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「二つ折りスマホ」、大手各社が開発している理由、その課題とは?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

中国ベンチャーが世界初の商品化

 先ごろ、中国深センに拠点を置く新興ディスプレーメーカー、ロウユー・テクノロジー(柔宇科技)が画面を2つに折り畳めるスマートフォンを発表して、話題になった。

 この端末は、画面サイズが7.8インチと、タブレット端末ほどの大きさだが、2つに畳むと文庫本ほどになる。

 折り畳んだ状態でも、前面、側面、背面のディスプレーは動作し、画像を表示し続ける。これらディスプレーには境目はない。同社は世界で初めて商品化された折り畳み式スマートフォンだと説明している。

大手5社が特許出願、2社は開発計画を明かす

 こうして本体を折り畳むことができる端末は、スマートフォン大手各社も開発しており、販売が頭打ちのスマートフォン市場を再び活気づけるための起爆剤になる可能性があると米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 同紙によると、大手スマートフォンメーカー5社はいずれも、折り畳み式端末の技術に関する特許を出願している。

 5社とは、韓国サムスン電子、米アップル、中国ファーウェイ(華為技術)、中国ビーボ(維沃移動通信)、中国オッポ(広東欧珀移動通信)だ。

 このうち、ファーウェイは、2019年に市場投入を目指していることを明かしている。また、サムスンは先ごろ、プロトタイプを公開した。同社の計画については、かねてから「Winner(勝利者)」というコードネームで開発が進められていると、米メディアが報じていた。

 サムスンは、まず、モバイルゲーム・ユーザーなど、特定の利用者層に向けて販売する。それが成功すれば、来年(2019年)後半にも本格的な販売に移行する計画だと、事情に詳しい関係者は話している。

 これまでも、他のメーカーが折り畳み式スマートフォンを発売したことはあった。だが、それらの製品は、ディスプレーが中央のフレームで分割される。

 これに対し、サムスンなどが開発中の製品は、ロウユー・テクノロジーと同じく、境目がないデザイン。利用時はタブレットのように大きな画面で操作でき、折り畳むと、手のひらや小さなポケットにすっぽり収まる。

世界スマホ市場は今年も前年割れ

 もし、大手各社がこれらの製品を発売すれば、スマートフォン市場誕生以来初めて、まったく新しいデザインの製品が広く出回ることになると、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 米調査会社IDCによると、昨年1年間のスマートフォン世界出荷台数は、前年比で0.3%減少した。年間出荷台数が前年実績を下回るのは初めてのことだった。

 そして今後もこの傾向は続き、今年の出荷台数は同0.7%減少するとIDCは見ている(図1)。こうした中、大手各社は、新奇性のある端末で低迷する市場を活気づかせたい考えだ。

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「折り畳み式には4つの課題あり」と米紙

 ただ、ウォールストリート・ジャーナルは、このデザインの製品化には少なくとも4つの課題があると指摘している。

 (1)品質、(2)部品調達、(3)コスト、(4)需要に関するもので、以下のような理由だとしている。

 (1)180度曲がるディスプレーを実現できたとしても、十分な耐久性を持ち、安定した画質を保てるものをつくるのは困難。

 また、(2)折り畳み式に必要なAMOLEDディスプレーは現在、サムスンが95%を供給しているという状況。メーカー各社が十分な部品供給源を確保できるかどうかは不透明。

 (3)多くの消費者が1000ドルを超える端末価格を受け入れるようになったが、当初発売される新デザインの製品はその2倍の価格が予想される。

 最後に同紙は、(4)果たして消費者が、こうした二つ折り端末を望んでいるのかどうか、いまだ不透明だ、と指摘している。

  • (このコラムは「JBpress」2018年11月2日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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