4割の米成人は「物質転送技術が今後半世紀中に完成する」と考えている
移植用臓器培養は8割、物質転送技術は4割が「半世紀で実現可能」
科学技術の進歩は人々の夢や想像を体現化させる。ほんの一昔前にはおとぎ話の中のみのものだった仕組みも、今や現実の道具として日常生活に浸透しているものも少なくない。それでは今現在夢の技術として語られている事柄は、どの程度現実味のあるものとしてとらえられているのか。アメリカの大手調査機関Pew Research Centerが2014年4月に発表した調査レポート「U.S. Views of Technology and the Future」によれば、例えば同国においては移植用の臓器培養が今後半世紀のうちに実用化(試験レベルでは無く一般技術として使えるという意味)すると考えている人は8割に達していた。
5つの選択肢の中では、一番実現性が高いとの認識にあるのは「移植用の臓器培養」で81%。日本でもいくつかの関連細胞の技術開発が成され、その実験成果が報じられていることからも分かる通り、今選択肢の中では一番体現化できそうなもの。この回答率の高さも納得がいく(ただし技術的に開発がなされても、倫理的に使用が認められるか否かはまた別の問題)。
次いで多いのは「人間同様のコンピューターによる創作活動」。音楽や絵画、漫画など、芸術方面の創造をコンピューターが行うというもの。人間同様のAIを持つコンピューター(などの思考形態を有する人工創生物)はSFにもよく登場する話ではあり、同時に昔から多くの人が目指している目標ではある。当然、これを実現化させるために各種AI関連の技術も開発が進められているものの、先はまだ長い。
物質転送技術、宇宙空間での植民地、そして天候の自由操作など、いずれもSFや漫画などでは良く登場する、言い換えれば「未来ならば実現可能かもしれないけれども、現状では不可能」との認識で一致している技術。しかし今後半世紀のうちに開発が可能と考えている人はそれなりに存在している。特に物質転送技術の可能性について、4割近くが肯定的なのは、ある意味驚かされる。
もちろんこれらの値は一般の人による推測で、各分野の専門家による科学的見地に基づいた実現可能性を示したものでは無いことを、念の為に記しておく。
6割は「科学技術の進歩は生活にプラス」
これらの科学技術の進歩に伴い、人々の生活は良くなるのか、それとも悪化していくのか。一般論として、二択で聞いた結果が次のグラフ。全体では約6割がポジティブ、3割がネガティブ、そして回答留保などその他の意見が1割という結果になった。
男女別では男性の方がやや科学技術の進歩には好意的。そして世代別では変化が無く、学歴別・年収別では高学歴・高年収の方が好意的。科学への姿勢がそのまま表れた結果といえる。科学における可能性が実現化することで、新しい、より改善した社会が望める、あるいは逆にそれを果たすためにこそ科学技術の進歩への歩みは進められる。その科学の実情・本質の周知度、理解度が、そのまま肯定的な意見の多さにつながっているのだろう。
臓器培養やコンピューターの創作活動はともかく、物質転送技術や天候の自由操作などは、単純な時間経過で解決する類のようなものでは無いように思える。しかし科学技術の歩みは得てして夢を持ち、その夢を現実のものとしようと努力を重ねるところから始まる。
各設問で「YES、半世紀のうちに実現化できるはず」と答えた人の誰かがその返答を正解と成すため、開発の先頭に立ち、技術進歩の先駆者として活躍することになるかもしれない。荒唐無稽な妄想で他人に迷惑をかけるものでは無いのなら、夢は大いに持ち続けるべきだといえよう。
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