主な意見からみた日銀の次の一手
日銀は10月30、31日に開催された「金融政策決定会合における主な意見」を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」をみながら次の一手を探ってみたい。
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。」
最初の意見者は植田総裁ではないかと思われる。会合後の会見での同様の発言があった。
「米国経済の不透明感が低下する中で、時間的余裕という言葉で情報発信をしていく局面ではなくなりつつある。」
内田副総裁の意見か。今後は「時間的余裕」という言葉を使わないことも総裁会見でも示されていた。
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げていく、というコアメッセージをしっかりと発信していくことが重要である。」
「コアメッセージ」との表現が興味深い。現在の日銀の金融政策における中心的な考え方ということとなろう。
「内外における不確実性の高まりに鑑みると、金融政策運営をより慎重に行っていく必要があることから、今回は、金融政策は現状維持で良いと考える。」
この時点での「内外における不確実性の高まり」の主要な要因は日本の衆院選と米国の大統領選挙の結果によるものか。
「いわゆる金利のある世界への移行には、相応の不確実性があるため、この先の政策金利の引き上げは時間をかけて慎重に行う必要がある。」
相応の不確実性というか皆、慣れていないためということかと。
「日米の金融政策の方向性が逆となるもとで、為替市場を中心に市場が大きく変動する可能性もあるなか、仮に日本銀行の追加的な利上げを契機にショックが生じた場合、長期的にみた金融政策の正常化に支障が生じる可能性にも留意する必要がある。」
これは注意すべきであるが、8月はいろいろな条件が重なっていたことで、日銀の7月末の利上げが主要因ではなかった点にも注意したい。
「米大統領選挙の結果次第では市場が大きく変動する可能性が高いため、それに十分備えておくことも必要である。」
何をしでかすかわからない大統領となるため、十分備えておくことも必要である。
「経済・物価が想定通り推移する場合、早ければ2025年度後半に1.0%の水準まで段階的に利上げしていくパスを前提とすれば、経済・物価の進捗を見守る時間が今回はある。」
早ければ2025年度後半に 1.0%の水準まで段階的に利上げしていくパスというのが、現在の日銀が想定しているものであれば、やはり12月の決定会合での利上げの可能性が意識されよう。
「国債先物取引におけるチーペスト銘柄の需給ひっ迫というイールドカーブ・コントロールの副作用によって、国債市場の流動性の低下や金利の歪みが懸念される。」
チーペストが直接関わるのは、現引き・現渡しへの影響であるため、それほど懸念する必要はないと思う。
ということで、「主な意見」からも12月の決定会合での利上げの可能性は引き続き高いものとみている。