永瀬王座5連覇か、藤井竜王・名人「八冠」達成か――第71期王座戦五番勝負展望
永瀬拓矢王座(30)に藤井聡太竜王・名人(21)が挑戦する第71期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)は第1局が8月31日に神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われる。
永瀬王座は5連覇と「名誉王座」の資格獲得(連続5期または通算10期)が、藤井竜王・名人(王位・叡王・棋王・王将・棋聖)は前人未到の全八冠制覇がかかる。勝敗と戦型を、データを基に予想してみた。
<王座戦五番勝負日程>
第1局 8月31日 神奈川県秦野市「元湯陣屋」
第2局 9月12日 兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」
第3局 9月27日 愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」
第4局 10月11日 京都府京都市「ウェスティン都ホテル京都」
第5局 10月30日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
<永瀬王座の最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)
5月8日 伊藤園お~いお茶杯王位戦リーグ紅組
対石井健太郎六段 ●
5月26日 竜王戦1組出場者決定戦
対木村一基九段 ○
6月22日 順位戦A級
対菅井竜也八段 ●
7月13日 竜王戦決勝トーナメント
対豊島将之九段 ○
7月21日 竜王戦決勝トーナメント
対羽生善治九段 ○
7月27日 順位戦A級
対佐藤天彦九段 ○
7月31日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局
対伊藤匠六段 ●
8月4日 棋王戦コナミグループ杯本戦
対遠山雄亮六段 ○
8月14日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局
対伊藤六段 ●
8月19日 将棋日本シリーズ
対山崎隆之八段 ○
<藤井竜王・名人の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)
6月23日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局
対佐々木大地七段 ●
6月28日 王座戦本戦準決勝
対羽生善治九段 ○
7月3日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局
対佐々木七段 ○
7月7、8日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局
対佐々木七段 ○
7月13、14日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第2局
対佐々木七段 ○
7月18日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局
対佐々木七段 ○
7月25、26日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第3局
対佐々木七段 ○
8月4日 王座戦本戦挑戦者決定戦
対豊島将之九段 ○
8月15、16日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第4局
対佐々木七段 ●
8月22、23日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第5局
対佐々木七段 ○
挑戦者に勢い
両者の調子を比較すると直近10局で永瀬王座6勝4敗、藤井竜王・名人8勝2敗と差があり挑戦者優位といえよう。
また直接対決は藤井竜王・名人の11勝5敗(2千日手)とダブルスコア以上の差がついているが、直近の対局である2023年2月1日の順位戦A級では角換わりから先手の永瀬王座が勝利している。
これまでのタイトル戦全成績などデータ上では藤井竜王・名人が圧倒している。ただし「勝負の鬼」と呼ばれる永瀬王座の防衛戦にかける思いが、下馬評を覆す可能性は少なくないと見る。
角換わり中心も、永瀬王座の後手番戦略に注目
戦型は最近の傾向からは永瀬王座が先手番なら角換わりが本命で、次に相掛かりの可能性が高そう。
藤井竜王・名人先手番の時も角換わり志向が予想されるが、永瀬王座は雁木や横歩取り、さらには振り飛車といった「変化球」を用いて、多彩な戦型が出現すると見る。
将棋史上に残る今回の五番勝負、筆者も一ファンとして名局が数多く生まれることを期待している。