「日本より上の成績を」韓国サッカー五輪代表監督が会見。東京五輪への準備をどう進めているのか。
森保一監督去就関連のニュースが騒がしい。30日は「兼任継続」が発表となり、サッカーファンの議論のキーワードになった。
いっぽう、「兼任」を選ばず「専任」を徹底する韓国は先のAFC U-23で優勝を果たした。東京五輪アジア最終予選を兼ねたこの大会では、もちろん上位3チームに与えられる本選出場権も獲得した。
五輪本選の開催国か、否か。そして兼任か、専任か。
日韓の明暗が別れた今大会では、両国の事情に大きな違いがあった。韓国は12月の時点から「専任」の長所を徹底して結果に繋げた。E-1選手権前にフル代表のパウロ・ベント監督と五輪代表のキム・ハクボム監督が会談。E-1選手権には五輪世代を呼ばないことを決めた。そしてU-23代表は12月に国内の江原道で合宿。さらに今大会前にタイで3週間もの合宿を行った。結果、E-1でもU-23選手権でも優勝を果たした。
キム・ハクボム監督30日の会見で開口一番「Kリーグの関係者監督に感謝」と口にしたが、まさにそのとおりだろう。いったい韓国の東京五輪への準備状況はどうなっているのか。会見での発言をキーワードごとに紹介する。
アジア大会で呼んだソン・フンミンは「どうすべきか」と聞いてきた
■優勝の感想
優勝というのはよいものだ。監督として光栄であり、幸せだ。何より選手に対して多くの自信を植え付ける機会になったと思う。23歳以下代表というのは年齢の特性上A代表に上がっていくためのすぐ下の段階となる。ここにいる選手たちにチャンスの扉を開いたという点に意義がある。
■海外組
今回、招集できなかったイ・ガンイン(バレンシア)、ペク・スンホ(ダルムシュタット)は、今回の予選のチームにとって非常に必要な選手だった。それゆえKFAも、私自身もコンタクトを図っていった。今回の大会では合流できなかったが、雰囲気は決して悪いものではない。ここからもこういったコミュニケーションは続いていくだろう。ただし、五輪本選でのチーム合流については競争がある。ヨーロッパでプレーする選手だからといって無条件でそこに入れるわけではない。国内の選手たちと競争をして能力が認められなくてはならない。五輪に参加したいという意思も見せなければならない。
(中略)
今回招集した唯一の欧州組、チョン・ウヨン(フライブルグ)の調子が悪かったのは確かだ。初めてこの選手をドイツで見た時、いい動きをしていたので期待をした。しかし今回、本人にとってはプレッシャーが大きかったのだと思う。欧州組として何かを見せなければという心理が負担になったのではないか。話を幾度かしてみたが、まだ若く、そこから抜け出せないように感じた。ここから先はプレッシャーから抜け出しさえすれば力を発揮してくれると思う。よりよいものを見せてくれるだろう。
■オーバーエイジ
一から考え直す。時間を置いて考えなくてはならない話だ。今、具体的に話すことはできない。本当にチームに必要な選手、使える選手で行くと思う。この点についてはもう少し時間がほしい。
(中略)
2018年のアジア大会当時、ソン・フンミン、ファン・ウィジョ、チョ・ヒョヌ(2018年ロシアW杯の正GK)を呼んだのだが、彼らがまず私に聞いてきたのは「チームの中でどういう風にやればいいですか?」という点だった。私は「ボールを手に抱えて、水を渡せ」と言った。先輩がそういった行動をすれば、後輩はついていくと思う。ここでは犠牲精神、献身的な姿勢を見せてこそよい反応があると伝えた。東京五輪でも同じだ。オーバーエイジの選手も献身的な姿勢を見せることで自動的にチームは一つになると思う。
東京五輪では日本を上回る成績を収めたい
■メダルへの展望
監督というものはどの大会でも選手と向き合うことを避けてはならない。選手にもそうやって話をしている。今回の大会でもお互いを信じたのでいい結果が出た。オリンピックでも変わりはないと思う。特に今回は日本で行われるので、事実上韓国もホームの利点をもって戦えると考える。日本で戦う大会ゆえ、日本よりも上の成績を収めたい。
■韓国の若年層の結果がよい理由(昨年のU-20W杯準優勝に続き今大会でも優勝)
まずはKリーグが23歳以下、22歳以下の選手の出場規定を作り(2013年より)、若い選手の出場機会を作ってくれた点がある。そしてKFAで進めているゴールデンエイジプログラムを含め、継続的に選手育成に投資をしてくれている点も理由に挙げられる。KFAがジュニアユース世代の試合経験を増やすため各種大会を増やしているのだが、それもプラスになっていると思う。年齢別の育成システムが’しっかりと機能し始めている。また23歳以下代表チームの場合、A代表に入っていきたいというモチベーションも高い。
■東京の暑さ対策は?/今大会、韓国はタイの暑さを考慮しターン―バー制を採用。
大会によって準備することが違う。東京オリンピックでは選手のエントリー数など他の要素があるため、具体的な準備については今から考えたい。どういった選手を入れるかによって変わると思う。まだ決定した部分はない。五輪の時の(日本の)天気も高温多湿だと思うがこの点も考慮しないといけない。
(中略)
今大会についてはタイの高温多湿な気候を克服するためにはエントリー選手たちを最大限に稼働させる必要があった。だからといってシステムで勝てるわけではない。お互いを信じる気持ちが必要。誰がそのポジションに入っても大丈夫だという信用だ。また、こういった大会では戦ううちに相手に戦術が露出してしまうためターンオーバーが必要だと思った。大会ではこれが機能したが、チームに問題点もあった。スピードだ。もう少し早い動きが必要。良いサッカーをしようと思うなら、速くなければならない。速度の戦いで勝たなければならない。
■ここから先のスケジュール
3月と6月、そして大会1ヶ月前に招集の計画がある。3月と6月には親善試合、大会1ヶ月前にはトレーニングを予定している。日本と近い環境でキャンプをやる計画だ。
くしくも日本で重苦しい空気のなか、森保一監督の「兼任継続」が発表となった日に、韓国では「優勝会見」が行われた。日本で人事が物議を醸すいっぽうで、韓国では先を見据えた話が出た。日本は五輪開催国ゆえ早くに出場権を得た。森保監督が「ラージグループを見ている」と言っている間に、韓国はシビアな予選を経て早く準備が進むかたちになった。
もちろん早い準備がすべて本選での結果に繋がるわけでもないが。
日本はゆったりとした時間があるはずだったが、「南アW杯、ロシアW杯杯型」のようにチームの直前の変化に期待を賭ける事態にある。W杯に関して言えば、先にチームが仕上がって本大会を待つより、こちらのほうが結果がよいのは確かだが。
いずれにせよだ。「相手より上をいく」と豪語するライバルの言葉から状況を再認識せねばならならい。