も計画中とのことで期待が高まる。

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▲H-D Pan America (PLANNED FOR 2020) ※プロトタイプ

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▲FUTURE STREETFIGHTER MODEL (PLANNED FOR 2020) ※プロトタイプ

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▲FUTURE CUSTOM MODEL (PLANNED FOR 2021) ※プロトタイプ

詳細は不明だが、画像を見ると新設計の水冷Vツインを搭載しているようだ。これらのブランニューモデルは、ハーレーにおける新たな中排気量クラスの中核を担うモデルになるはずだ。

今、世界的にアドベンチャーモデルがブームになっていて、各メーカーはこぞって当セグメントに新型モデルを投入。また、レーシングマシン由来の高性能フルカウルスポーツモデルの衰退に伴い、より扱いやすいミドルクラスのネイキッドやストリートファイターと呼ばれる軽量で走りの性能を高めたスポーツネイキッドへ熱い視線が注がれている。ハーレーとしてもその潮流に乗っかりたいのは当然のことだろう。

この他にも世界規模での都市型アパレル専門店の展開やeコマース・プロバイダーとの協業も計画中とのことだ。グローバル化による価値観やライフスタイルの多様化は留まることを知らない。ハーレー自らが「革命」と呼ぶビッグチェンジによって、トータル的なブランド再構築による競争力の強化を目指す構えだ。

100年以上の伝統に支えられたモーターサイクル界の王様がいよいよ重い腰を上げた。変わるハーレーに注目したい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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