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英語力、確執…。リーチ マイケルキャプテンがワールドカップで感じたこと【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
13日に帰国したリーチキャプテン。後にテレビジャック。(写真:中西祐介/アフロアスポーツ)

4年に1度のワールドカップでは過去24年間も未勝利だった日本代表は、今秋の同イングランド大会で、史上初の1大会複数白星となる計3勝を挙げた。9月19日にはブライトン・コミュニティースタジアムで、過去優勝2回の南アフリカ代表を34-32で撃破。目標としてきた準々決勝進出は果たせないなか、ファンを沸かせた。3勝しながら予選突破が叶わなかった例は今回が初。

チームの先頭に立ったのは、フランカーのリーチ マイケルキャプテンだ。札幌山の手高、東海大を経て東芝入りし、今年は南半球最高峰スーパーラグビーのチーフスでもプレーした27歳である。

今大会では36回のゲインライン突破数、51回のタックル数を記録した。いずれも予選プール終了地点で全選手最多だった(タックル数はイタリア代表のロック/フランカー、フランシスコ・ミントと同数)。

帰国直前だった10月12日、グロスターで総括会見に出席。その後の囲み取材では、期間中のチーム作りに関するエピソードや今後の指針を語った。

以下、一問一答の一部。

――昨日(11日)のアメリカ代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム/28-18で勝利)が一番難しかったと。

「ベスト8に行けないとわかっているなかでの試合(10日、ニューカッスル・セントジェームズパークでスコットランド代表がサモア代表を36-33で撃破。この時点でジャパンの総勝ち点数が2傑に入る可能性が絶たれた)。あとは(年齢的に)代表選手として最後の試合になる(可能性の高い)選手も何人かいて…。難しい試合でした」

――むしろ、南アフリカ代表戦の方が…。

「不安もあったけど、楽しみでもあって、身体もフレッシュ。相手の分析もこれ以上ないくらいできていて…そういう状態でした」

――(当方質問)アメリカ代表戦後の円陣で、選手に「日本に帰ってから、どんな態度を取るべきか」を話したと言います。具体的には。

「あまり天狗にならない、近くにいる選手を大事にする、周りに日本代表がどんなチームだったかを伝える、と。自分のチームメイトが、(国内最高峰の)トップリーグの全員が日本代表になりたいと思えるようにしたい」

――大会後は、体制が一新されます。

「次のコーチはプレッシャーがあると思う。でも、このチームの良さは主体性。次のコーチと話し合って、チームをどう運営していくかを決めていきたいです」

――今後もキャプテンを続けたいですか。

「キャプテンは名前だけで、(副キャプテンやポジションリーダーを含めた)リーダーシップグループが大事。新しいスーパーラグビーのチーム(2016年に発足する日本拠点チーム、サンウルブス)と日本代表は、(戦略術の面では)同じことをしないといけない。1つ言えるのは、日本代表のキャプテンは英語がわからないと苦労します。レフリーとのコミュニケーションで、です。

昨日(アメリカ代表戦)は、英語なのにコミュニケーションを取るのが難しかったです。スコットランド代表戦(9月23日/キングスホルムスタジアム/10-45で敗戦)もです。自分たちのペナルティーが多かったのも間違いないんですけど、モールやラック、スクラムのところの笛が…。試合中、レフリーとずっといい関係だったかと言えばわからない。レフリーも、緊張していたんだと思います。

ただ、南アフリカ代表戦の時はレフリーとのコミュニケーションが抜群でした。サモア代表戦(10月3日/ミルトンキーンズ・スタジアムmk/26-5で勝利)の時も。レフリーにがーっと言うのではなく、流れの中で『どうですか』と聞いてみて、(反則の判定を)こっちからアピールしないで、レフリーに任す。カード(一時退場処分)を出すタイミングも任せます。プレッシャーをかけない」

――レフリーとの意思疎通を図れる語学力と性格の持ち主。リーチ選手の他にいますか。

「堀江翔太さん(副キャプテンでフッカー)が一番」

――今大会、リーダーシップグループが自立できたわけは。

「主体性は、ワールドカップに入ってからはがっと成長した。自分たちでミーティングをして、ゲームプランを理解して、俊朗さんが相手チームの分析…そこは、もともとずっと成長していて、ワールドカップでも成長した」

――体制変更後もこの状態を保つには。

「プランを持つ。目的を持つ。この2つは、常にやらないといけない。ただ走るんじゃなく何のために走るか。何のためにレフリーを呼んできているのか…。そういうこと(について考える癖)を大事にしないと」

――そうした自主性は、エディー・ジョーンズヘッドコーチも選手に持たせたかったのでしょうか。

「このチームでは最初、俊さん(廣瀬俊朗前キャプテン/スタンドオフ・ウイング)が2年間キャプテンやっていた。エディーの言う通りにしながら、俊さんのうまいリーダーシップでまとめていっていて…。2013年の後半(リーチのキャプテン就任前)から、自分たちでどうチームを引っ張って行けるかについてエディーに色々と言われました。練習中に(まずい動きがあった場合)『なぜ、お前らはそのプレーを見て何も言わない?』と。そのなかで、田中史朗(日本人初のスーパーラグビープレーヤー/スクラムハーフ)の経験は大きかった。フミさんはチームに対する情熱を持っている。海外の経験値がある。それをストレートに伝えてくれる。ありがたい。彼の存在は今までの日本代表にはないものでした」

――(当方質問)もっとも、苛烈な気質の持ち主にも映ります。どう、チームと調和させましたか。

「フミさんのことを大事にしなきゃいけないんだ、と自分から示していきました。彼の発言、最初に聞くと腹立つんですけど…話し合って、お互いの気持ちを理解すると、またチームが強くなる。僕にとってはプレッシャーをかけてくれる存在。なかなか周りは色々と言ってくれないから、それがありがたくて」

――田中選手から受け取った、印象に残る言葉は。

「(笑みを浮かべ)お前の考えは、甘い」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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