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MLB初のロンドンで公式戦開催! かなり冷ややかだった地元英国人の反応

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
会場となったロンドンスタジアムは盛り上がりを見せたが…(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【2試合で約12万人を集客】

 MLBが6月29、30日の2日間、リーグ史上初めてロンドンで公式戦を開催した。その記念すべき初戦に田中将大投手が先発しているので、その事実を承知している方も多いはずだ。

 歴史的な試合だったこともあり、MLBはリーグ屈指の好カードのヤンキース対レッドソックス戦を用意したこともあり、会場となったロンドンスタジアムには2試合で約12万人(正確にはMLB発表で11万8718人)が集まった。普段はサッカー仕様で6万人収容のスタジアムなので、まさに大盛況といっていいだろう。

 MLBではすでに来年もロンドン開催を決定しており、こちらも長年のライバルであるカブス対カージナルス戦を6月13、14日に行う予定になっている。これを機に、MLBが欧州市場へと手を広げる足がかりにしようとしているのは間違いないだろう。

【ESPN記者の気になる現地報告】

 ただ今回のロンドン開催が成功裡に終わったかといえば、些か疑問が残る。というのも、現地取材に回ったESPNのバスター・オルニー記者が実に興味深いレポートをしているのだ。

 彼が担当している『BASEBALL TONIGHT』ポッドキャストで、ロンドン滞在中に人気パブにいって現地の人たちから話を聞いたところ、ほぼ半数の人たちが、現在ロンドンでMLBの公式戦を開催していることすら知らなかったというのだ。

【現地では専門TV局中継とライブストリーム配信のみ】

 そこで改めて調べてみたのだが、英国の大衆紙と知られる『The Sun』のウェブサイトをチェックしたところ、公式戦開催に関する情報は報じられているものの、試合レポートなどの詳細記事を検索することはできなかった。

 また現地では地上波TV局も中継を行っておらず、英国のスポーツ専門TV局の『BT Sport』で放映されただけだった。ただし国営放送の『BBC』が無料でライブストリーム配信している。これではロンドン市民に広く認識されるには十分とはいえないだろう。

【20年前に体験した悲しい現実】

 実は筆者も、英国で悲しい体験をしたことがある。20年前の1999年のこと。ウェールズで開催されたラグビーのワールドカップを観戦するため、初めて英国を訪れた。そしてロンドンに到着したその夜、ロンドン在住の友人に誘われ、現地の人7~8人とパブでビールを酌み交わす機会を得た。

 その席で彼らから自分の職業について尋ねられたので、米国でスポーツライターとしてMLB中心に取材をしていて、ここ最近はマーク・マグワイア選手の取材もしていたと、ちょっと自慢気に話したのだが、彼らはまったくの無反応だった。

 当時の米国は、マグワイア選手とサミー・ソーサ選手の本塁打争いで国中が大騒ぎしていた。マグワイア選手は1998年に年間最多本塁打を塗り替える70本塁打を打ち、翌1999年も65本塁打を放ち2年連続本塁打王に輝き、すっかり時の人になっていた。

 だが英国の人たちは本塁打争いどころか、マグワイア選手の名前すら知らなかった。さらに日本人選手に関しても、野茂英雄投手ではなく中田英寿選手しか知らなかった。あの時ほど、野球が如何にマイナースポーツなのかを思い知らされたことはなかった。

【地元の関心はウィンブルドンやクリケット】

 現在もロンドンに在住している友人に確認してみても、やはり現在も地元の人たちは、ほとんど野球に関心がないというのが正直なところだ。

 今回MLBの公式戦が行われた時期は、英国で最も人気のあるサッカーのプレミアリーグがオフシーズンではあった。

 しかし現地の関心事は野球ではなく、開幕を控えたテニスのウィンブルドンをはじめ、シーズン真っ直中のクリケットやワールドカップを目前に控えたラグビー、さらには予選グループで快進撃を続けていた女子サッカーのワールドカップに集まっていたようだ。

【観客のほとんどは在英米国人と日本人?】

 さらに友人の説明によると、観戦に訪れた観客の多くが在英米国人だったようだ。友人の会社の上司も第2戦を観戦したらしいのだが、観客席ではあちこちで米国人が盛り上がっている様子を目撃したようだ。

 多少古い調査になるのだが、2011年の英国版国勢調査によれば、英国に在住する米国人の数は約20万人に及ぶ。現在も同程度の米国人が英国に住んでいることを考えれば、ロンドンスタジアムに米国人が多数集結できても何らおかしくはないだろう。

 いずれにせよMLBの英国進出は、すでに始まっている。彼らが成功できるかどうかのカギは、今後どれだけ地元の人たちの関心を集められるかにかかっているのではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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