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準決勝・決勝解説は佐藤天彦九段! 9月28日、Vtuber将棋初心者大会開幕!

松本博文将棋ライター
(画像提供:ポメヒ)

 9月28日からVtuber将棋初心者大会(VSCC卵)が開幕します。

 大会立ち上げに関わったポメヒさん、たややんさん、かくきりこさんに、いろいろと聞いてみました。

各界の将棋初心者が参加!

たややん「アマチュア将棋界の中でもバーチャルYouTuber界というのがございまして。そこで大会を開くことになりました」

――失礼ながら私はあまり存じ上げない世界ですので、いろいろ教えてください。将棋をやってるVtuberの方は現在、どれぐらいおられるんですか?

ポメヒ「Vtuberで将棋もがんばってやってるって人は50人から100人ぐらい。実はけっこういるんです」

――かなりおられるんですね。最近、将棋系YouTuberはかなり増えてる感じがあって、一日中将棋を観ている私でも全部追い切れないんですけれども。その中でもVtuberとして活動されてる方がけっこうおられて、そういう方たちの大会を開こうというわけですね。

ポメヒ「そうです。ただ、今回の大会でちょっと挑戦的なところは、将棋は現段階ではやってないけど、他の界隈で活躍されてる方々。クイズ作家さんだったり、データサイエンティストVtuberさんとか。音楽とかゲームとか、なんかいろんなことしてはる各界の人気者の人にちょっと声をかけて『ちょっと一緒に将棋してみませんか』ってことで大会を開いてみたってことです」

――それは将棋界にとっても立派な普及活動ともいえますね。

ポメヒ「そうですね。勝手に将棋界を盛り上げていこうということで。いろんなところで活躍されてる方に来てもらうんですけど。ただいきなり『じゃあ何日に将棋を指してください』っていうのは、あんまりにもつっけんどんなところがあると思うんで。今回『アニキ』システムっていうのを考案したんです」

――へええ。

ポメヒ「将棋界ってもともと『師弟関係』ってあると思うんですけど。『師匠と弟子っていうとちょっと、ぼくたちには荷が重いな』という気持ちになるんで」

――師弟よりは、ライトな関係なんですね。

ポメヒ「そうですね。将棋界の水先案内人として、既に将棋で活動している自分であったりとか、かくきりこさんみたいな人が、いったんアニキ役として『将棋ってこうやってするんですよ』とか『将棋ウォーズ使って勉強してください』とか。なんかそういうことを案内しながら、一緒に強くなっていくところをYouTubeで配信したりして。それを観てる人が『この子がクイズしてるのが好きで見てたけど、将棋楽しそうにやってるな』みたいなところから、視聴者さんとかも将棋に入ってくれるといいなっていう気持ちでやってます」

――素晴らしいですね。じゃあ皆さん、いまは大会に向けて、皆さんなりのペースで将棋を学んでるところなんですね。

ポメヒ「そうですね、そういう感じです。最初なんで、タダで駒を取られちゃうこととかもたくさんあるんですけど。その子が勝てたりすると、コメント欄で観てる人が一緒にはしゃいでくれたりして」

――いいですね。そして大会本番では、誰からのアドバイスもなく、自分で指すと。

ポメヒ「そうですね」

準決勝、決勝解説は佐藤天彦九段

ポメヒ「今回16人の方をお招きして、4つのグループリーグに分けて。1位抜け4人のトーナメントで準決勝、決勝をして、優勝を決めます。最後のベスト4からは佐藤天彦先生にお越しいただく予定で」

――それはまた、すごい人を呼んできましたね。

ポメヒ「天彦先生に初心者の人の将棋を解説してもらう機会なんて、なかなかないと思います。天彦先生がショート動画の中で『職業なんですか?』『VTuber』って答えられてて」

たややん「それで私の方から天彦先生に大会の解説をお願いしたら『いいよ』って言ってくださって」

かくきりこ「Vtuberの界隈もやっぱりいろんなVtuberがいて。私たちは基本的に将棋の界隈にいるんですけど。私はいま将棋と麻雀の方にもいまして。その二つで一応活動してるんですけど。いろんな界隈の人に広がるように、私は将棋とゲームと麻雀の方にひたすらPRして。そこからワーッと広がって、今回けっこういろんな人たちが集まってもらったみたいな感じです」

――なるほど。やっぱりゲームが好きな人が多い感じでしょうか。

ポメヒ「基本的にはそうですね」

たややん「神野莉子さんは声優とクイズ作家をされている方です」

――プロフィールには「JAPAN MENSA会員」とありますね。そこにアニキとしてついてるのが井出隼平五段。こちらもまた、すごい人を呼んできましたね。

ポメヒ「そうなんですよ」

――たややんさんがアニキを務めているVtuberさんはどんな方ですか?

たややん「アイシア=ソリッドっていう方をお招きしまして。この方、データサイエンティスト界では有名で。ちょうど『妥協しないデータ分析のための微積分+線形代数入門』という本を出した方なんですけど」

――バーチャルデータサイエンティスト。これまたすごそうな方ですね。

たややん「皆さんもぜひ微積分と線形代数を入門してもらって、ということで(笑)。AIつながりでちょっと一時期お世話になったことがあって。『将棋、やったことない、ほぼ駒の動かし方しかわかんない』ぐらいの方だとわかったので、じゃあ、いまから勉強したらどれぐらい強くなるのかなみたいな。この方、東大の数理科学の博士課程を修了みたいな経歴をお持ちなんですが、そういう方がいまから将棋をやったらどれぐらい強くなるのか。けっこう楽しいじゃないですか」

――そういう方に将棋をやってもらったら「やっぱりすぐ強くなってすごい」という可能性もあれば「やっぱり強くなるのはそう簡単ではない」みたいな可能性もあるんでしょうね。

たややん「そうそう(笑)」

発展の可能性を秘めた将棋Vtuber界

――いろんな方に出てもらう大会というのはいいですね。

ポメヒ「将棋系Vtuberだけの大会みたいなのは、内輪でしてるようなことはあったんですけど。それとは別に、枠を飛び越えてやりたいなっていうことを言ってたら、将棋ウォーズさんが優勝者に棋神ラーニングを1年分、無料で提供してくださることになって。本当にありがとうございます」

――HEROZさん、さすがですね。あとこのリストで私がお名前を知ってるのは電子れいずさん。「スマホ詰将棋パラダイス」にセンスのいい詰将棋を出題されている方ですね。

ポメヒ「電子れいずさんもアニキを務めてもらっています。ぽめさんっていう、女子大生のVtuberです」

かくきりこ「今回は初心者大会なんですけど、この人たちが成長したら、今度は級位者か初段ぐらいのところでまた違う大会にしたりとか。枠を広げて、こういう活動を広げたいなと思っています」

たややん「かくきりこさんもMENSA会員で」

――頭のいい人ばっかりですね。

かくきりこ「もう辞めちゃいましたけど」

――たややんさんは強豪将棋ソフト「水匠」の開発者ですけれど。やっぱりこの大会は、コンピュータ将棋界隈も注目してるんですか。

たややん「そうですね。Discordでもけっこう話題になってますし。最近コンピュータ将棋界もいろいろやってますけど。これから電竜戦とか、世界コンピュータ将棋選手権もある中でね、Vtuberの方が活躍してくれて、たとえば大盤解説の聞き手とかで来てくれたらうれしいなっていう感じで」

――いいですね。

たややん「麻雀ってアマチュアの配信者でも多くの人が来る世界なんですね。Vtuberだと神域リーグっていうのがあって」

たややん「プロの麻雀コーチにアマチュアのVtuberとかが参加する大きなリーグがあるんですけど。それはもうチャンネル登録者100万人超えの人がいたりとか。同時接続も1万超えるみたいな、そういう世界なんですけど。将棋界だとVtuberってまだまだ全然弱いというところなので。ゆくゆくは将棋もリーグ化して、コーチは全員プロの先生にしていただいて、みたいな感じで大きくできればすごいですよね」

――ありがとうございました。大会を楽しみにしています。

Vtuber将棋初心者大会参加者(かっこ内はアニキ)

・アイシア=ソリッド(たややん)

・淡雪花奏(香坂まくり)

・男鹿なもめ(真澤千星)

・おしたらあたる(フラム)

・悪使天魔(甘党あずを)

・蟹久保しちみ(音無ちえる)

・かにみそ(細谷拓真)

・検察側の証人(一梨透)

・神野莉子(井出隼平五段)

・月音ゆき(香坂まくり)

・爆冥アイン(四宮式)

・XK⇒ペケ子(うーた)

・ぽめ(電子れいず)

・みーしゃん(かくきりこ)

・桃園おむ(たんぽぽちゃん)

・ゆめ心中(おぐらぱん)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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