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沖縄・米兵による誘拐性暴力事件 今日、那覇地裁で初公判 #専門家のまとめ

小川たまかライター
7月11日、沖縄県庁前で行われた性暴力抗議のためのフラワーデモ(筆者撮影)

 沖縄のアメリカ軍嘉手納基地に所属する兵士が、16歳未満の少女を誘い出し性的暴行をしたとして起訴された事件の初公判が7月12日、那覇地裁で行われます。

 この事件は昨年12月24日に起き、兵士は3月に起訴されていたにもかかわらず、6月25日まで外務省は沖縄県に伝えていませんでした。

 なぜ情報は伏せられたのか。

 1995年の少女暴行事件など、これまでの性犯罪事件を思い出させる事態に、怒りと悲しみの声が上がっています。

ココがポイント

▼この事件が初めて報道されたのは6月25日。起訴された25歳の男は3月11日の書類送検後、日本に身柄を引き渡されている。

16歳未満の少女を車で誘拐、自宅で性的暴行 那覇地検、在沖米兵を起訴(2024年6月25日/沖縄タイムス)

▼その後、今年1月〜5月にかけて他にも性犯罪事件2件が発生していたことが発覚。県警は報道発表していなかった。

5月にも沖縄で米兵が女性に性的暴行 不同意性交致傷の疑い 20代の海兵隊員を基地外で逮捕 県警は報道発表せず(2024年6月28日/沖縄タイムス)

▼情報が伏せられた背景について識者からは4月の日米首脳会談や6月の県議選への配慮があったのではという声があがる可能性を指摘。

米兵の性的暴行、相次ぎ明るみに 沖縄県に情報共有されなかった背景(2024年6月28日/毎日新聞)

▼1995年の3人の米兵による少女暴行事件では、8万5000人が参加する県民総決起集会が開かれた。

米兵を少女への性暴力で起訴…その後3カ月、国が沖縄県に黙っていたのはなぜ? 「県議選」終わった後に発覚(2024年6月27日/東京新聞)

▼県警は沖縄県にも沖縄防衛局にも事件を伝えず、外務省にのみ伝えていた。

沖縄米兵の性的暴行、県への連絡ルートが一切機能せず 日米の情報共有にも不備あったのに…改善しぶる政府 (2024年7月12日/東京新聞)

エキスパートの補足・見解

 米兵による性犯罪事件が起こっただけではなく、それが数カ月間伏せられていたことが問題です。

 1995年の事件後のように、県民から大きな反発があることを恐れて、情報が伏せられたのではないでしょうか。

 7月11日夜、沖縄県庁前で行われたフラワーデモでは、参加者から「被害者のプライバシーを守るためかのような理屈をつけて事件を知らせなかったと言うのは被害者を逆に利用した隠蔽です」という声がありました。

 また、事件の捜査をしながら、沖縄県には事件発生を伝えなかった県警への怒りの声もありました。

 日本のためという名目で沖縄の被害は見てみぬふりをされます。沖縄に暮らす人は何重にも傷つけられていると感じました。

7月11日夜に沖縄県庁前で行われたフラワーデモ。今回初めて参加したという人も多かった(筆者撮影)
7月11日夜に沖縄県庁前で行われたフラワーデモ。今回初めて参加したという人も多かった(筆者撮影)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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