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『官報』デジタル正本版とタテ書き漢数字の未来。1日3,178万円かける『官報』の価値は?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:インターネット官報

KNNポール神田です。

2024年初めに、『官報』の『正本』がデジタル版になるという。

令和になってすでに1016号が発行されている。

国立印刷局『官報』の事業予算は、年間116億円。平日発行される『官報』予算を365日で割ると、一日あたり3,178万円だ。

『官報』の人件費は年間42億円一日あたり1,150万円かかる。

全国48箇所だけで販売される『紙版の官報』にそれだけの価値はあるのか?

■政府は法令や企業情報などを載せている刊行物の官報について、紙の出版からインターネット上での公表を原則にする。2024年初めにもデジタル版に法的効力を持たせ「正本」と位置づける。法律の公布時間を柔軟に設定できるようにし、企業の負担軽減や行政コストの削減にもつなげる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA07CAY0X00C23A7000000/

■河野デジタル相は、1883年(明治16年)に創刊された紙版の官報を将来的には廃止も検討する考えを示している。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230127-OYT1T50162/

現在、『インターネット版官報』は無料で閲覧できる。

https://kanpou.npb.go.jp/

しかしながら、直近90日間(約3ヶ月)という期間限定版だ。

そして、紙版の『官報』は平日に毎日発行されている。

当日の官報はインターネットでも確認することができる。

出典:インターネット官報
出典:インターネット官報

インターネット上でタイトルは横文字で表記され、検索にも引っかかるが、リンク先の本文はPDFでしかもタテ書きでの表記だ。

出典:インターネット官報
出典:インターネット官報

基本的にPDFの縦文字は、紙で読む場合はまだしも、ネットの画面越しではとても可読性が悪い。

当然、コピー&ペーストなども至難のワザであり、縦書き文書を、たとえコピーできても利活用の範囲が狭すぎる。

また、生成AIなどでPDFの官報を分析しようとしても、数字がすべて、『漢数字のタテ書き』のためにほぼ、認識ができない状態だ。そしてさらに、西暦ではなく『元号表記』であるから、西暦に置き換えないと世界との比較などができない。

■PDFのタテ書き漢数字は誰のために?もはや禁止、いや罰金ものにすべきでは?

2024年に『官報』のインターネット版が『正本』となるのであれば、法律も含めて、『縦書き漢数字』の問題を検討すると共に、『タテ書き』を廃止し、『ヨコ書きでの英数字表記』、できれば、数字はすべて『半角』とすべきだろう。しかも文字コードも『ShiftJIS』ではなく『UTF-8』のみにすること。

たとえ『PDF版』が必要であっても、同じものを『HTML』でも掲載すべきだと思う。すでに、『タテ書き&漢数字』は伝統的な文書である事以外のアドバンテージがどこにもない。

読みやすく『ヨコ書き&半角数字、西暦、UTF-8』のみをあつかうことによって、国際化にも、検索にも、AIにもやさしくなれるのではないだろうか?

■会社の決算公告、掲載しないと100万円の罰金だ!

本来、株式会社ならば決算公告を官報や日刊新聞紙または電子公告で掲載する必要があり、すでに自社のサイトなどによる『電子公告』などでの公告が可能となり、『官報』に有償で、3万7,165円(税込)を支払い、掲載する必要性がなくなってきている。

しかし、公告はいずれかの方法で掲載しないと100万円の罰金が義務づけられているにもかかわらず、すでに形骸化している。

むしろ、利用しずらい『官報』の側に課題が残っていると筆者は考える。

出典:官報公告
出典:官報公告

https://www.gov-book.or.jp/asp/Kanpo/KanpoPrice/

『官報』の役目としては、『公告』つまり、公的な政府・公共団体が、ある事項を広く一般に知らせることにあり、そのために、『紙』を毎日出版するという経緯があった。法令の公布の役割もある。…かといって、全国の『官報販売所』は48箇所にしかない。

しかも県庁の中とかではなく独立した『官報販売所』にわざわざ行かなければならないのだ。

https://www.gov-book.or.jp/portal/shop/

また、『政刊懇談会』という特殊な団体が構成されている。

https://www.gov-book.or.jp/portal/seifukondan/

■『官報』事業予算は年間116億円(1日当たり3,178万円)令和4年(2022年)

出典:令和4年(2022年)独立行政法人 国立印刷局
出典:令和4年(2022年)独立行政法人 国立印刷局

https://www.npb.go.jp/ja/guide/finance/pdf/20230621kessan.pdf

『官報』事業のみの年間予算116億円を、日本全国48箇所の売り場で割ると…一箇所あたりの年間予算は2.4億円というコストをかけて公布している事業となる。

また、『官報』のみの年間予算116億円を年間、365日で割ると、1日あたりの予算は3,178万円となる。ウェブのみで制作し公開すれば、どれだけセーブできるだろうか?

そして、ほとんど国会で成立した『法案』なども企業からの『公告』も、ほとんどが『転載』ですむのでほとんど人件費は省略できそうなものだ。

印刷をなくして、すべてウェブで閲覧すればこのコストはかなり削減できるかと思えばそうではない。国立印刷局でのコストセンターは人件費だ。『官報』だけでも42億円が人件費で計上されている。『官報』予算の36.2%に当たるからだ。制作する官報の人件費だけでも毎日1,150万円もかけているのだ。

令和4年(2022年)は国立印刷局全体で、365億円の人件費がかかっている。事業予算全体が732億円。人件費率は、49.86%である。人件費がかかりすぎではないだろうか? 新札を作るので高くなっているのかもしれないが、外注しても良いのではないだろうか?

職員4,170名なので、一人当たり、875万円の人件費となる。お札と切手と官報を作るお仕事でそこまで人は必要なのか?

出典:令和4年(2022年)独立行政法人 国立印刷局
出典:令和4年(2022年)独立行政法人 国立印刷局

NHK同様、これらの人件費がデジタル化によって本当に適切なのかどうかも見極める必要がありそうだ。

このようなデジタル化による、提案を令和元年(2019年)第1号の時から提言し続けている…が明治時代のまま世の中は、変わろうと全くしないのが現状だ。

2023年6月30日、オーストリアで世界最古の日刊紙『ウィーン新聞』が紙版の最終号を発行し、日刊紙としての320年間の歴史を終えた。1703年のハプスブルグ家の治世からスタートし、主な収入源だった『官報』の機能廃止が原因だった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0113S0R00C23A7000000/

国立印刷局、年間724億円の予算も『官報』廃止になれば大きく変わることだろう。

■『令和』時代の『インターネット官報』のあり方 官報号外第1号 2019年

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20190503-00124661

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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