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獲得後12日でハメルズが戦線離脱!1.1億円を無駄にしたドジャースを救うのはメジャー初昇格右腕?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
メジャー初昇格で好投を演じたアンドレ・ジャクソン投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【契約後わずか12日後にIL入りしたハメルズ投手】

 ドジャースの苦肉の策が、あっという間に徒労に帰すかたちになった。

 ドジャースは現地時間の8月16日のパイレーツ戦前に26人枠及び40人枠ロースターの入れ替えを発表し、今月4日に獲得したばかりのコール・ハメルズ投手を60日間の負傷者リスト(IL)に入れた。

 すでに公式戦終了まで2ヶ月を切っているため、今回の措置によりハメルズ投手の今シーズン中のメジャーリーグでの公式戦登板は完全に消滅。負傷者続きの先発投手陣の穴を埋めるため、即戦力として期待されたハメルズ投手のメジャー復帰の夢は、儚く潰えてしまった。

【最初の模擬試合で左腕痛を訴える】

 ドジャースと契約し即座に40人枠に入ったハメルズ投手は、まず26人枠に入らずルーキーリーグに配属されるかたちで、ドジャースに同行していた。

 そして7日に実施された模擬試合で2イニングを投げる予定だったが、1イニングを投げ終わった段階でマーク・プライアー投手コーチ、デーブ・ロバーツ監督らと何やら話し合う姿が目撃されていた。

 その後予定通り2イニング目を投げるためにマウンドに向かったものの、ウォーミングアップを終えた時点で再びコーチ陣と話し合いを行い、2イニング目を投げずにベンチに引き上げてしまった。

 どうやらこの時に左腕に痛みを感じたようで、その後も模擬試合が行われないまま、今回のIL入りとなった。

 ドジャースはハメルズ投手との契約にあたり、100万ドル(約1億1000万円)を保証しており、まったく戦力にならなかった投手のために大金を捨てる結果になってしまった。

【頼れる先発投手陣はたった2人だけ】

 すでに本欄で報告しているように、昨シーズンは1試合しか投げられず、今シーズンもずっとリハビリを続けてきたハメルズ投手といきなりメジャー契約を結ばなければならないほど、ドジャースの先発投手陣は切羽詰まった状況に追い込まれていた。

 しかもその状況はさらに悪化し、ハメルズ投手獲得後の14日に、今度は左ふくらはぎの負傷でフリオ・ウリアス投手も10日間のILに入ってしまい、遂にシーズン開幕時から先発ローテーションに残っているのは、ウォーカー・ビューラー投手ただ1人になってしまった。

 現在はトレード期限ギリギリで獲得したマックス・シャーザー投手とビューラー投手で、何とかローテーションを支えている状況だ。

【今は負傷投手の復帰を待つのみ】

 すでにトレード期限も過ぎ、他チームから実績ある先発投手を補強することはできない。ハメルズ投手獲得もそうした背景があったわけだが、即戦力として期待できるベテラン投手がそう簡単にFA市場に残っているとは思えない。

 現状としては、現在戦線離脱しているクレイトン・カーショー投手、トニー・ゴンソリン投手、ダニー・ダフィー投手らの復帰を待つしかなさそうだ。

 ただカーショー投手はようやくキャッチボールを再開したばかりで、他の2投手に関しても早くても復帰は来月になる見通しだ。

 それまで地区首位を走る好調ジャイアンツとのゲーム差を広げられないように、何とか投手陣をやりくりしながら乗り切っていかねばならない状況が続く。

【最後の望みはメジャー初昇格のルーキー右腕?】

 そんなドジャースに、一筋の光明が差したかもしれない。

 ハメルズ投手のIL入りに伴い、40人枠入りとメジャー初昇格を果たした25歳のアンドレ・ジャクソン投手が早速パイレーツ戦でデビューを飾り、2番手として4イニングを投げ、2安打無失点5奪三振の好投を演じている。

 今シーズンは開幕から2Aに配属され、7月31日に3Aに昇格したばかりのジャクソン投手だが、MLB公式サイトが毎年発表している若手有望選手ランキングの2021年版で堂々の22位にランクしている投手だ。

 ただ今シーズンのジャクソン投手は、マイナーリーグで先発していても1試合で3~5イニングしか投げておらず、彼がまだ育成過程にあるのは明らかだ。通常なら経験を積ませるため勝敗の決したシーズン終盤にメジャーで試すケースはあるが、ペナントレースを争うこの時期にメジャー初昇格させるような無理はさせることはない。

 そんな育成途中の若手投手の力を借りなければならないほど、現在のドジャースは追い込まれているということに他ならない。

 果たしてドジャースは、負傷投手が復帰してくるまでこの苦難を乗り切ることができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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