キャサリン英皇太子妃の家族写真「加工問題」王室記者「チェック体制の再構築が不可欠」と指摘
■「ケイトが責任を取るべきだとは思わない」
[ロンドン発]1月の腹部手術から公務を離れているキャサリン英皇太子妃(42)が子ども3人と一緒に写った写真をいじっていたため6つの通信社から一斉に配信を撤回された問題で、王室取材35年のロバート・ジョブソン氏が19日、外国人特派員協会(FPA)で取材に応じた。
ジョブソン氏は故ダイアナ元皇太子妃やチャールズ国王、故フィリップ殿下、ウィリアム皇太子とキャサリン妃、ヘンリー公爵とメーガン夫人ら王族の伝記を数多く手掛けている。2005年にはチャールズ国王とカミラ王妃の婚約をスクープした王室通だ。
キャサリン妃が「多くのアマチュア写真家と同じように私も時折編集を試みることがあります。公開した家族写真が混乱を招いたことをお詫びします」と謝罪したことについて、ジョブソン氏は「ケイト(キャサリン妃の愛称)があのように責任を取るべきだとは思わない」と語る。
■「プロのフォトグラファーを使えばよかった」
「彼女は深刻な手術を受けてロンドン郊外ウィンザーの居宅で療養中なんだから、公式写真として掲載する前に組織として王室のコミュニケーションチームが写真を確認すべきだった。あれはプライベートな家族写真のように撮られているが、公式写真として発表された」と指摘する。
「本当にお粗末なミス。対処する必要がある。なぜケンジントン宮殿はケイトとウィリアムの同意を得てプロのフォトグラファーに2、3枚の家族写真を撮影させて公表するのが適当だと判断しなかったのか。写真を撮ってほしければ、プロのフォトグラファーを雇えばよかったんだ」
人工知能(AI)を搭載したスマートフォンなら撮影直後に手のひらで簡単に写真を加工できる。ユーチューブをはじめソーシャルメディアを使えば、主流メディアにインタビューしてもらわなくても自分にとって都合のいいことだけを主張できる。しかしそこには大きな落とし穴がある。
■「女王の時はチェック、チェック、またチェックだった」
ジョブソン氏が仕事を始めた1990年前後、王室にはエリザベス女王(故人)に直接報告する報道官が1人、副報道官が1人、王室のさまざまなメンバーを担当する報道官補佐が何人もいた。「女王の時は常にチェック、チェック、そしてまたチェックだった」と振り返る。
「カメラは単に嘘をつくだけでなく、非常に効果的に嘘をつく。だから王室は完全な信頼を得る必要がある。しかしウィリアム皇太子の名付け親の追悼式ドタキャンでもプライバシーが優先され、欠席の理由は説明されなかった。王室が信頼構築に十分に取り組んでいるとは思わない」
ジョブソン氏は王族写真の重要性について「今日の世界では、この写真は加工されていないかというのがコミュニケーションセクレタリーが最初に発する質問の1つに違いない。君主は正しい写真を撮ることに徹底的にこだわる。歴史を通してそうだった」と指摘する。
■フォトグラファーを雇い直したチェールズ国王
最近、チャールズ国王はさまざまな軍服やレガリア(王位の象徴)を身に着けた写真を撮影した。最初の1組が気に入らなかったため、国王は別のスタジオフォトグラファーに依頼して撮り直した。かなりの費用がかかった。これは君主の傲慢か、それともわがままなのか。
ジョブソン氏は「王族の写真は歴史的な記録である。ソーシャルメディアで拡散するスピードと君主制を支える写真の信憑性には違いがある。一度立ち止まり、一呼吸おいて本物であることを確認する必要がある。そうしなければ王室から出てくるものを誰も信じなくなる」という。
「写真をいじくりまわされると、その情報を疑うようになる。王室が直面している問題は情報の欠如で、非常に繊細だ。がん治療を公表したチャールズ国王とは重みが違うが、王室ナンバーワンのスターであるケイトが2カ月間全く何もせずに姿を消したのは判断ミスだった」
ジョブソン氏は「ほとんどの人はケイトに同情的で、彼女を攻撃しているとは思わない。私が反対しているのはフォトショップを使って写真を加工することだ。もしそれをするのであればプロがやることをお勧めする。王室はチェック体制の再構築が必要だ」と提言している。