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声優のリモートワーク化:コロナ影響下のアメリカ「ヒロアカ」吹替版にてついに”自宅でアフレコ”を実現

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るう現在、アニメのアフレコ(=アフターレコーディング・音声収録)現場では、その収録形態上なかなか”三密”を避けられないということが心配されています。

ところがそんな状況下で、アメリカからとあるニュースが舞い込みました。

日本製アニメの配信などを行う企業「Fanimation」が、現在配信中のアニメ「僕のヒーローアカデミア」英語吹替版の第84話にて、キャスト(声優)とスタッフが自宅に居ながらの”リモートアフレコ(dubbing from home)”を実施したことを発表したのです。

下記映像の中では、どのようにリモートアフレコを行っているのかといった様子や、吹替版で麗日お茶子を演じているLuci Christian氏の自宅に作られたホームスタジオの様子などが紹介されています。

感染の被害が拡大する中、アメリカで配信される日本アニメの中にも、関係者の健康を鑑みて英語吹替版の配信を延期するサービスが出始めていた矢先のできごとでした。(外部サイト:ストリーミングサービスHIDIVEでのアニメ「あひるの空」英語吹替版配信延期のアナウンス

上記以外でも自宅での音声収録を試みるキャストが現れ始めたりと、こうした事態を受けて、アニメのアフレコ現場が急速に変化していることが見受けられます。

▼英語吹替版「鬼滅の刃」胡蝶しのぶ等を演じるErika Harlacher氏が自宅でアフレコを試みた様子

 

■急速な移行を可能にしたのは

アメリカでこうした急速な移行が実現したことには”元々のアフレコ形態”が少なからず関係しているように思います。

複数人で収録を行う日本と違い、アメリカのアニメのアフレコは基本的にブースにはキャストが1人しかおらず、ディレクターを始めとするスタッフ達とやりとりをしながら行われるのが一般的だそうです。

▼英語吹替版「Fate/Apocrypha」赤のライダー等を演じるJoe Zieja氏による英語吹替版アニメのアフレコイメージ映像

そのため自宅でのリモートアフレコへの移行も、スタッフ・キャスト間のやりとりを可能にするネットワーク環境と十分な音質さえ確保できれば、比較的スムーズかつスピーディに行うことができたのでしょう。

■日本との違い

一方、日本では、アニメのアフレコはキャストが複数人集まって行うのが基本です。

そこには複数人で行うからこそ、役者同士のかけあいの中で生まれるお芝居を大事にしているかたもいらっしゃるかもしれませんし、何より長年続いてきた形態を大きく移行するための環境整備も、そう簡単にはできないと思います。

しかし現在、感染防止のため少人数でのアフレコや、いわゆる「抜き録り(個別で行うアフレコ)」でのアフレコを行うといった対策は取られているものの、それでもキャストやスタッフによる不特定多数との接触は避けられませんし、まさかマイク前でお芝居をするときまでマスクをし続けるわけにもいきません。

参加する声優やスタッフの方々も不安を抱えながらアフレコを行っている現在、海外ではありますがこうして”前例”ができたことは、日本のアニメのアフレコの現場にも今後何かしらの影響をもたらすのではないでしょうか。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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