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「ビックカメラ」と「楽天」の新たなる『系列化』

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

楽天とビックカメラは提携し、2018年4月に家電専門の通販サイトを開設する。共同出資会社を設立し、消費者が購入から自宅での据え付けまで一挙に申し込めるサイトを運営する。実物を見たい消費者をビックカメラの店舗に誘導する情報も流す。

出典:楽天、ビックと家電通販 据え付けや配線も受け付け

「サービス覇権」と「ポイント経済圏」の拡大

今回の提携は、「ネットとリアルの融合」というよりも、「サービス覇権」と「ポイント経済圏」の拡大といえるのではないだろうか。

楽天のネット通販上のライバルは、ビジネスモデルは違えど「Amazon」である。Amazonはエンドユーザーが顧客であるが、楽天の顧客は出店するネットショップだ。しかしエンドユーザーからするとAmazonと楽天は、プラットフォームの違いでしかない。流通網を持つAmazonとネットショップが個別発送をする楽天では注文後の「足回り」で差が出始める。しかし、楽天の翌日配達の「あす楽」 などでamazonとの差を埋めようとしてきた。今回の提携により、楽天がビックカメラという、全国40店舗の足場を持つパートナーを得ることによって、総合家電販売アイテムに関してはamazon以上のサービスを提供できる可能性がでてきた。更に、楽天のポイントがビックカメラで使用できるのであれば、「楽天ポイントが使える総合家電店舗」として、他店との差別化が可能となることだろう。これは双方にメリットがある。

ビックカメラの実店舗においての楽天効果は?

ビックカメラのネット上のライバルといえば、「ヨドバシカメラ」である。ビックカメラの通販売上は、729億円(2017年8月)、それに対して、ヨドバシカメラは、1080億円(2017年3月)である。ヨドバシカメラでは、リアル店舗でも、積極的にネット価格に対して、ポイント付与による値引きで対抗している。「ショールーミング」と揶揄されるような、ショールーム化する店舗ではなく、その場で価格の値引きを対応し、次回以降の来店促進となるポイントで値引きでき、その場で持ち帰ることができる施策を打ち出している。ただ、その交渉が面倒と感じる人も少なくない。

今回、楽天とビックカメラは、共同運営するサービス「楽天ビック」をネット上で作り、プライベートブランド商品も開発するという。当然、それらは実店舗においても反映されることだろう。

さらに、楽天は、第4の携帯電話会社として名乗りを上げる計画(2017年12月14日)をしており、ビックカメラの主要売り場で、楽天の携帯契約ブースを見かけることもできることだろう。

ネットとリアル店舗との新たなる『系列化』

今回の提携による詳細は、まだまだ未定だが、他の家電量販店も、Amazonや、ヤフーショッピングなどと提携するというケースも十分に考えられる。業態、業容、を問わず、エンドユーザーとのタッチポイントの距離において、家電量販店の足回りは非常に優位にある。ポイント経済圏だけに限らず、いろんなシナジーが活かせる企業との間で、独占的かつ排他的な提携は進むと考えられる。しかし、それがエンドユーザーにとって、良い環境になるかは未定だ。ネットとリアル店舗との新たなる『系列化』のはじまりだからだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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