マイナーチームが感動動画を公開! 31歳右腕投手のメジャー復帰をすべての選手が祝福する理由
【ナショナルズ傘下2Aチームが動画を公開】
ナショナルズ傘下の2A、ハリスバーグ・セネターズが3日、ツイッター上に動画を公開した。
まずは公開された動画をチェックして欲しい。
選手たちの前で話をしているのは、同チームのマシュー・ルクロイ監督だ。そして彼の隣にいる選手に話しかけるように、ある重大発表をしようとしている。内容は以下の通りだ。
「今日我々のチームにいる勝者を確認したい。君は常に私にインスピレーションを与えてくれた。コーチ、選手に対しても同様だ。(ここで声を詰まらせる)君の監督になれたことを誇りに思う。それ以上に誇りに思うのは、君がビッグリーグ(MLBのこと)に戻ることだ(といいながらボールを手渡す)」
発表を聞いた選手は歓声を挙げながら、メジャー昇格が決まった選手の元に集まる。そして「おめでとう、アーロン!グッドラック」の字幕が流れ、動画は終了する。
【超異例なメジャー昇格発表】
メジャー昇格を決めた選手の名は、アーロン・バレット投手。20代ばかりが揃う投手陣の中にあって唯一の30代。しかもメジャー昇格の条件である40人枠にも入っていない右腕投手だ。
チームから昇格や降格を告げられる際は、大抵の場合監督室に呼ばれて個別に行われるものだ。こうして他の選手の前で発表されるのはかなり異例といっていい。しかもナショナルズ自体も、3日の時点でバレット投手のメジャー昇格を発表していないのだ。
にもかかわらず、こうして2Aチームの方から早めに発表ししているのは、バレット投手が他の選手たちからメジャー昇格を祝福されるに相応しい存在であり、その昇格を世の人々にも知って欲しかったからに他ならない。
【プロ入り5年目で開幕メジャー入りを決めた逸材】
バレット投手は、アマチュア時代から注目される逸材だった。2006年の高校卒業時にドジャースから44巡目でドラフト指名を受けたものの、大学進学を選択。さらに大学在学中も2008年にツインズから20巡目、2009年にレンジャーズから27巡目指名を受けた後、大学卒業時の2010年にナショナルズから9巡目指名を受け、ようやくプロの世界に足を踏み入れた。
プロ入り後は順調にマイナーのレベルを上げていき、プロ入り4年目で現在所属していた2Aまで到達し、5年目の2014年に開幕メジャー入りを果たしている。
その年は50試合に登板し、3勝0敗、防御率2.66を残し、貴重な中継ぎ投手として活躍。翌2015年も40試合に登板し、3勝3敗、防御率4.50を記録していたが、シーズン途中で右ひじ内側側副靱帯に損傷が見つかり、9月にトミージョン手術を受けることになった。
【4年間の過酷なリハビリ生活】
すでにMLBでは、トミージョン手術は復帰率が高い手術だと認識されており、バレット投手も順調にいけば2016年のシーズン終盤か、遅くとも2017年の開幕には復帰できるはずだった。
しかしリハビリを続けていた2016年7月、今度は右ひじに骨折箇所がみつかり、再び右ひじにメスをいれることになってしまったのだ。
復帰の見通しがつかなくなり40人枠からも外されたバレット投手は、2017年にナショナルズとマイナー契約を結び直し、とにかく復帰だけを目指してリハビリ生活に明け暮れた。まさにゼロからのスタートだった。
ようやく実戦復帰できたのは、翌2018年のことだった。しかも復帰場所は、プロ入り間もない若手選手ばかりが集まる短期シーズンの1Aだった。リハビリ登板ならいざ知らず、メジャー経験者が所属するようなレベルではなかった。
そうした屈辱を跳ね返し、今シーズンは2Aに復帰し、シーズンを通してクローザーとして活躍。50試合に登板し、0勝2敗31セーブ、防御率2.75と、堂々の成績を残せるまでに復活していたのだ。
【ここからが本当のサバイバルレース】
今回のメジャー昇格で、ようやく40人枠にも復帰することになる。だが今回の昇格は、あくまで9月1日以降のロースター枠拡大に伴う優遇措置でしかない。本当の意味でメジャーに復帰できた訳ではない。
現在熾烈なワイルドカード争いを続けるナショナルズは、毎試合負けられない戦いを続けている。もちろんバレット投手に試験登板を与えられる余裕はないだろう。いずれにせよ与えられた登板機会は、常に結果が求められる状況に変わりはない。
このまま40人枠に残れるか、それともシーズン後に再び外されるかは、すべて残り1ヶ月間でのバレット投手の投球にかかっている。
セネターズ同様に、バレット投手の幸運を祈りたい。