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ウクライナ軍が破壊したロシア軍のドローン、2022年2月の侵攻直後から2200機突破:多くがイラン製

佐藤仁学術研究員・著述家
ウクライナ軍が迎撃したロシアの神風ドローン(ウクライナ軍提供)

監視ドローンから攻撃ドローンまで

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。

ウクライナ軍によると2022年2月24日から2023年3月23日までにロシア軍兵士の戦死者は168,150人以上で、破壊したドローンは2200機を超えた。2023年3月10日に2100機だったので、13日で100機のドローンを破壊した。今回は100機撃破達成まで早い方である。

ロシア軍はイラン製の軍事ドローンや、ロシア製の監視・偵察ドローンを多く飛行させている。そのため実際にはもっと多くのドローンを破壊しているだろうが、カウントされて公式に公開されているドローンの数である。ドローンは戦車や大砲のように大型でない。上空で破壊してもバラバラになってしまって残骸や破片が見つからずにカウントされないこともある。

2022年9月30日までの約7か月間に破壊したロシア軍のドローンが累計1000機だった。10月に入ってからロシア軍がイラン製軍事ドローンを多く使用して首都キーウだけでなくウクライナへ攻撃をしかけていた。そのため迎撃して破壊するドローンの数も多くなっていった。だが、2022年11月は以前のペースと比べると100機を破壊するまでにだいぶ日数がかかっていた。この頃には英国国防省がイラン製軍事ドローンが枯渇したのではないかという見解を示していた。12月になってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンを再び多く使用して攻撃をしてきた。民間施設や電力施設への攻撃が相次ぎ、オデーサ近郊では150万人以上の市民生活に打撃を与えていた。12月後半のクリスマス、年末年始も大量のイラン製軍事ドローンでの攻撃が再び目立っていた。

2023年3月になってからもロシア軍のイラン製軍事ドローンによる攻撃が行われており、ウクライナ空軍は迎撃していた。ロシア軍が大量の軍事ドローンで奇襲を仕掛けてくるので、迎撃されて破壊されるドローンも多く、1日に数十機のドローンが破壊される日もある。また攻撃ドローンだけでなく監視ドローンも多く撃破されている。だが上空でバラバラになってしまい破片や残骸が行方不明なことから破壊されたドローンの全てがカウントされているとは限らない。

2022年10月1日から10月11日までの11日間で100機(累計1100機)

2022年10月12日から10月15日までの4日間で100機(累計1200機)

2022年10月16日から10月20日までの5日間で100機(累計1300機)

2022年10月21日から10月28日までの8日間で100機(累計1400機)

2022年10月29日から11月11日までの14日間で100機(累計1500機)

2022年11月12日から12月7日までの26日間で100機(累計1600機)

2022年12月8日から12月24日までの17日間で100機(累計1700機)

2022年12月25日から2023年1月2日までの9日間で100機(累計1800機)

2023年1月3日から1月25日までの23日間で100機(累計1900機)

2023年1月26日から2月12日までの18日間で100機(累計2000機)

2023年2月13日から3月10日までの26日間で100機(累計2100機)

2023年3月11日から3月23日までの13日間で100機(累計2200機)

まだまだ続くイラン製軍事ドローンでの奇襲と迎撃

2022年10月には400機以上のロシア軍の軍事ドローンを迎撃して破壊していた。以前は1日に数機程度で10機以下の日が多かったが、10月に入ってからは1日に20~30機のロシア軍のドローンを破壊していた。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻してから8か月間で1400機のロシア軍のドローンが撃墜されたが、そのうち約3割の400機が2022年10月の1か月間で撃墜されたことになる。3月に入ってからもロシア軍によるイラン製の軍事ドローンを使った攻撃は収束していない。イラン製軍事ドローンで夜に奇襲をしかけてきて、それらを迎撃して破壊している。

破壊された装甲戦闘車両が6898台、戦車が3570台、大砲が2608門なのでそれらに比べると破壊されたドローンは2200機なので多くはないようにみえる。だが、ここ数か月で多くのドローンが破壊されている。両軍とも監視・偵察ドローンや攻撃ドローンをかなりの規模で飛ばしているので、破壊されたがカウントされていないドローンを含めるともっと多い。特に攻撃ドローンは上空で破壊されるので大量に飛ばしてきても残骸や破片などが発見されずにカウントされないことが多い。カウントするために危険を冒してまでわざわざ破壊したドローンの破片や残骸を探しに行ったりはしない。特に爆弾を搭載したドローンは、ジャミング(電波妨害)で機能停止させて地上に落下しているものもあり地上で爆弾が爆発する危険もある。

また戦車や大砲の多くも上空からウクライナ軍がドローンで爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき破壊したりしている。また塹壕などに隠れているロシア兵にも小型民生品ドローンで爆弾を投下して兵士を殺傷している。

▼2023年3月21日夜にイラン製軍事ドローンでの襲撃と16機のドローン撃破を報告するウクライナ軍

▼ウクライナ軍の発表

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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