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1年間のブランクがあるコール・ハメルズに年俸1.1億+1試合2200万を保証したドジャースの切迫具合

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨シーズンは1試合しか登板できなかったコール・ハメルズ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【カーテンコールで迎えられたシャーザー投手】

 トレード期限ギリギリにナショナルズからドジャースへのトレードが決まったマックス・シャーザー投手が現地時間の8月4日、アストロズ戦でドジャースのデビュー戦を飾った。

 投球自体も7回を投げ5安打2失点10奪三振と、ファンの期待に応える圧巻の内容だった。球数109で7回を投げ切りベンチに戻るシャーザー投手を、今シーズンMLB最多の5万2724人のファンがカーテンコールで出迎えた。

 試合も7対5でドジャースが勝利。今シーズンは先発投手陣に苦しむチームの惨状を見守ってきたファンにとって、シャーザー投手の投球は本当に頼もしく映ったとこだろう。

【1年間のブランクがあるハメルズ投手と破格のメジャー契約】

 そんなシャーザー投手のデビュー戦当日に、ドジャースは更なる選手補強を断行した。

 MLB通算163勝を誇り、今シーズンはどのチームにも所属していなかった37歳のベテラン左腕コール・ハメルズ投手の獲得を発表したのだ。しかもMLB公式サイトを含めた米主要メディアによれば、破格の契約を用意して迎え入れている。

 過去の実績は申し分ないとはいえ、今シーズンはまったく実戦経験がないことを考えれば、マイナー契約で様子を見るのが妥当なところだが、ドジャースはいきなりメジャー契約を用意し、即座にハメルズ投手を40人枠に加えている。

 しかも年俸は100万ドル(約1億1000万円)が保証され、登板1試合につき20万ドル(約2200万円)のボーナスまで支払われるという内容だという。

【昨シーズンも登板はわずか1試合】

 契約内容をみれば、ドジャースがハメルズ投手を即戦力と考えて獲得しているのは明らかだ。しかしハメルズ投手が残り2ヶ月間、先発投手陣の一角を担えるのかは、かなり未知数といえる。

 昨シーズンはブレーブスに在籍していたハメルズ投手だが、9月16日のオリオールズ戦で3.1イニングを投げたのみで、左上腕三頭筋のハリと肩の疲労を理由にそのままシーズンを終えていた。

 今シーズンもここまでどのチームにも所属してこなかったのは、万全な投球ができるように調整を続けてきたからだといわれている。そして先月16日にハメルズ投手に興味を示すチーム関係者を集め、投球を披露するまでになっていた。

 そこでの投球でドジャースはハメルズ投手が即戦力でいけると判断し、今回のメジャー契約に至ったわけだ。

【今も負傷者だらけの先発投手陣】

 シャーザー投手を獲得するに至ったドジャースのチーム事情についてすでに本欄でも報告しているが、シャーザー投手1人だけではまだ穴を埋め切れていない状態だった。

 シャーザー投手とともに、ロイヤルズからトレードで獲得したダニー・ダフィー投手は左腕の不調で現在もリハビリ中で、復帰は早くても8月下旬と予想されている。

 さらに負傷者リスト入りしているクレイトン・カーショー投手とトニー・ゴンソリン投手(トミージョン手術を受け戦線離脱したダスティン・メイ投手に代わりローテーション入り)に関しては、まったく復帰の目出が立っておらず、デーブ・ロバーツ監督は「彼らがボールを持てるようになるだけでニュースになるだろう」という状況が続いていた。

 また女性への暴行容疑でMLBから謹慎処分になっているトレバー・バウアー投手も、6月28日を最後に登板から遠ざかっており、しかもチームにも帯同できていない。どこかでチームに再合流できたとしても、すぐに実戦復帰するのは不可能な状況にある。ドジャースとしても戦力として考えられなくなっている。

 とりあえずドジャースは、ハメルズ投手を直接メジャーに合流させずルーキーリーグに回しているが、ハメルズ投手の状態次第ですぐにでもメジャー昇格させることになるだろう。

 ドジャースにとって、ハメルズ投手獲得は大きな賭けであるのは間違いない。だが未知数のハメルズ投手の活躍がなければ、地区優勝9連覇とワールドシリーズ連覇が厳しくなってしまうほど、現在のドジャースは追い込まれているのだ。

 ドジャース・ファンは期待と不安を織り交ぜながら、ハメルズ投手の今シーズン初登板を見守ることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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