30代からメンタルを強くする「確率思考」4つのステップ
■すさまじい「黒字リストラ記事」の反響
メディアからの取材攻勢が止まらない……。
先日の「黒字リストラ」の記事の反応はすさまじかった。テレビや雑誌などからの取材オファーが途絶えないのである。
※拡大する「黒字リストラ」対象は誰? 「働かないおじさん」以外も安泰じゃない
そして、取材を受けながら、私は思ったのだ。
「恐ろしい」
と。
とくに昨日だ。電話口でメディアの方が悲鳴のような声をあげた。私がこう言ったあとに。
「プロ野球チームと同じ。企業は、もう規模を拡大しません。同じ能力なら、必ず若い人を選ぶでしょう。ですからベテラン社員は能力があっても、よほどの中心選手でない限り、別のチームへ行ってもらいたいと声をかけられます。しかし企業も少子高齢化しており、受け皿が恐ろしいスピードで減りつづけている。この現実が厳しいのです」
「ひぃっ! 本当ですか」
「本当です。言っていて、私も恐ろしいと思いはじめました」
実際に、中小企業庁の調べによると、1999年から2016年までのあいだに、130万社ほど企業の数は減っている。その減少数は、毎年20万社ほどになってきており、子どもの出生減と同様に、加速度的に減っているのだ。
政府が「70歳定年制」や「定年制廃止」を打ち出す前に、大企業でははやめに別のキャリアを見つけてほしいと、ベテラン社員に声をかけるわけだが、行く先も減っている。
こんな話をすると、決まってメディアの方の大半が私に聞きたがるのは、
「じゃあ、これからの40代、50代の人はどのようなスキルを身につけるべきなんですか?」
だ。
しかし、先の記事にも書いたとおり、今身につけた「スキル」が10年後に役立つかわからない時代だ。そこで「スキル」よりも「ウィル(意識)」が重要だ、と、私は必ず答えるようにしている。
謙虚な気持ちで、常に現状を変えたいという気持ち、意欲さえあれば、いつだって新しい技能を身につけられるし、新しい環境にも慣れることができる。
詳しくは、自著『自分を強くする』に記したが、「変化に対するストレス耐性」――つまり「変化耐性」を強化することだ。
人間は放っておくと、変化をできるだけ避け、現状に定位しようと生き物なので、この「変化耐性」は、メンタルを強くするうえで、ものすごく重要な能力だ。
できれば早くから、「変化耐性」をアップする取り組みをすべきだ。40代では遅いかもしれない。30代ぐらいからが、ちょうどいいだろう。
今回は、この「変化耐性」をどのように鍛えればいいのか。自著にも書けなかったことを追記し、解説する。
文末には、参考となるビジネス書も7冊紹介している。ぜひ参考にしてほしい。
■ 決して、甘く見てはいけない
たとえば会社の改革プランに反対して、あなたが「変わらない」リスクを選択したとする。問題はそれがうまくいかなった場合、果たしてすぐに次のアクションが取れるか、だ。
実際には、これがなかなか難しい。
「変わらない」選択をした自分を肯定し、そのまま新しいアクションをとらず現状維持をつづける人は多いだろう。
放っておくと、易きに流れようとする人間は、意識して変化耐性を鍛え続けないと耐性が落ち、いざというときに本領が発揮できないからだ。
現場を見ていていつも感じるが、川底にへばりつくような感じで変化を拒み続ける人は、変化に対するストレスを甘くみがちだ。
「変化すべきときがきたら変化するから大丈夫。でもそれは今じゃない」と思っている人が、実際に変化を求められる場面になると、だいたいパニックになる。だから、
「そのときが来たら、やるから」
という発想はやめよう。
■ 日々の体験を変えて、思考プログラムを書き換える
潜在意識の影響力はとても大きい。すべて理性でカバーできるわけではないからだ。
よって、理性でカバーできない領域については、「思考プログラム」自体を書き換える必要がある。
過去の体験の「インパクト×回数」によって出来上がっている思考プログラムは、ベテラン社員ほど書き換えることは難しい。
だからこそ、日々の「小さなチャレンジ」を通じて、できあがっている思考プログラムを少しずつ書き換えていくこと。これが大事だ。
柔軟体操をせずにいきなり激しい運動をしたら怪我をしやすいのと同じ。変化耐性を高めるには、「変化に慣れた自分」になっておく下準備が必要なのだ。
そのためには、新しい環境に身を置いたり、毎日の何気ない行動を少しだけ変えてみることだ。
そうやって新しい刺激を脳に与え続けることで、硬直化しがちな自分の思考プログラムを柔軟にしておくことができる。
それはどんなことでもかまわない。
目的は変化をすることなので、少し葛藤を覚えるような「何か新しいこと」に挑戦してみるくらいでいいのだ。
すると少しずつ現状維持バイアスが外れ、変化耐性もついてくる。
では、どんな新しい刺激がいいのか。意識していただきたいのが「インパクトの強さ」。
長年かかってできあがった思考プログラムを効率よく変えたいなら、インパクトの強い刺激を与えたほうが早いのである。
私はこのような、何か新しいことを「サムシングニュー」と呼んでいる。
ふだんあまり読まない本を手に取ってみるとか。若い人が熱狂する歌手のコンサートに足を運んでみるとか。現金派だけど、スマホ決済に挑戦してみるとか。捨てるはずの電化製品をメルカリで出品してみるとか。
過去にやったことがない何か新しいことを、とにかくやってみる。日ごろから「サムシングニュー」を合言葉にし、実践することだ。
■ マンボウと確率論
激動の時代とは、選択肢が増える時代とも言える。
だから、たくさんの選択肢がある中で流される人がとても増えているわけだが、そういう人にかぎって、自分にとって都合のいい選択肢を無自覚で選ぼうとしてしまう。
それがとても危険なのだ。
あくまでも、客観的に物事を見て、確率論で評価を下していこう。
それは、自分の感覚が選んだ答えと同じかもしれないし、違うかもしれない。
「よくよく考えたら、たまたまうまくいっているだけだ」という選択肢をしっかり見抜いていかないといけない。
たとえば、自分を変えていくために成功者のロールモデルを見つけて自分も同じようになろうと頑張る人もよくいる。
変わろうとする心意気はすばらしい。だが、そこにも落とし穴があるのだ。
私はよく講演で「マンボウ」の話をする。ここでもそれを紹介しよう。
マンボウは卵を3億個も産むと言われているが、では3億個のうち、どれくらいが大人になるまで生き延びるか。知っているだろうか。実のところ、たった3、4匹と言われている。
つまり、確率で言えば、1億分の1だ。
そんな倍率を勝ち抜いて大人になったマンボウに、
「どうやったら、あなたのように1億分の1の競争を勝ち抜けるんですか? その秘訣を教えてください」
と聞いたとしよう。
すると、マンボウが「ポイントは3つある。まずはね」と得意げに答えた場合、それらのポイントを参考に、生き残るマンボウの子どもたちはどれぐらいいるだろうか。
もしその3つのポイントに再現性があるなら、残りの2億9999万9997匹の兄弟もそれなりの確率(たとえ1%の再現率であったとしても、100万匹が大人になる計算)で生き延びて、世界中の海がマンボウで埋めつくされる。
しかし、実際にはそうならない。マンボウが進化の過程で行きついた、子孫を残すには3億個の卵が必要だという結論こそが、最も理にかなっているからだ。
なぜ、どんなに高度情報化時代になろうとも、富める者は富み、貧する者は貧すのか?
それは、こういった「確率思考」を身につけている人がまだ少ないからだ。何らかの成功哲学に出会ったとき、それが本当に再現性の高いノウハウなのかどうか。
時代の激流で溺れないためにも、こういった「目利き力」は不可欠だ。
■ 確率思考を身につける4ステップ
ここから、どのようにして「確率思考」を身につけるか。解説していこう。思考であるから、何度も書いているとおり「インパクト×回数」が重要。必ず、トレーニングを通じてでないと身につかないことを、まず頭に入れてから読んでもらいたい。
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