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「50年後にはロボットやコンピューターが人にとって代わる」世界の人達はどのように考えているか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アマゾン・ゴーの無人レジも新技術の賜物。未来を感じる人も多いはず。(写真:ロイター/アフロ)

技術革新は人の苦労を減らし不可能なことができるようにするために行われるが、それによって従来人がしていた仕事が新技術に奪われる、競争力で太刀打ちできなくなることが多々ある。利用者の観点では便利になり快適さが増し低コストで利用できることになるが、それは同時に今までそれに従事していた人の仕事を奪うことを意味する。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年9月に発表した調査「In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation」(※)の報告書を基に、昨今の技術革新の代表格であるロボットやコンピューターに関して、人の仕事を代替する立場となるのか否かなどについて、諸外国の人達がどのような考えを抱いているのかを確認する。

まず最初に示すのは、それぞれの国の人に対して50年後において、ロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わるか否かを尋ね、その肯定派の意見をまとめたもの。設問では「全体的に」と尋ねており、また別設問では回答者の国自身に関しての場合はその旨明言されていることから、今設問は世界全体としての傾向を尋ねているものと考えてよい(ただし自国の実情も回答には少なからぬ影響は与えるだろう)。

↑ 今から50年後においてロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わると思うか(2018年春)
↑ 今から50年後においてロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わると思うか(2018年春)

調査対象国でもっとも肯定派が多いのはギリシャ。「間違い無い」「多分」を合わせて91%が肯定している。次いで日本が89%、カナダが84%、アルゼンチンが82%。もっとも「間違い無い」のみではギリシャがもっとも多く52%だが、次いで南アフリカの45%が続いている。

報告書ではこの動向そのものに対する直接的な解説は無いものの、「製造工場の労働者1万人あたりに対する産業用ロボットの数として、韓国は600台以上、日本では300台以上、アメリカ合衆国では200台近くが設置されている」のような事例を挙げるとともに、企業の行動傾向である利益の最大化と、人件費の高騰対策として、ロボットやコンピューターの導入促進は大いに貢献しているとの説明が行われている。

しかしながら一方で、このような新技術の導入による仕事の代替が、人々の生活をより幸せにするとの考えには、多くの国では否定的なようだ。「ロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わる」ような状況となったら、人の職探しは大変になるだろうか、それとも新しく高給が期待できる仕事が生まれて人はそれに従事できるようになるだろうか(この設問の回答はアメリカ合衆国の分は掲載されていない)。

↑ ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになったら(2018年春)
↑ ロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替できるようになったら(2018年春)

ギリシャでは91%、アルゼンチンでは89%、日本でも74%の人が、新技術によって人の仕事がとって代わられると、その分仕事が減るために人の職探しは大変になると考えている。一方で、むしろそれらの新技術ではこなせない、しかも高給が期待できる新しい仕事が生まれるので、人はそれに従事することができるという楽観的な考えを持つ人は2割台から4割台。カナダは楽観的に見えるが、それでも5割に届かない。

恐らくは単純な作業が多い、技術をあまり必要としない仕事が新技術にとって代わられる可能性は高い。新技術が代替するためのハードルが低いからだ。しかしそれは同時に、そのような仕事についていた人の職が奪われることを意味する。あるいは新技術よりも低コストでの就業を余儀なくされる。そしてそのような人達が、「新しく高給な仕事」に就業できる可能性は高いとは言えない。

新技術は人の生活を豊かにするため、楽になるため、できないことをするために生まれ普及するものだが、それがすべての人にプラスとなるとは限らない。強弱の違いはあるものの、どの国でも同じように考えているようだ。

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※In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation

対象国において2018年春に行われたもので、調査対象母集団は各国18歳以上で約1000人ずつ。調査方法は電話による対話形式や対面形式など。一部の国では都市部のみでの調査実施。それぞれの国の国勢調査などの結果に基づいたウェイトバックが実施されている。ただし一部設問におけるアメリカ合衆国の調査結果は、2015年6~7月に行われた同様の調査結果を適用させている。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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