「君、日本代表にならないか?」マイナー32競技が猛烈PR
まだ知らない競技が、将来の日本代表となり得るあなたを待っている。国内マイナー競技のPRを目的とした「マイナー競技認知度爆上祭」(公式サイト)というイベントが2月28日に東京都町田市の町田パリオ4階特設ブースで行われた。
レスリングやホッケー、水球といった五輪採用競技、カバディやクリケットなどのアジア競技大会で採用されている競技もあるが、おにごっこやドッジボール、フライングディスクを用いるアルティメットなど遊びとしてなら知っていると言われる競技もあり、お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんが日本代表となったことで知られるモルックなども含め、幅広いジャンルが一堂に会し、各競技の魅力を発信。会場には、夏季、冬季の五輪出場選手も訪れた。
発起人は、スポーツトレーナーの渡邊史郎さん(Strong Care代表)。「自分が取り組んでいたボート競技や、トレーナーとして関わっているフェンシングなど、現場で、様々な競技から感動をいただいていますけど、なかなか世間に知られていないのが現状。お祭りとして競技のPRをできたらと企画したのですが、熱意のある超マイナー競技の方たちも多く、思っていた以上にニーズがありました」と開催の経緯を説明した。当初は、フェンシングやハンドボール、水球といった競技が候補だったが、企画主旨が伝わるにつれて、よりマイナーな競技から参加表明が相次ぎ、32競技が出展するに至った。
50カ国で行われていても1年で日本代表、国内選手はわずか30人
知名度の低い競技は、仲間を求めている。誘い文句の一つが「一般人でも日本代表を狙える」である。実際、日本代表までのハードルは、メジャー競技に比べるとかなり低い。的となる球に金属球を転がして近付けるスポールブール(公式サイト)は、紀元前10世紀には原型が存在したと言われる「人類最古の球技」。50カ国以上で行われているが、日本の競技人口は30人程度しかいない。元高校球児の豊田想さんは、大学生のときにテレビ番組で知って競技を始め、1年で日本代表になった。41歳の現在も現役で、19年にはアジア・オセアニア王者になっている。
「競技を始めたばかりの頃は、それほど面白いとは思わず、草野球と並行してやっていたのですが、1年くらいすると、戦術や戦略が分かって来て楽しくなり、日本代表にもなれました。青空の下で鉄球を投げる解放感を味わってほしいですし、ストレス発散にやってみてほしいですね。現在の国内競技人口は、約30人。日本代表を目指すなら、今がチャンスです」と競技への参加を呼びかけた。
自費で渡航費を出せれば?「あした、日本代表になれる」モルック
木の棒を投げて、点数が表示された棒を倒して50点ジャストを目指すモルックは、フィンランド発祥の競技。日本代表の河野靖信さんは、2年前に知人を通じて競技を知り、学生時代にハマっていたボウリングやダーツ、ビリヤードの要素が含まれる面白さの虜になった。「競技という感覚ではなく、趣味の一環で始めました。毎年、欧州で世界選手権が開催されるのですが、自費で行ける選手が日本代表です(笑)。(お笑い芸人の)森田さんも、僕も同じ。4人1組で何チームでも出れますし、日本モルック協会を通して出場すれば、日本代表のユニフォームを着れます。何かの日本代表になる機会なんて、なかなかないですけど、協会のホームページにも『あした、日本代表になれる』と書いてあります」と手軽さをアピールした。
ももクロが世界2位? 新しいエンタメスポーツも登場
一方、まったく新しい競技も存在する。人気映画のスター・ウォーズに出てくるライトセーバーのような発光する刀を展示していたのは、電子チャンバラの「SASSEN(サッセン)」(公式サイト)。アプリとブルートゥースを使用することで手持ちのスマホや電子タブレットにデータが送信されて結果が自動判定できるため、審判を必要としない。2人の選手がほぼ同時にたたいた場合でも、どちらが速かったかを機械で判定できる。福岡県北九州市の空手道場が実家である本村隆馬さんが、護身術やチャンバラからイメージを膨らませ、電子センサー内蔵の刀で特許を取得した4年前から、競技化と普及活動を開始。20年1月からは東京の秋葉原で毎月、体験イベントを開催し、体験者数は500を数える。
昨年末には、テレビ番組で取り上げられ、人気ユニットのももいろクローバーZのメンバーが体験。全日本サッセン協会の会長を務める本村さんは「メンバー内で勝ち上がった百田夏菜子さんと対戦して私が勝ったのですが、まだ国際大会を行っていないので、そのときは、発案者の私が世界1位と自認して戦うことにしたので、敗れた百田さんが世界2位という扱いで良いのではないかと(笑)。デジタルを使った遊びで、アイドルを通じて知ってもらう。ミーハーな感じで触れてもらって構わないので、ぜひ体験してみてほしい。ゆくゆくは、近所の公園で子どもたちがサッセンをやろうと集まる風景が日常になることが目標です」とアピールした。真新しい競技では、誰に活躍のチャンスがあるか分からない。
漫画、アニメ化で話題集めるカバディも女子選手募集中
初開催となった「マイナー競技知名度爆上祭」は、日程調整の関係で参加できなかった団体も複数あり、第2回が開催される可能性もある。発起人の渡辺さんは「緊急事態宣言下で難しかったのですが、本当は、もう少し体験ブースを増やしたい」と話していた。それでも、一般来場者に対するPRだけでなく、普段接する機会のない他競技の情報に触れることも含め、大いに刺激になったようだ。
「カバディ」とつぶやきながらプレーする特徴で知られる競技であるカバディ(公式サイト)の出展ブースでPR活動を行っていた鈴木祥矢さんは、漫画で競技を知って体験会に行き、今では日本代表を狙う強化指定選手となっている。「初めて知る競技、名前だけ知っている競技の方と触れられて面白かったです。どの競技も、ルールだけ聞くのとは、ちょっと違う感想を持ったり、体験して感じたり。カバディについても漫画『灼熱カバディ』がアニメ化されるという部分で興味を持っていただけるところが多く、色々な方が話を聞いてくださって、嬉しかったです」と笑顔を見せた。インドを中心に南アジアで盛んなカバディは、アジア競技大会の採用競技。だが、特に日本の女子チームは人数不足に苦しんでおり、こちらも日本代表を狙ってアジアや世界に打って出られる可能性を秘めた競技と言える。
(参照記事:浅草寺や比叡山も? お坊さんが日本最強のスポーツ「カバディ」とは)
卒業シーズン、新たな競技やチームを探す人に、日本代表のチャンス!
どのブースの担当も、どこにでもいそうな人たちで、実は国内トップクラスの実力者。みんなが輝くような笑顔で、競技の面白さをアピールしていた。国内の知名度が低い競技でも、若くして日本代表を狙えて、働きながらでも(あるいは、ほかの競技をやりながらでも)長く楽しめて、青春をしている選手たちがいる。2月下旬から3月上旬は、卒業式のシーズン。新たな世界でスポーツの部活動やサークル、社会人クラブを探す方も多いだろう。まだ知らない競技の扉を開くと、あなたのユニフォームには日の丸がついているかもしれない。(了)
「マイナー競技認知度爆上祭」(https://minorsports.love/)出展競技
- スポーツ鬼ごっこ
- チュックボール
- レスリング
- ウォーキングサッカー
- ラピッドボール
- かくれんぼ
- ネットボール
- パデル
- ダブルダッチ
- ビーチテニス
- ビーチハンドボール
- スポールブール
- ドッジボール
- アルティメット
- クリケット
- モルック
- コーフボール
- クィディッチ
- SASSEN
- ウィッフルボール
- フレスコボール
- HADO
- 水球
- カバディ
- 車椅子ソフトボール
- ホッケー