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夏の甲子園/私のお気に入り 第1日 鹿児島実・長谷部大器遊撃手

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

18対4と、北海(南北海道)に大勝した鹿児島実。「うちの投手が決めに行ったタマを、ことごとく打ち返した素晴らしいバッティング」(北海・平川敦監督)がむろん勝因だが、守備で大貢献したのが長谷部大器遊撃手だ。

まず、2対1の2回裏。一死二塁から中前に抜けようかという打球を二遊間で処理し、反時計回りに体を切って一塁に好送球。6回の先頭打者は、むずかしいバウンドにリズムよく合わせて一塁に刺した。7回無死一塁からは、やはり二遊間のゴロを横っ飛びで処理し、6-4-3の併殺。そして最後は9回、一死一、二塁からやはり6-4-3の併殺にからむ。

聞くとこの長谷部、一般入部。それも、中学1年で見た鹿実の野球にあこがれ、三重・名張からの進学だ。

「最初は、特待入部とのレベル差が怖いくらいでした。1年生が15人くらいノックを受けられる日があっても、30人の同級生のうち僕はその15人に入れない。守備には自信があったんですが……名前も覚えてもらえないくらいでした(笑)。とにかく肩が弱くて、定位置からでも一塁へ山なりの送球しかできない。遠投はたぶん、70メートル台だったんじゃないですか。みんなにも、よく茶化されました。

ただ、スローイングのいいキャプテンの森口(裕太)に教わり、体の入れ方や捕ってからの足の使い方などいろいろ試すうちに、なんとかサマになってきました。遠投も……いまなら、おそらく90メートルくらいは(笑)」

昨年秋の新人戦、この春の県大会、NHK杯と、どの大会でもエラーを犯したが、それを糧にコーチとマンツーマンの2時間ノックを、何度繰り返したことか。そして「5月ころの東京遠征で、すべての練習試合をノーエラーでこなし」、ようやく自信が出た。この夏の県大会は、内野のキーマンとしてノーエラーである。

そしてこの日の活躍。次戦の相手は、中京大中京(愛知)だ。

「育ったのが同じ東海地区ですから、あこがれの名門です。ぜひやってみたかった」

ホント、長谷部の守備はうまいですよ。グラブさばきが軽快だし、守備範囲も広い。ぜひ、次戦に注目を。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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