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明日(25日)の夜は伝統的七夕、天気は晴れ!

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
2020年8月25日東京の空の様子 国立天文台提供

伝統的七夕・七夕は旧暦で祝いましょう

 「伝統的七夕」という言葉をご存じでしょうか。伝統的というからには、今の七夕が「伝統から離れている」ものだと、何となく推測できるかと思います。実は、明治時代の初め(明治6年)まで、七夕は月と太陽の動きによってできた「太陰太陽暦(旧暦)」の7月7日、つまり今よりも1か月以上遅い時期に行われていました。その頃は、ちょうど梅雨も明けて、天候の条件が良いのです。まず、織姫星、彦星が、夜が更けないうちに天の川をはさんで頭上高くに見えるようになります(7月の場合はかなり待たされる)。そして何より、8月以降であれば晴れる日が多くなります。

 現在でも、月遅れの8月7日に七夕祭りを行う地方がありますが、これは天気の面から見れば一見合理的だと思います。ただ、この場合も月の形に問題があります。実は七夕は、ただ単に星の位置だけではなく、その当日に出る月の形が極めて重要で、七夕の月は「上弦の月」、つまり半月でないといけないのです。それをふまえて、国立天文台は2001年から伝統的七夕の日を決めることにしたのです。国の機関とはいえ、実に素晴らしいはからいだと、私は思います。

七夕は必ず「上弦の月」

 現在、日本の暦は国立天文台が定めています。ただし、太陰太陽暦の計算は行わずに「伝統的七夕」という言い方で、旧暦とは別の方法で七夕の日を求めているそうです。日付はけっこう幅があり、今年(2020年)の場合は8月25日です。この日の東京の晴天率は46.7%で、伝統的ではない七夕(7月)は30%ですから、格段に晴れやすいといえます。

月齢カレンダー(国立天文台提供)と伝統的七夕の一覧 黄枠は処暑、赤枠の新月を7月1日とし、7日後が伝統的七夕になる(筆者加工)
月齢カレンダー(国立天文台提供)と伝統的七夕の一覧 黄枠は処暑、赤枠の新月を7月1日とし、7日後が伝統的七夕になる(筆者加工)

 伝統的七夕は毎年、日付が変わるのでややこしいのですが、月が「上弦の月」という点は揺るぎません。伝統的七夕を求める方法では、二十四節気の「処暑(8月23日頃)」以前で、最も近い「新月」の日が7月1日となります。新月から数えて7日目が伝統的七夕、7月7日に当たるので、月の形は必ず上弦近く、つまり半月になるのです。さらに言うと、この半月というのが最も重要です。

 なぜなら、織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)は、天の川銀河によってへだてられていますが、一年に一度だけ、この半月(上弦の月)の舟に乗って天の川を越えることが出来るからです。太陽暦の7月7日は月の形に統一性がありませんから、年によっては満月だったり新月だったりします。

 そうすると、天の川を越えるための月の舟が無いわけで、伝説の由来が成立しません。

織姫と彦星は出会えるか

25日夜の天気分布(ウェザーマップ提供)
25日夜の天気分布(ウェザーマップ提供)

 台風8号の影響は限定的で、明日(25日)の夜は、東北南部から九州北部の平野部ではだいたい晴れる見込み。関東で織姫、彦星が見える確率は90%くらいと予想しています。頭の真上に夏の大三角形を探すと、織姫星(ベガ)、彦星(アルタイル)は最も明るい星なので、比較的はっきり見えると思います。

 天の川は無理でも、上弦の月(半月)が舟だと想像をすると、少し幸せな気分になれます。

参考:国立天文台 

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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