「銀次さん(楽天)との自主トレで僕は変わった」 韓国のイケメン好打者にもたらした意識改革とは
筆者が毎年日本で刊行している著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」(論創社刊)の表紙には、KBOリーグ10球団、各1名の顔写真を掲載している。それを見た韓国野球に馴染みのない日本メディアの数名は、ブルーの帽子をかぶった選手を指差して同じことを口にした。
「この選手、イケメンですね」
誰もが目を引くその美男選手は今年1月、楽天イーグルスの銀次内野手(32)らが沖縄で行った自主トレに参加。15日間に渡って共に汗を流した。
「野球を一から学びたいと思って、合流させてもらいました」
所属チームのキャンプ地、沖縄・恩納村でそう話したのはサムスンライオンズの外野手ク・ジャウク(27)だ。
2012年にテグ(大邱)高校からプロ入りしたク・ジャウクは、1年目を終えると軍に入隊。入隊中の一部選手が所属し、2軍リーグにも参加するチーム(サンム)に2年間在籍すると、2軍で首位打者になるなど頭角を現した。
除隊後、2015年にチームに合流すると、1軍でも実力を発揮。18年まで4年連続打率3割をマーク。アジアプロ野球チャンピオンシップ(東京ドームで開催)に代表選手として出場した17年には100打点を超え、17、18年にはホームランを20本台に乗せるなど、成長を続けた。
しかし1軍定着5年目の昨季の打率は2割6分7厘。球団との年俸交渉ではダウン提示を不服として、交渉がまとまったのはキャンプインしてからだった。
ク・ジャウクは昨季の自分をこう振り返る。
「僕はホームランを40本、50本打つバッターじゃないのに長打ばかりを狙っていました。でもホームランの数を増やすことより、自分の長所を生かす方が大事だと気がついたんです」
ク・ジャウクの野球に向き合う姿勢に大きな変化を与えたのは、銀次らと行った自主トレだった。
「銀次さんのおかげで野球に対するすべてを考え直しました。練習前のストレッチやプレーの基本動作など、挙げたらキリがないくらいたくさんのことがプラスになりました」
ク・ジャウクは自身の長所を改めて考えた。
「正確なコンタクト能力(ミート力)が僕の長所です。しっかりとボールをとらえて野手の間を抜く打球を打つ。そして必死に走って二塁打にするのが僕のやるべきことです」
キャンプでのフリー打撃でも強振は控え、逆方向やセンター返しといった打球方向を意識したスイングを心掛けているク・ジャウク。低迷が続くチームの中で銀次から受けた刺激が自身のモチベーション維持につながっている。
「銀次さんは僕のバッティングについて、言葉で具体的なアドバイスはしませんでした。ただ、『構えた時にもう少し姿勢を低くした方が良いのではないか』、『内ももをもっと意識したらどうか』ということをそれとなく伝えてくれました」
今年のキャンプでク・ジャウクの大きな瞳には穏やかさと生気が同居している。顔の造作に限らず、内面もこれまで以上に男っぷりが上がった彼の今シーズンを期待せずにはいられない。