経済財政諮問会議における「デフレ脱却」という言葉にみえる矛盾
政府は15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示した(15日付ロイター)。
政府の経済財政諮問会議にケチを付けるわけではないが、この文章そのものにおかしな点が存在する。
「政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点」
この部分の「デフレ脱却には」という表現である。
私が知る限り、デフレとはデフレーション(Deflation)の略であり、デフレーションとは、物価が持続的に下落していく経済現象であると説明される。これで間違いはないであろうか。経済学の基本の基であり、中学や高校の教科書でも、持続的な物価の下落と説明されているはずである。
現在の日本の物価指数、特に日銀の物価目標となっている全国消費者物価指数(除く生鮮)の3月分は前年同月比3.1%の上昇となっていた。政府による支援策を除くと同4%台となる。15日に発表された4月の企業物価指数は前年比プラス5.8%となっていた。
全国消費者物価指数(除く生鮮)はここ1年の間、前年同月比2%を上回る数値が続いており、企業物価は高止まりしている。これをもって現在の物価動向を「物価が持続的に下落していく経済」などと言える状況にあるのか。
そもそも通常の物価指標をみる限り、「物価が持続的に下落していく経済」などでは当然なく、「物価が持続的に上昇していく経済」以外の何ものでもない。それにもかかわらず、経済財政諮問会議での「デフレ脱却には」という前提は、どういうことなのであろうか。
この部分は「実質賃金が持続的に下落していく経済現象のこと」を示したいのかもしれない。それでもかなり無理がある。
もしどうしても「デフレ脱却には」という前提を使いたければ、経済財政諮問会議で「デフレ」という解釈について、学生にもわかるような補足修正説明をする必要があるのではなかろうか。そうでないと学生がデフレやインフレとはいかなるものかという解釈に間違いを生じる可能性がある。受験にも影響を与えかねない。
結局、半ば強引に金融緩和を続けたい日本銀行、それに甘んじて財政拡大を維持したい政府の思惑が、このような経済実態とは乖離した発言も生んでいるようにすらみえる。その結果、物価や経済、さらには財政状況を無視したかのような政策を行うかにみえてしまう。こんなことをいつまで続けられるというのであろうか。