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ゴルフ場のトランプ氏と男の位置関係が明らかに。半日待ち伏せで伝わる殺害への執念【暗殺未遂事件再び】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
車で逃走中に高速道路で逮捕された容疑者の男。(提供:Martin County Sheriff's Office/ロイター/アフロ)

手薄な護衛 前夜から待機 殺害への執念

7月の選挙集会中に銃弾が右耳上部を擦り負傷したトランプ氏だが、2ヵ月後にまたもや暗殺未遂と見られる事件が発生した。

日曜日の15日午後1時半ごろ、フロリダ州ウェストパームビーチのゴルフ場「トランプ・インターナショナル・ゴルフクラブ」でゴルフをしていたトランプ氏。シークレットサービス(SS)が同じゴルフ場内で銃で武装した男を発見し、男に向け発砲した。男は車で逃走し、高速道路で御用となった。

トランプ氏は無事だったが、7月の暗殺未遂事件に続き、再び暗殺未遂の標的になった可能性があるとして捜査が進められている。選挙の投開票日が2ヵ月後に迫った中で大統領候補者を対象にした銃による殺害未遂事件に、国民の多くは「またか」「どうなっているのだ」と驚きと失望の反応だろう。

米メディアによると、容疑者はハワイ在住の58歳、ライアン・ウェスリー・ルース(Ryan Wesley Routh)。ルース容疑者は当時、現場でスコープ(銃の照準器)付きのAK-47ライフルなどを所持していたことが確認されており、連邦裁判所で16日、銃器関連犯罪2件で起訴された。

当日の位置関係:トランプ氏は5番ホール、容疑者は数百m先の6番ホール付近で待ち伏せ

当日のゴルフ場でのトランプ氏とルース容疑者の位置関係も明らかになってきた。

現地報道によると、当時トランプ氏がプレーしていたのは5番ホール。ルース容疑者が隠れていたのは6番ホールから150フィート(約46メートル)ほど離れた金網フェンス付近の茂みの中だった。

トランプ氏と容疑者の間は推定300~500ヤード(約274~457メートル)ほど離れていたとされる。もしトランプ氏が6番ホールへ移動していたなら、両者はもっと近い距離になっていただろう。

ちなみに7月のトランプ氏暗殺未遂事件では、銃撃犯の20歳のトーマス・マシュー・クルックス容疑者(現場で死亡)は148ヤード(約135メートル)離れた場所から銃を数発発砲していた。

手薄な警備 再び

前回の暗殺未遂ではSSによる護衛が不十分だったことが問題になり、トップが辞任となった。また事件後はトランプ氏が屋外で選挙活動を行う際は防弾ガラスを立てるようになった。

一方、週末の私的なゴルフについては、現役の大統領であればゴルフ場全体が厳重な警備の対象となるが、トランプ氏は現役大統領ではない人物ということで、警備が現役大統領より手薄だったことが指摘されている。

容疑者は15日午前2時ごろからゴルフ場近くの屋外にライフルと食料を持ち込んで待機していたとも報じられている。つまりSSに発見されるまで12時間近くトランプ氏を待ち伏せしていたことになる。約半日も潜伏するとは、トランプ氏を何としても殺害するんだという強い「執着」のようなものが伝わってくる。

ゴルフ場および近辺に、殺傷能力の高い銃器を持った人物が長時間潜伏していた(SSはそれを許した)事実が判明したわけだが、SSはそれらの場所に不審者がいないかの事前確認をしなかったと認めたことが報じられた。幸い今回は未然に防ぐことができたものの、相変わらずの手緩い要人警護(SSの予算の関係もあるのだが)が再び疑問視されている。

何より、次期大統領候補が一度ならず二度も、しかも2ヵ月という短期間で立て続けに暗殺未遂の対象となった事案は、民主主義の根幹が覆される事態であろう。この国の危うい未来を浮き彫りにしているようだ。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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