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鳥山明さん死去 世界を魅了した「分かりやすさ」 多くのマンガ家が手本にしたシステムも

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:ロイター/アフロ)

 マンガ「ドラゴンボール」や「ドクタースランプ」、ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズのキャラクターデザインなどでも人気のマンガ家・鳥山明さんが、68歳で亡くなったことが発表されました。多くのメディアで、さまざまな視点の記事が配信され、SNSでも話題になっています。

 鳥山さんの作品の魅力の一つは、報道でも触れられている通り、一見怖そうに見えるキャラクターでも、なぜか親しみを覚えてしまう、それでいてクールな画の力であることを否定する人はいないでしょう。同世代のマンガ家たちが「嫉妬」という表現を用いることもあるほどです。

 しかしエンタメは、どうしても時代の流行に左右されることがあるわけですが、鳥山さんの作品の不思議なところは、数十年前のイラストが古びないことです。とにかく鳥山さんの画を見れば、分かる人ほどそのすごさが伝わる……というわけでして、後進のクリエーターへの影響は大きかったといえます。

 それに加えて、読者がすんなり理解しやすい設定作りの巧みさも大きな武器だったのではないでしょうか。

 「ドクタースランプ」では、力持ちの少女(正確にはロボットですが)・則巻アラレが地球を割るシーン(地球割り)があります。もちろん科学的には「ありえない」のですが、大変分かりやすく、かつインパクトのある表現です。冷静に振り返ると、どうしてそんなことを思いついたのか……と不思議なほど。「常識の枠」を突き抜けたところがありました。

 また「ドラゴンボール」では、キャラクターの強さを数字で表現する「戦闘力」もそうです。絵だけではなかなか表現しきれないであろう実力差を、これだけ分かりやすく表現できる方法を、これまた思いつきません。この強さを数字で可視化するシステムは、多くのマンガで取り入れられています。

 さらに言えば、そこからもう一つ、積み増したりすることもポイントです。「ドラゴンボール」に登場するミスター・サタンのように、主人公の孫悟空と比べると強さは足元に及ばないものの、数字には出ない民衆の人気なども重要な要素として織り込んだりしました。このあたりもちょっとした「いたずら心」を感じるところです。

 要するに、作品としての面白さはもちろん、読者に対する「分かりやすさ」が群を抜いているのです。そしてこの「分かりやすさ」は日本人だけでなく、文化の壁を飛び越え、海外の人たちも魅了しました。ゆえに、各国からも多くの弔意が寄せられているのではないかと思うのです。

 「ドクタースランプ」や「ドラゴンボール」を読み、「ドラゴンクエスト」シリーズをプレーした世代の一人として、ご冥福をお祈りします。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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