狂言界のホープ・野村太一郎が語る「今こそ響く」狂言の可能性
故五世野村万之丞(八世野村万蔵)さんを父に持ち、狂言界のホープとして期待される野村太一郎さん(30)。1月30日には東京・観世能楽堂で開催される「狂宴御芸(きょうえんおんげい)~狂言お笑い共宴~」に出演し、桂文珍さん、「中川家」「ミルクボーイ」「ミキ」ら吉本興業の芸人さんともコラボを果たします。新型コロナ禍で公演がストップするなど伝統芸能にも大きな影響が出ていますが「狂言は人間賛歌の芸。逞しく生きる人間が描かれているので、今の世の中でこそ、より響くと思います」と狂言の可能性を力強く語りました。
蒲公英の紋
狂言は“人間賛歌の芸”とも言われまして、逞しく生きる人間の姿が描かれております。なので、それを我々狂言師が演じることによって生きる活力をお客さまに感じ取っていただければと。今の世の中でこそ、より響くのではないかと思っています。
狂言の衣装などに入っている共通の“紋”が蒲公英(タンポポ)であるように、踏まれても、踏まれても折れない。そんな思いが貫かれているものでもありますし、そういった部分も今の時代には実は合致しているのかなと考えております。
新型コロナ禍で、去年は多くの舞台がなくなってしまった。唐突に時間ができたことで、自分個人、そして狂言を見つめ直す期間になったとは思います。
父が生前言っていたのは「自分は海外に行って一旦狂言から離れることで新たなものを見出すことができた」ということでした。
留学のように物理的に離れるのも意味があるのでしょうし、いつもとは勝手が違う舞台に立つのも、意味があるのかなと。それでいうと、今回の催しのように、吉本興業さんと新しいことをやることも自分の芸を一段階上げることに繋がるのではと思います。
狂言はコントより漫才に近い
そもそも、吉本さんとのご縁で申しますと、父の親友だった元NHKの佐藤幹夫さんが今は文化人として吉本興業に所属してらっしゃいまして。去年が父が亡くなって十七回忌ということもあり、何か自分にできることはないかと言ってくださいまして。
そんな中、去年6月に私が主演・演出した新作能「白雪姫」を映像作品として吉本さんに撮影していただくということで縁が生まれまして、今回もそのご縁がもとで、このような催しをさせてもらうことになりました。
「狂言は一番古いコントである」と言われることも多いんですけれども、私としてはコントより漫才に近い感覚ではあるんです。
基本的にはセリフと仕草がメイン。けいこ自体も、例えば、10回けいこをするならば、立って動きを伴ってやるのは1~2回。あとは、セリフだけのけいこをやるんです。
なので、それこそ「ミルクボーイ」さんの「M-1グランプリ」でのネタも見せていただきましたけど、ああやって毎回新しいネタを生み出して、それを練り上げて舞台で出す。その流れを見て、すごいなと思っております。
30代、40代、50代でやるべきこと
今回の催しもまさにそうですが、30代の時に新しいメディアのお仕事であるとか、個人を研鑚するような外のお仕事もさせていただけたらなと。
40代になったら、父が志半ばでできなかったことを自分ができたらなとも考えています。狂言以外の伎楽であったり、田楽であったりに取り組もうとしていて、それが完遂できないままになってしまったので、私がそこに着手できたらなと。
そして、その二つに取り組んだ上で、50代以降、また狂言にしっかりと帰着できればなというのを理想像としてはイメージしてはおります。
…えっ、最近のマイブームですか?そうですねぇ。コロナ禍もあって、アプリのゲームをやるようになりまして。今は「Identity V/第五人格」という鬼ごっこみたいなアプリにハマっています。ヒマがあればYouTubeの攻略動画を見ながらやってまして。ここから学ぶことですか?これはね、純粋に楽しいからやっております(笑)。
(撮影・中西正男)
■野村太一郎(のむら・たいちろう)
1990年、東京生まれ。 故五世野村万之丞(八世野村万蔵)を父に持つ。3歳の時に「靭猿」の子猿役で初舞台。02年にはNHK大河ドラマ「利家とまつ」に利家長男・又若丸役で出演する。04年、14歳の時に父を亡くし、現在は野村萬斎に師事している。昨年6月に主演・演出を務めた新作能「白雪姫」のDVDを1月27日にリリース。また、東京・観世能楽堂で1月30日に開催される「狂宴御芸(きょうえんおんげい)~狂言お笑い共宴~」にも出演する。他の出演者は野村裕基、高野和憲、岡聡史、内藤連、桂文珍、「中川家」、「ミルクボーイ」、「ミキ」。