北海道「局地的豪雨」で室蘭線、苫小牧―東室蘭間が一時不通に 激甚災害に備え山線貨物迂回ルートは必要だ
2023年8月30日、北海道胆振地方では、南から湿った空気が流れ込んだ影響でJR室蘭本線沿線の登別市や白老町で局地的な大雨となった。室蘭本線は苫小牧―東室蘭間で運転を見合わせ、特急北斗5号から10号が全区間で運休となるなど、特急10本を含む27本が運休または部分運休となった。31日も昼にかけて大雨が予想されており、低い土地での浸水に注意が必要だという。
ここで心配になるのは、やはり室蘭本線の被災による貨物列車のルートの寸断だ。8月7日には大雨の影響で石北本線の白滝―上川間が不通となり、およそ2週間の運休でお盆期間中の帰省ラッシュを直撃したほか、8月16日から運行予定だった北見産のタマネギを運ぶ臨時貨物列車の運行にも影響した。新聞報道によると1日1往復の貨物列車のトラック代行輸送には約20台のトレーラーが新たに必要となったという。
近年、激甚化する自然災害の中で、室蘭本線が寸断されることになれば、物流に対する影響は石北本線どころではない。苫小牧―東室蘭間には1日25往復程度の貨物列車が運行されていることから、単純計算では約20台の25倍で約500台のトレーラーが新たに必要となると予想される。
トラックドライバーの労働規制による2024年問題を控え、今後のドライバー不足問題の深刻化が予想される中で室蘭本線が寸断されることになれば、北海道内の物流は混乱し道内で生産される農産物の出荷にも影響しかねない。こうした状況の中では、物流のリダンダンシー(冗長性)確保の観点からも函館本線の小樽―長万部間を貨物列車の迂回ルートとして使えるように整備をしておくことがやはり必要不可欠だ。
道路統計年報などによると2020年度に国と地方で道路の維持・建設に投じられた事業費の総額は6.6兆円で、道路に対しては無尽蔵に予算の執行が行われている現状があるのに対して、国と地方が鉄道に投じた事業費の総額はわずか1500億円。その大半は新幹線建設費だ。
ガソリン価格も高騰を続けており、すでに日本の国内物流をトラック物流に依存し続けることは限界を迎えつつある。道路特定財源はすでに一般財源化されており、道路予算の1%を鉄道整備に回すだけでも、相当な改善が期待できる。物流崩壊を防ぐためにも思い切った政策転換が必要ではないだろうか。
(了)