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大器・佐々木勇気七段(25)竜王戦2組で優勝を果たして勢いよく本戦進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月19日。東京・将棋会館において第33期竜王戦2組ランキング戦決勝▲佐々木勇気七段(25歳)-△丸山忠久九段(49歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時27分に終局。結果は123手で佐々木七段の勝ちとなりました。

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 佐々木七段は優勝賞金366万円、丸山九段は準優勝賞金94万円を獲得。両者はともに決勝トーナメント(本戦)に進出し、豊島将之竜王(30歳)への挑戦権を争います。

 本戦ではまず、佐々木七段は久保利明九段(1組3位)、丸山忠久九段は3組優勝者(杉本昌隆八段-藤井聡太七段戦の勝者)と戦います。

待たれる大器のタイトル挑戦

 準決勝で丸山九段は糸谷哲郎八段、佐々木七段は松尾歩八段に勝って、決勝に進んでいます。

 両者のこれまでの対戦成績は丸山九段1勝、佐々木七段1勝の五分です。

 振り駒の結果、先手は佐々木七段。後手番の丸山九段は得意の一手損角換わりの作戦を取りました。

 佐々木七段は棒銀に出ます。対して32手目、丸山九段の△3一金という驚きの受けの構想を見せます。

 角換わりのスペシャリストである丸山九段が見せた深遠な一手でした。

 佐々木七段は銀をさらに前線に進めていきます。その銀を取らせる間に相手の香を取りながら自身の香を成り込みました。そして持ち駒とした香を受けに使い、丸山九段からの反撃に対応します。形勢は佐々木七段がリードを奪ったようです。

 佐々木七段の玉は丸山九段の下段から攻めに追われながら、中段に逃げます。そして丸山陣を目指し、わっしょいわっしょいと前進を続けました。

 佐々木七段は入玉がほぼ確定的となったところで、満を持して丸山玉を寄せにいきます。最後は左右はさみうちの形を築いて、丸山玉を受けなしに追い込みました。

 佐々木七段はこれで2回目の竜王戦本戦進出。前回は藤井聡太四段(当時)の30連勝目を阻止する歴史的な大一番を戦いました。

 師匠の石田和雄九段は愛弟子である佐々木七段のタイトル挑戦をずっと心待ちにしています。今期竜王戦はその絶好の機会と言えそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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