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サンウルブズのフィロ・ティアティアヘッドコーチ、5連敗にも光明を強調。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真の開幕節では、ハリケーンズに17-83と大敗。(写真:アフロ)

世界トップクラスの国際リーグ、スーパーラグビーへ日本から挑むサンウルブズは、4月8日、東京・秩父宮ラグビー場でブルズとの第7節をおこなう。1週間の休息を経て、3日から都内で練習を開始。内部昇格で就任1年目のフィロ・ティアティアヘッドコーチが、共同取材に応じた(田邉淳アタックコーチとともに)。

参戦2季目となる今シーズンは、ここまで開幕5連敗中(第6節は試合のないバイウィークに充てられた)。国内2戦目となるブルズ戦に向け、田中史朗、松島幸太朗ら離脱していた日本代表経験者が合流。昨季は4月23日に挙げた初白星が期待されている。

取材は、第5節までの長期遠征(シンガポール、南アフリカで計4試合)のレビューから始まった。

以下、取材時の一問一答(編集箇所あり)。日本代表強化のために作られたサンウルブズは、

「ようこそ。ご参加していただきありがとうございます。いままでの過程では、世界で最も厳しいコンペティションであるスーパーラグビーのデビューを果たした選手たちが23名います。できるだけハードな大会でどれだけ競争できるか。そこが一番のターゲットポイントだと思っています。サンウルブズのジャージィを着て、プライドを持って戦っている。毎試合、毎試合、よくなっていると思います。

トライも効率よくとっていて、アタックはうまくいっていると思います。改善点はディフェンスですが、そこについては毎週、課題となって、日々、練習しています。

日本へ帰って来られて、嬉しく思います。シンガポールへ行き、南アフリカへ渡り、先々週はまたシンガポールに入るなど、厳しい遠征。いい経験も積めました。選手のことも知れました。時間が経つほど、チームに団結力が生まれています。選手だけでなく、マネジメントサイドの結束力も生まれています。『RISE AS ONE』という最初に掲げたスローガン通り、選手、マネジメントサイドと一緒に上がっていけていると思います」

――評価する点は。

「田邉淳アタックコーチが、敵に対してプレッシャーを与えていく方法を毎週、変更している。それを非常に嬉しく思います。プレシーズンの2週間ですべてをカバーしようとしたのは、やはり難しいところでした。毎週、よくなるために、毎週、完璧にしたいところをカバーする。それがサンウルブズの課題だと思います。毎週、改善点がある。それを毎週、レビューしていくしかない」

――経験のある選手の復帰が期待されていますが。

「若い選手は、コーチが期待する以上にパフォーマンスを発揮してくれている。選手たちも十分に理解しているが、我々はフィジカルなチームではない。それにも関わらず、このチームを強くしたいという気持ちが生まれている。何をすべきかを日々理解して、取り組んでいるのがいまの成功に繋がっていると思います。ジャパンに入っている選手、そうでない選手もいるなか、チーム内でいい競争ができていると思います」

――発足2年目のサンウルブズに対し、海外からの反応は。

「他のチームのコーチも、我々のプレーを褒めてくれます。田邉のアタックプラン、プレッシャープラン。ヘリングのディフェンスプラン…。そうやって成長に気づくコーチがいるのは、嬉しいことです」

――ここまでの全6節を通して様々なスタッツ(数値)も出ていますが、評価する点はどこですか。

「22年間の歴史があるハリケーンズの各種スタッツにどう近づくか…など、スタッツは他のチームと我々を比べる、重要な目安になると思います。相手に圧力をかけることは、徹底しているつもりです。目指すのは勝つことです。ただ、大事なのは、選手がアタック、ディフェンス、セットピースのプランを遂行することだと思っています。そうして、相手にプレッシャーをかけられる」

――プレーの起点となるセットプレーについて。スクラムは自軍ボール成功率100パーセント。ラインアウトも自軍ボール成功率を昨季の76.8パーセントから86.4パーセントに引き上げています。

「どうボールを獲得するかという最初の準備は、週の初めの48時間が勝負です。長谷川コーチは、大きな相手に対するスクラムの組み方を徹底してくれている。ラインアウトは、私がリーダーの選手と相手ボールを獲得する方法について話し合っている。まだまだ成長の余地はあるので、今後も成長していければと楽しみにしています。セットピースの成長はハッピーですが、ほかの準備も重要性は変わらない」

――序盤戦では若手を起用。日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチと連携を図っているのでしょうか。

「ジャパンサイド、ヘッドコーチのジョセフとは、選手(起用)のプランについても密に話し合っている。多くの選手に学ばせ、高い強度の試合を経験させたい。若い選手を、田中史朗、堀江翔太のような名前のある選手のレベルにまで引き上げたいと思っています。サンウルブズを通し、インターナショナルスタンダードに値する選手を育てる。すべての選手を、ジャパンに値する選手に育てるのがコーチの責任になってきます。そして、ジョセフが、どの選手がジャパンのプライドを持って戦えるかを選考します」

――インパクトを与えたプレー、選手は。

「特定の選手の名前を挙げるのはアンフェア。個々には1人ひとり、どういうインパクトを与えていたかを話していますが。グループとしての成長にはうれしく思っています」

サンウルブズは、日本代表の強化するために存在する。それもあってかティアティアは、黒星を重ねるなかでも若手選手の経験値アップを前向きに語り続ける。とはいえ、サンウルブズはひとつのプロクラブでもある。勝敗がチケット売り上げ、ひいてはチームの予算に直結することも明らかだ。国内2戦目にあたる第7節はもちろん、ひとつでも多くの白星も求められる。

――結果を出せなかったことに関し、悔やまれる点は。

「常に振り返り、反省する部分はあります。ただ、我々のやってきたことには自信を持っている。田邉アタックコーチは、特にカウンターアタックについていいプランを持っています。ベン・ヘリングディフェンスコーチはいいディフェンスプランを持っていて、長谷川スクラムコーチはは素晴らしいスクラムプランのもと、素晴らしい指導をしてくれている。コーチングチームとしては若いですが、今後の向上に、エキサイトしています」

――スーパーラグビーを運営するSANZAARは現在、チーム数の削減を検討中です。来季は南アフリカ、オーストラリアのクラブが絞られ、参加団体数は18から15に変わる見通しですが。

「SANZAARがフォーマットに変更を加えるのご存じだと思います。そこについて、遠征中に南アフリカのコーチと話す機会はありませんでした。それに対して私たちのできることは、ありません。ただ結果を待っている段階です」

悔やまれる点を聞かれた延長線上で、ただただ専門コーチの仕事ぶりを称えるティアティアヘッドコーチ。白星へのタクトが待たれる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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