「ビックカメラ」と「楽天」の新たなる『系列化』
KNNポール神田です。
「サービス覇権」と「ポイント経済圏」の拡大
今回の提携は、「ネットとリアルの融合」というよりも、「サービス覇権」と「ポイント経済圏」の拡大といえるのではないだろうか。
楽天のネット通販上のライバルは、ビジネスモデルは違えど「Amazon」である。Amazonはエンドユーザーが顧客であるが、楽天の顧客は出店するネットショップだ。しかしエンドユーザーからするとAmazonと楽天は、プラットフォームの違いでしかない。流通網を持つAmazonとネットショップが個別発送をする楽天では注文後の「足回り」で差が出始める。しかし、楽天の翌日配達の「あす楽」 などでamazonとの差を埋めようとしてきた。今回の提携により、楽天がビックカメラという、全国40店舗の足場を持つパートナーを得ることによって、総合家電販売アイテムに関してはamazon以上のサービスを提供できる可能性がでてきた。更に、楽天のポイントがビックカメラで使用できるのであれば、「楽天ポイントが使える総合家電店舗」として、他店との差別化が可能となることだろう。これは双方にメリットがある。
ビックカメラの実店舗においての楽天効果は?
ビックカメラのネット上のライバルといえば、「ヨドバシカメラ」である。ビックカメラの通販売上は、729億円(2017年8月)、それに対して、ヨドバシカメラは、1080億円(2017年3月)である。ヨドバシカメラでは、リアル店舗でも、積極的にネット価格に対して、ポイント付与による値引きで対抗している。「ショールーミング」と揶揄されるような、ショールーム化する店舗ではなく、その場で価格の値引きを対応し、次回以降の来店促進となるポイントで値引きでき、その場で持ち帰ることができる施策を打ち出している。ただ、その交渉が面倒と感じる人も少なくない。
今回、楽天とビックカメラは、共同運営するサービス「楽天ビック」をネット上で作り、プライベートブランド商品も開発するという。当然、それらは実店舗においても反映されることだろう。
さらに、楽天は、第4の携帯電話会社として名乗りを上げる計画(2017年12月14日)をしており、ビックカメラの主要売り場で、楽天の携帯契約ブースを見かけることもできることだろう。
ネットとリアル店舗との新たなる『系列化』
今回の提携による詳細は、まだまだ未定だが、他の家電量販店も、Amazonや、ヤフーショッピングなどと提携するというケースも十分に考えられる。業態、業容、を問わず、エンドユーザーとのタッチポイントの距離において、家電量販店の足回りは非常に優位にある。ポイント経済圏だけに限らず、いろんなシナジーが活かせる企業との間で、独占的かつ排他的な提携は進むと考えられる。しかし、それがエンドユーザーにとって、良い環境になるかは未定だ。ネットとリアル店舗との新たなる『系列化』のはじまりだからだ。