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この夏、青春18きっぷで「降り鉄」を始めよう! 多彩な楽しみ方のできる駅巡り

清水要鉄道・旅行ライター
石巻線 渡波駅(建て替え前)

「撮り鉄」「乗り鉄」「模型鉄」といった鉄道ファンを分類する言葉が市民権を得て久しい昨今、以前に比べれば存在が知られるようになってきたものの、どちらかと言えばマイナーな分野の一つが「降り鉄」だ。読んで字のごとく「駅に降りる」ことを目的とする鉄道ファンのことである。

もっとも、「降り鉄」といっても気になった駅にふらりと降りるだけのソフト勢から日本にあるすべての駅に降りることを目的とするガチ勢まで様々で、人それぞれの楽しみ方がある。この記事ではそんな「降り鉄」の目的である「駅巡り」の様々な楽しみ方について「降り鉄」である筆者が紹介していこう。

1.純粋に駅を楽しむ

芸備線 高駅
芸備線 高駅

まずは、駅が好きで「駅に降りる」ことそのものが目的という人の楽しみ方。駅舎を隅から隅まで観察して、その駅の個性を探したり、他の駅との共通点や違いを楽しんだりという感じで、どちらかというと「ガチ勢」の楽しみ方だろう。こうしたガチ勢が複数人で駅に行くと、人それぞれ目の付け所が違っていたりするのも面白いところである。

2.駅の歴史を楽しむ

木次線 油木駅
木次線 油木駅

駅を観察して「これは交換設備の跡だな」「これは貨物ホームの跡だな」とその駅の過去の姿を考察・研究する楽しみ方。中には過去の航空写真と照らし合わせて徹底的に行う猛者もいる。小さな駅となると資料や古写真も少ないので困難だが、それゆえに面白かったりもする。

3.駅を取り巻く風景を楽しむ

飯田線 伊那福岡駅
飯田線 伊那福岡駅

駅から見える山や海、田園といった風景に目を向ける楽しみ方。自然に囲まれたローカル線の駅だけでなく、都会の駅でも高架上のホームから見えるビル群が綺麗だったということもあるので、その気になれば誰でも手軽に始めることができる楽しみ方だろう。いわゆる「絶景駅」を求めて旅をするというのもこの楽しみ方に含まれる。

4.駅周辺を楽しむ

日豊本線 北俣駅
日豊本線 北俣駅

駅に降りて、次の列車の時間まで駅周辺を散策するという楽しみ方。思わぬ絶景を見つけたり、寺社仏閣に参拝したり、歴史スポットを巡ったり……。事前に調べておけば効率的に散策できるが、一方で何も調べず行き当たりばったり歩くことで出会えるものもある。

5.駅前グルメを楽しむ

由利高原鉄道 矢島駅から徒歩12分 栄食堂のメンチカツ定食(750円)
由利高原鉄道 矢島駅から徒歩12分 栄食堂のメンチカツ定食(750円)

駅前や駅周辺で営業している、地元住民以外はめったに利用しないような飲食店で食事をするという楽しみ方。中にはネットにメニューの写真や情報がほとんどない店もあり、口コミを参考に食事場所を探す人にとってはちょっとした冒険かもしれない。だが、情報が少ないからこそ、美味しい料理と出会えた時の感動もひとしおというものだ。初めて降りる駅で店や料理との一期一会を楽しもう。

6.秘境駅を楽しむ

宗谷本線 智北駅
宗谷本線 智北駅

「秘境駅」とは、人里離れた場所にあって、列車の本数が少なく、自動車や徒歩での訪問難易度も高い駅のことで、牛山隆信氏によって提唱された概念だ。近年、テレビや書籍で取り上げられることも多く、すっかり人口に膾炙したように思える。「秘境駅」をアピールして町おこしに使う自治体がある一方で、その利用者の少なさから廃止される駅も多い。日常から離れて一人の時間を楽しむのにうってつけの場所だが、廃止が決まった駅や有名な駅などは観光客だらけで秘境感が薄いということもしばしばだ。秘境駅の中でもマイナーな駅の方が狙い目だろう。

7.駅間歩きを楽しむ

隣の初野駅から歩いて辿り着いた宗谷本線 紋穂内駅(廃止)
隣の初野駅から歩いて辿り着いた宗谷本線 紋穂内駅(廃止)

列車本数の少ない駅の場合、一度降りてしまえば次の列車は2~3時間後(ひどい時には10時間以上後)ということも少なくない。そのような場合、駅周辺を散策するのもいいが、隣の駅まで5キロほどであれば1時間ちょっとで歩いて行けてしまう。歩くのが苦にならない人であれば、その駅間も楽しめることだろう。ただし、よく晴れた夏の日に歩く場合は熱中症になる危険性が高いので、日傘は必須アイテムだ。山の中を歩く場合は熊にも十分注意しよう。危険だと判断した場合は引き返したりタクシーで移動するという決断も必要だ。

8.駅スタンプを楽しむ

JRや一部の私鉄では駅にスタンプを置いていることが多い。そうしたスタンプをひたすら押して集める鉄道ファンのことを「押し鉄」といい、降り鉄と兼任している人も多い。インクが乾いていたりスタンプが擦り減っていたりで綺麗に押すことが難しいものもあるが、それだけに綺麗に押せた時の達成感はひとしおである。ただし、後ろで押したい人が他に待っている場合はスタンプを独占せずに譲ろう。

9.きっぷを楽しむ

きっぷを集める「きっぷ鉄」もまた降り鉄との兼任者が多い。営業している時間の短い駅窓口に時間を合わせて訪れたり、硬券や常備券、補充券、記念入場券といったレアなきっぷを集めたり……こだわっているとお金がかかる楽しみ方でもある。

10.駅看板を楽しむ

徳島線 阿波山川駅(現在は撤去)
徳島線 阿波山川駅(現在は撤去)

古いデザインの駅名標や案内看板の文字にこだわる「もじ鉄」「看板鉄」も降り鉄との兼任者が多い。目立つ場所にあることもあれば、隅々まで見ないと気づかないところにあることもあり、後者を見つけた時の感動はひとしおだ。こうした看板は予告なしに撤去されて破棄されたりオークションに出品されたり、あるいは盗難の憂き目に遭うこともあるので、見かけたときに撮っておくとのちのち貴重な記録になる。

11."なにもしない"を楽しむ

徳島線 小島駅
徳島線 小島駅

知らない駅にふらりと降りて、風通しのいい日陰のベンチに腰掛けて、次の列車までボーっとする。常に何かをしなければと焦り続ける人が多い今の時代、そうした義務感から解き放たれてあえて何もしないというのが一番贅沢な時間の使い方だろう。他に人のいない日中の無人駅はデトックスにちょうどいい空間だ。

以上、駅巡りの楽しみ方を11種類紹介してみた。もっとも、駅巡りの楽しみ方はこれ以外にもまだまだあって、これらはほんの一部の例に過ぎない。乗り降り自由な青春18きっぷは駅巡りの強い味方だ。行程をしっかり組んで駅巡りをするのもいいし、気になった駅に気ままに降りるのもいい。この夏、水分補給をしっかりした上で暑さに気を付けながらあなたなりの駅の楽しみ方を見つけてみるのはいかがだろうか。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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